65. ルゥルリィ……恐ろしい子!
砂嵐さえ封じてしまえば、恐竜の相手は難しくなかった。踏みつけ攻撃は背中にいる以上関係がないし、噛みつき攻撃はペルフェが牽制してくれる。残りの脅威は土魔術くらいだ。散発的に石弾を飛ばしてくるのが少しうざったいが、それもルゥルリィが葉っぱの手裏剣で撃ち落としてくれる。
やはり、背中に位置取ったのがよかったのだろうな。ときおり、体を揺すって振り落とそうとしてくるが、【登攀】スキルのおかげか耐えることは難しくない。ルゥルリィはルゥルリィで、恐竜から蔦を生やして体を固定していた。
「……それ、どうなってるんだ?」
「蔦だよ?」
いや、それはわかってるんだが。蔦はどこから生えてるんだ。肉体に食い込んでいるのか? わからん。
スキルドレインも極めて順調に進んだ。というのも、コイツ、マナの所持量が極めて多いらしい。おそらく、砂嵐を維持するのに大量のマナを必要とするためだろう。おかげで、マナ補給には困らない。あっという間に、根こそぎスキルをいただくことができた。
初見のスキルはこんな感じだ。
【魔法範囲強化】<スキル結晶体 lv17>
使用する魔術・特殊攻撃の範囲を拡大する
【領域把握】<スキル結晶体 lv22>
自らが生成した領域における知覚能力が向上する
※種族適性によって弱体化
【竜の血族】<スキル結晶体 lv12>
外部からのあらゆるダメージを軽減する
生命およびマナの回復速度が上昇する
一部スキルの効果が上昇する
※種族適性によって大幅弱体化
【大暴れ】<スキル結晶体 lv15>
生命力が一定値を下回ったときに発動可能
一時的に筋力・体力・敏捷がアップし、魔力・精神・抗力がダウンする
【環境耐性:砂】<スキル結晶体 lv25>
砂地における移動・能力に対するペナルティを軽減
【巨竜の足技】<スキル結晶体 lv28>
巨体を生かした竜の足技
※種族適性によって取得不可
【凶魔侵蝕】<スキル結晶体 lv5>
凶魔ニ蝕マレテイル
簡易説明ではよくわからないが、面白そうなスキルが幾つかあるな。まあ、実際に有用かどうかは使ってみないとわからないが。
気になるのは【凶魔侵蝕】というスキルだ。字面がよくないし、簡易説明が不穏だ。種族適性による制限がないのが逆に怖い。このスキルは、俺はもちろん、ペルフェやルゥルリィにも習得させないでおこう。もし、連絡がついたら、セプテトに聞いてみるというのも手だな。ひょっとしたら、エネルギー湧出量が増えている件と関係があるのかもしれん。
「さて、盗れるものは盗った。レベルドレインは……いらんか」
レベルドレインを使えば、コイツを弱体化することはできる。が、このままでも倒すのは難しくないだろう。スキルを失った恐竜はデカいだけのサンドバッグだからな。それに、レベルドレインを使うと、エルネが得られる代わりに獲得経験値が減少するはず。金に困っていない現状では、経験値を優先したい。
「ペルフェ、戻ってこい! そろそろケリをつけるぞ!」
『おお、早かったね! 了解!』
さあ、とどめを刺そう。戻ってきたペルフェを握りしめる。背中からガツンとたたき続けていれば終わるだろう。大きく振りかぶったところで――ちょんと外套の裾が引かれた。ルゥルリィだ。
「ルゥもやっていい?」
「ん? ああ、もちろん構わないが……」
「じゃあ、やるね! みんな、起きて~!」
ルゥルリィの呼びかけ。いったい誰に……と思う間もなく、変化は起きた。
「ギュアアアアア!!!??」
恐竜の咆吼……いや、悲鳴だ。無理もない。先ほどルゥルリィが体を固定するために生やした蔦。あれと同じように、無数の草木が皮膚を食い破るかのようにして生えてきたのだ。それらは今なお、成長している。おそらく、恐竜の生命力を啜ることによって。
「い、いつの間に仕込んだんだ!?」
「ますたが、スキル盗ってるときに、だよ?」
今回のスキル奪取は極めてスムーズに進んだとはいえ、総計すると10分あるいは20分ほどかかっている。その時間で密かに仕込んでいたらしい。
気がつけば周囲が小さな森のようになっている。それはつまり、その分だけ恐竜の命が削られているということだ。
『ちょっと、ジンヤ! このままじゃ僕の出番がなくなっちゃうよ!』
「ペル、頭と戦ってた。十分」
『あんなのただの牽制じゃん! 僕も活躍したいよ!』
「もう遅いよ。ルゥが倒すもん」
そのとき、ぐらりと地面が揺れた。いや、揺れたのは地面ではなく、恐竜の体だ。生命力を失ったせいで、体を支えられなくなったらしい。巨体がゆっくりと倒れ、足場としていた背が少しずつ傾いていく。
「おっと!」
だが、完全に倒れきる前に、恐竜の生命力が完全に失われたらしい。恐竜の巨躯も、その上の小さな森も光の粒となって消えていく。
地面は3mほど下。だが、これくらいなら着地はたやすい。傷を負うこともなく、地面へと降り立つことができた。最後は予想外だったが、無事、恐竜退治完了だ。
それにしても、ルゥルリィ……凄まじいな。実質、一撃で仕留めたようなものだ。準備に長時間かかる大規模魔法と考えれば威力が出ても不思議ではないが……。
いつの間にやら、恐ろしい強さを身につけたものだ。ペルフェも大幅強化されているし、薄々気づいていたが、この二人、やばいのでは?
『結局、何もできなかったじゃないか!』
「えへん! ルゥ、頑張った!」
『酷いよ~』
普段のやりとりを見る限り、とてもそうは見えないんだけどなぁ。




