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43. 魔物寄せの香

 スキル結晶体の吟味が終われば、本格的に狩りの時間だ。


「さてさて、これはまた大漁だな」

『よ~し! じゃあ、僕は突貫するよ!』

「ああ、任せた!」


 どこからともなく現れる魔物の大群を前に、ペルフェが念動で自らの体を浮かせた。突貫攻撃を仕掛けるつもりらしい。とにかく魔物の数が多いので、ペルフェには別行動で敵を減らして貰う。


 この状況は意図的に作り出したものだ。セプテトが言っていた“魔物寄せの香”を使った結果である。匂い自体はそれほど変わった感じでもないが、効果は抜群。むしろ、効き目が良すぎて、あまり使われないらしい。


 香なしだと、どんなに頑張っても一日で100体くらいの魔物を倒すのが限度だ。これは、魔物が多い不人気狩り場で、かつ【咆哮】スキルの〈挑発の叫び〉を使っての数字である。普通の探索者は、その半分も狩れないだろう。


 だが、魔物寄せの香を使えば、数えるのも馬鹿らしくなるほど狩れるのだ。うまく捌ければ狩り効率は凄まじい。迂闊に使えば大量の魔物に押しつぶされてしまうが、そのデメリットを考慮に入れても、使わなければ損というものだ。賛同してくれる人間はあまり多くなさそうだが。


「メェェェ!!」


 野太い鳴き声とともに突っ込んできたのは山羊だ。もちろん、普通の山羊であるわけがない。その巨体は軽自動車……とまではいかないが、それを二回りぐらい縮めたくらいにはデカい。それが、凄い速度で突っ込んでくるのだ。はね飛ばされたら大ダメージは避けられない。


 直前で躱して、その巨体に拳を叩き込む。が、デカ山羊は平然と走り去っていった。白鬼長の籠手の効果で格闘技能の威力は上がっているはずなのだが。


 魔法で対抗してもいいが、数が数だけに魔法だけに頼るとマナ消費が激しすぎる。合間にマナドレインを使えば問題ないが、ここはより殲滅力を高めるとしよう。


 使うのは【獣力解放】の〈剛獣ノ心〉だ。このアーツを使うと、一時的に筋力を高めることができるが、代わりに被ダメージが増える。とはいえ、俺ならデメリットもそれほど気にならない。攻撃は基本的に避けるからな。


「「「メェェェ!」」」


 続けて三体のデカ山羊が列をなして突進してきた。同じように避けるのは難しくないが。


「ルゥルリィ」

『あい、ますた』


 左手の腕輪に呼びかけると、ルゥルリィから返事が頭に響いた。彼女には腕輪の中に退避してもらっている。さすがに、大量の魔物に集られるとルゥルリィでは対処ができないので仕方がない。


 しかし、その状態でもある程度の力は発揮できるのだ。俺の意図を察したルゥルリィは、蔦を生み出し、先頭の山羊に絡めた。その程度では巨体の突撃は止まらないが、速度は大幅に削られる。そうなると、次に起こるのは玉突き事故だ。


「メェェェ……!」

「「メェェェ!?」」


 追突された山羊が抗議するかのように、後続の山羊たちに恨めしげな鳴き声を向けた。なかなかのんびりとした奴らである。無論、その隙を逃すつもりはない。


「おらよっ!」


 渾身の力で、先頭のデカ山羊を殴る。今度はアーツありだ。使ったのは【強撃】スキルの〈岩石砕き〉というアーツだ。防御力が高い相手に有効らしい。クズ探索者の誰かから奪い取ったスキルだ。


「メェェエ゛エ゛……」

「おお、強いな!」


 殴られたデカ山羊は、ふらつきながらこちらをひと睨みしてきたが、結局はそのまま力尽きたようだ。ほぼ一撃で仕留めたことになる。マナ消費は10でこの威力は申し分ない。


 本来、【強撃】のアーツは武器耐久力も大きく損ねるので乱発できない。格闘技能の場合は、武器の代わりに使用者本人にダメージがいくので諸刃の刃だ。実際、俺の拳にも幾らかダメージは入った。だが、白鬼長の籠手には格闘技能の反動ダメージを軽減する隠し効果があるらしく、威力に比べると負担は少ない。装備効果ありきではあるが、俺と相性が良いスキルと言える。


『うしろ。矢』


 このまま、他の二体を屠ろうとしたところで、ルゥルリィから警告が発せられる。どうやら、別の魔物から射かけられているようだ。小悪魔っぽい人型の魔物だろう。山羊と戦っていると、こっそりと矢を放ってくる性格の悪い奴らだ。山羊に手間取っていると、どんどん集まってくるので、探索者からはかなり嫌われている。もっとも、魔物寄せの香を焚いている現状だと、そんな特性に意味はないが。


 ルゥルリィが警告してくれるおかげで、不意を打たれることはないとはいえ、遠距離攻撃は厄介だ。それに、このエリアのボス格が姿を現す条件は、小悪魔の討伐数を稼ぐことだった。できれば、奴らを中心に狙いたいのだが。


「「「メェエエ!」」」


 次から次と突っ込んでくる山羊が厄介だ。避けるのは難しくないが、間断なく駆け寄ってくるのでなかなか小悪魔にまで手が回らない。


 こんなときに頼りになるのが、ペルフェだ。


『あはははは! 弱い、弱い!』


 ご機嫌な様子で、長剣が飛来する。剣身が赤々と炎を纏っているのは、【属性付与】スキルの効果だ。これも、クズ探索者から奪ったスキルだった。


 小悪魔は嫌らしい攻撃をしてくるが、耐久面はそれほどでもない。炎を纏ったペルフェの突貫攻撃は【突撃】スキルの効果も相まって、容易く小悪魔を切り裂いていく。奴らはペルフェに任せていいだろう。


『ルゥもできる!』


 ペルフェの活躍を見たからか、ルゥルリィもやる気だ。そこかしこから蔦を生やし、山羊をペチペチと叩いている。正直、蔦で拘束してもらった方がありがたいのだが……まあ、やる気に水を差すこともあるまい。とりあえず、頼んだ時にきちんと拘束してくれるなら、今は自主性に任せるとしよう。


 さあ、どんどん魔物を倒すぞ。貴族探索者にドレインをしかけるためにも最低限のステータスが必要だからな。



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