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60. 助っ人パーティーと酒盛り

「こっちに来て早々、大変だったな、ジンヤ! まあ、飲め飲め!」

「あ、ああ」


 俺はコークスローの酒場で例の助っ人パーティーに囲まれていた。


 酒を勧めてくるのはリーダーの盾ガラデンだ。名前はイゴットと言うらしい。顔の一部が赤みがかっているが、酒精が原因ではなく元からだそうだ。他のガラデンたちにはない特徴なので、判別しやすい。


 小柄なガラデンはエメラ。ちなみにガラデンの美的感覚からすると、絶世の美女……らしい。自己申告なので真偽のほどは不明だが。他のガラデンたちは黙して語らなかった。


 ハンマーの二人は、ロンズとルバー。ちなみに、まだどちらがどちらなのか判別できない。兄弟なので、ガラデンから見ても二人は似ているそうだ。識別難度が高すぎる。


 神官サルボはニーデル。確認したところ男性らしい。サボテンっぽいトゲトゲは頭にしか生えておらず、ヒュムでいうところの髪の毛みたいなもののようだ。年をとると抜け落ちるらしい。切ない。


 さて、何故、助っ人パーティーと酒場に来ることになったかというと、助太刀の礼と情報収集をかねて、俺が誘ったからだ。だというのに、いつの間にか、俺の歓迎会的なノリになっている。まあ、情報収集ができるなら名目は何でもいいのだが。


「改めて、礼を言わせてくれ」

「気にすんなって! 取り決めもあるんだしな!」

「そうか。ところで、その取り決めって、どういう内容なんだ?」

「ん? ああ、説明しないといかんなぁ。……エメラ」

「はいはい」


 さっそく、気になっていた“取り決め”とやらについて聞きたい。尋ねると、イゴットは、そのままエメラに話を振った。丸投げするつもりらしい。


 彼女の説明によれば、大体は予想通りの内容だった。


 コークスロー周辺で魔物の異常出現が増えていること。負傷者が増えたことで危機感を覚えた有力な探索者たちが話し合って、非常時には協力して魔物を倒すという協定を結んだこと。今ではコークスローの全ての探索者に協力要請が出されていること。そんな内容が語られた。


「あくまで要請だけど、特別な理由がない限り従っときなさいな。明日は我が身……ていうか、早々に酷い目にあったジンヤならわかるだろうけどね」

「ああ、そうだな」


 取り決めの主旨はあくまで助け合い。自分が助けるからこそ、助けてもらえるのだ。不義理をしていれば、助けてもらえなくても文句は言えない。


 俺の場合、助けてもらう必要はないが、人と違う行動をしても目立つだけなので、異常出現に遭遇した場合には協力すべきだろう。能力を抑えて共闘するのは面倒だが、仕方がない。


 いっそ、アースリルと同じように、ファントムスタイルで活動するか? でも、また変な噂が立つのもなぁ。正体はバレないかもしれないが、目立つんだよ、あの格好。


「異常発生って言うのはどれくらいの頻度で起きてるんだ?」

「さあね。ただ、最近は多いよ。たぶん、毎日のように起きてる。それでも、今日ほど大規模なのは初めてだけどね」


 幸いなことに、あの魔物の大量発生が、魔物寄せの香によるものだということはバレていない。現場が煙たいことを訝しんではいたが、所持していたアイテムを誤って魔法で燃やしてしまったと言うと、特に疑いなく信じてくれたようだ。


 やはり、魔物寄せの香は一般的ではないのだろうな。狩りに魔物寄せの香を使うという発想がそもそもないんだ。だから、魔物の大量発生と結びつかない。


 そういう意味では幸運だったのだが、代わりに大騒ぎになってしまった。


 通常の……と言うのもおかしな話だが、最近頻発している魔物の異常発生は長くても30分程度で収まるらしい。だが、魔物寄せの香の効果は数時間続く。イゴットたち以外にも数パーティーが合流したため、魔物へは余裕を持って対応できたが、今までにない事態だと探索者たちには不安が広がっている。


 やってしまったことは仕方がない。実際の話、創造エネルギーの湧出量が増えて、危険な状況にあるのは間違いないのだ。危機感を覚えるのは悪くないはず。


 まあ、まだバレていないとはいえ、長々と続けたい話ではない。取り決めや、発生状況については知れたので話を変えよう。


「そういえば、見覚えのない種族がいたな」


 加勢してくれた探索者のほとんどはヒュム、ガラデン、サルボの三種族だったが、一人だけ別の種族がいたのだ。


「コマタの旦那だね。あの、猫みたいな……」


 俺が思い描いた人物は、正確に伝わったらしい。“猫みたいな”という言葉から判断して間違いない。俺の印象も二足歩行する黒猫のような種族、だった。


 だが、“猫みたいな”という表現は地雷ワードだったらしい。エメラの言葉を聞いて、イゴットが窘める。


「おい、エメラ。それは禁句だろ。ジンヤが真似たらどうする。黒豹って言え」

「え、いや。でも、あれは猫だよ。他のピュトンたちは自分のことを猫みたいって言うじゃないか」

「そりゃあそうだが。コマタにはこだわりがあるんだから、わざわざ喧嘩を売らなくてもいいだろう」

「本人の前で言わなきゃ大丈夫だって」

「お前なぁ……」


 反省する様子のないエメラに、イゴットがため息を漏らす。エメラはなかなか口が悪いタイプらしい。


 とはいえ、俺としてもエメラの気持ちはわかる。そのコマタという人物、黒豹に似た種族だと自称しているらしいが、猫と黒豹どちらに近いかといえば……まあ、猫だった。


 俺がコマタを気にしているのは、一人だけピュトンだったということもある。だが、それ以上に、コマタが率いるパーティーにコークスロー初日の夜に出会った探索者――シャスカがいたからだ。しかも、コマタ以外のパーティーメンバーは全員、首元にシャスカと同じようなチョーカーをしていた。


 あれはまさか、奴隷の首輪……なのか?

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