表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/109

38. クズ探索者対策会議2

「アンタ……この装備は……?」

「今のって……インベントリですよね」


 机に並べた装備とスキル結晶体に、コウヘイは驚き、リュウトは呆れ顔になった。


「インベントリ……って何だっけ?」

「アイテムを自由に取り出したりできる保管庫みたいなもの……だったかな?」


 一方、アイリとレイナは顔を見合わせている。インベントリという単語に馴染みがないらしい。たしかにゲームに縁がなければ聞き慣れない単語だろう。エルネマインでも、アースリルで活動するような探索者にはあまり縁がないはずだ。


「まあ、だいたいそんな感じですね~。とても貴重なアイテムで、安いものでも5000万エルネくらいするはずですよ~」

「「「「はぁ!?」」」」


 コルネリアの解説に、元学生の四人が一斉に声を揃えた。あまりの剣幕に少し怯んでしまう。


「5000万エルネって……、キョウヤ君の賠償金と同じじゃないですか! そんなお金どこから?」

「え? ああ、装備品はツケが利くからね」

「ツケって……借金ですか!?」


 アイリが信じられないものを見る目で俺を見ている。これまでコツコツと築き上げてきた信頼が一気に崩壊したようだ。


 一方で、ハルヨシさんはインベントリには言及せず、システムカードで俺が取り出したアイテム類を鑑定している。一通り鑑定し終えたところで、唸り声を上げた。


「装備はアースリル周辺で入手できるアイテムとしては最高ランクに近いものも混じってるね。それに、スキル結晶体か……。ジンヤ君、本当に転生半年なんだよね?」

「こっちに来たときに案内してくれたのはハルヨシさんじゃないですか」

「いや、そうなんだけどね」


 ハルヨシさんは苦笑しながら首を振る。


「スキル結晶体なんてアイテム、聞いたこともないよ。僕がお世話になっている先輩たちも、こんなアイテムの存在、話してくれなかったから……ひょっとしたら普通には手に入らないアイテムなんじゃない?」

「ええ、まあ……」


 ここにある結晶体は当然ながらスキルドレインで入手したものだ。別の入手方法がないとは断言できないが、ハルヨシさんの反応を見る限り、少なくとも一般的でないらしい。


「ねえ、これってファントムさんがザックバルのボスから盗ってたやつに似てない?」

「……そうかも」


 アイリの言葉に、レイナが頷く。


 彼女たちが言っているのは巨猿と戦ったときのことだろう。彼女たちもザックバルの相手で忙しかっただろうに、意外と目敏く観察していたようだ。


 ジトっとした疑いの視線が四対、俺に突き刺さる。残りのコルネリアとリュウトは苦笑いだ。コルネリアはともかくリュウトの反応は意外だった。もしかして、彼は俺がファントムだと気がついているのか?


 まあ、すでに隠しきれないかもしれないが、それでも一応ははぐらかしておこう。


「実はファントムと伝手(つて)があってね」

「伝手、ですか?」

「そ、伝手。まあ、秘密にしておいてくれると助かるよ。アイツの正体を知りたい人間は多いだろうし、面倒事に巻き込まれたくないからね」

「それは構いませんが……」


 雑な言い訳だが、素直なアイリはそれで引き下がってくれた。こう言っておけば、変に吹聴したりはしないだろう。キョウヤの救出に力を貸すのだから、多少の恩義は感じてくれるはずだ。おそらく。


「ファントムか……。正体は御使いじゃないかって噂を聞いたことがあるけど?」

「御使いではないですね。関係者とはいえるかもしれませんが」


 ハルヨシさんの疑問には、曖昧な答えを返しておく。嘘は言っていない。関係者といっても、バグの被害者と加害者という関係だが。あえて誤解を誘うような言い方をしたのは、ハルヨシさんたちの協力を得やすくするためだ。


「関係者か……。今回の件は、そのファントムの協力が得られることでいいのかな?」

「はい。なかなか愉快なことになりそうだからと。例の探索者と貴族にも痛い目にあって貰うと笑ってましたよ」

「ふふ、そうかい。そういうことなら、他のみんなの協力も得られそうだね」


 ハルヨシさんの顔に暗い笑みが浮かぶ。よほど、クズ探索者たちに恨みがあるようだ。


「あの、ハルヨシさんは、連中とどんな因縁が?」

「ああ、話してなかったかな」


 驚いたことに、例の三人組はハルヨシさんの元パーティーメンバーだったらしい。と言っても、同期というわけではない。ハルヨシさんが転生したときには、連中はすでに平民だったという。


「彼らは最初、とても親切にしてくれてね。右も左もわからない僕と妹をパーティーに加えてくれたのさ」


 戦いに慣れるまではと訓練に専念させた。魔物の討伐を行わないので収入がないわけだが、食事代は彼らが肩代わりしてくれた。いずれ戦力になってくれるならいい。これは投資だと言って。だが、それが罠だったのだ。


「最初の税金の支払いのときになって言われたよ。これで明日からお前たちは奴隷だなって」


 連中の狙いは最初から、新人探索者を騙して奴隷にすることだったのだ。税金は10000エルネ。連中に依存していたハルヨシさんたちに支払えるはずもなかった。途方に暮れていたときに、手をさしのべてくれたのが、今のパーティーメンバーなのだとか。


「仲間だと思っていたルドルフたちに裏切られたばかりだったから、僕は彼らを信じなかった。最初はキツく当たったよ。それでも彼らは僕らを見捨てなかったんだ」


 どうやら、ハルヨシさんのパーティーメンバーはかなりのお人好しらしい。ハルヨシさんがボランティアとして、俺たちの新人の説明役を買って出たのも、そんなメンバーの影響があるのかもしれないな。


「おっと、話が逸れたね。とにかく、僕は奴らに因縁がある。自分たちが浅はかだったのは確かだけど、だからといって連中の行いは許されない。彼らに鉄槌を下せるのなら、喜んで協力するよ」

「ありがとうございます。でも、素材集めは、直接アイツらへの罰には繋がりませんが……」

「ああ、そうか。じゃあ、まあこれはファントムへの依頼料ということで」


 ハルヨシさんがニカッと笑う。どうやら、異存はないようだ。


「では、ハルヨシさんたちは、この中級グループをお願いします」

「ああ、任せてくれ。でも、そうなると、残る上級はジンヤ君が……?」

「ええ、まあ伝手もありますんで……なんとかしますから」


 残りの役割分担について告げると、全員から何とも言えない目で見られた。伝手(ファントム)の存在を仄めかすことで異論は出なかったが、ちょっと欲張りすぎたかも知れない。単に、強敵のレアスキルが欲しくて自分の受け持ちにしたと知られたら、またアイリに呆れた目で見られてしまいそうだ。いや、貴族対策に少しでもレベルを上げておきたいという理由もあるんだが。


 さて、ドロップアイテムに関しては、ひとまずこれでいい。実際にドロップが得られるかどうかは運次第というところもあるので、絶対とは言えないが。せめて、ボス格の出現条件さえわかればなぁ。


 まあ、条件に関して知っているかもしれない奴に心当たりはある。ついでに、貴族関連で聞きたいこともあるし、久しぶりに呼ぶか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ