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37. クズ探索者対策会議

 牢獄を後にして考える。


 キョウヤが求められている賠償額は5000万エルネ。しかも、その一部をボス格魔物のドロップ素材で支払えと要求されている。支払期限は一ヶ月。牢の中の当人に支払えるわけがないので、仲間が協力して支払ってもよいということになっている。


 クズ探索者たちは5000万エルネを即座に支払うように要求することもできたはずだ。そうなれば、キョウヤは奴隷落ちを免れなかった。にもかかわらず、期限を設けた上で一部を物納にしているのはただの嫌がらせだ。そもそもボス格の魔物の出現条件がわかっていない。入手できないであがく様を見て、溜飲を下げようというのだろう。


 キョウヤが壊したというのは超越の竜玉というアイテムだ。装備者の全能力を向上させるという強力な装飾品だという。その弁済額が5000万エルネだというのは、不当とは言えない。むしろ不自然に安いらしい。


 さらに、おかしな点がある。アイテムのことを話したとき、ペルフェは言っていた。


『超越の竜玉みたいな高ランクアイテムはベースからして存在値が高いんだ。そのせいで、簡単に乗り換えもできないんだよね。乗り換えられたら強いんだけど……。それはともかく、そんなアイテムをこの辺の低レベル探索者が壊すなんてまず無理だよ』


 乗り換え云々はともかく、高ランクアイテムは耐久性も高く、キョウヤが矢を射かけたくらいで破損するわけがないらしい。つまり、超越の竜玉が壊れたというのはクズ探索者たちの嘘。おそらく、最初から破損していたのだろう。


 それをキョウヤの仕業と主張するのは普通なら無理筋なのだが……それが、貴族探索者の後ろ盾によって覆る。エルネマインでは多くのエルネを納めた奴が偉い。貴族の発言力はそれだけ強いのだ。


「まあ、それでもキョウヤのおかげで、時間を稼げる」


 キョウヤは本来のターゲットではない。だからこそ、ボス格魔物のドロップアイテムを要求するという形で遊ばれているわけである。もし、『精霊の守護者』が同じ状況に陥った場合、即座に奴隷落ちということになっていただろう。結果的にではあるが、キョウヤは身を挺して彼女たちを救ったことになる。


 キョウヤや『精霊の守護者』の安全を確保するために、最終的には件の貴族を蹴落とす必要がある。その手段として考えていることはあるが、今すぐ実行するにはまだレベルが足りないだろう。ドロップアイテムを集めながら、準備を整えないとな。



◆◇◆



 今後の方針を相談するために、俺たちはとある酒場に集まっていた。本来の開店時間は夕方からなので、今は俺たち以外に人がいない。無理を言って貸してもらっているのだ。もちろん、相応にエルネは支払っているが。


 この場にいるのは、俺とリュウトとコウヘイ、『精霊の守護者』の三人、そして、もう一人。コルネリアから紹介された協力者がいる。


「まさかコルネリアさんの知り合いというのが、ハルヨシさんだったとは」

「まあ、一応、同期だからね。僕も声をかけられたときは驚いたけど」


 コルネリアが協力者として連れてきたのは、なんと、転生初日にエルネマインについて説明してくれたハルヨシさんだったのだ。


 今回の件、根本的な解決を図るには、件の貴族をどうにか蹴落とさなければならないと思っている。できれば、アイテムの賠償に関しても踏み倒したいところだが、衛兵隊が間に入っているせいで反故にするわけにもいかなかった。


 そうなると、ドロップアイテムを集めるための人手が必要となる。俺たちだけで達成は難しいと考えていたところに、コルネリアが言ったのだ。例の探索者に恨みを持っている人間は多いと。その一人が、ハルヨシさんだったわけだ。


「僕が代表して話を聞くよ。内容によってはみんなも協力してくれると思う」


 ハルヨシさんが言うには、クズ探索者たち――ルドルフ、ジョウジ、ヴィハーンというらしい――の被害を受けた者たちは緩く繋がりがあるらしい。話の持っていき方で彼らも手伝ってくれるそうだ。


 さて、具体的な方針だが。


「対象のボス格魔物を強さによって三段階に分類するとして……このグループをコウヘイたちに担当してもらいたい」


 紙にまとめた魔物のリストを指さして告げる。対象の中では一番弱い分類の魔物たちだ。これを、キョウヤを除く『疾風爪牙』と『精霊の守護者』の計五人で対応してもらう。


「ああ……」


 俺の要求にコウヘイは難しい表情で頷く。不服というわけではないだろう。ただ、厳しいと判断しているのだ。比較的弱いといっても、ボス格の魔物はそこらの雑魚と比べると飛び抜けて強い。転生して半年の探索者が余裕綽々で倒すような魔物ではないのだ。


「やるしかないよ、コウヘイ」

「そうだな、わかってる」


 だが、リュウトの励ましに、コウヘイは力強く答えた。厳しいからといって諦めるつもりはないようだ。


「私たちが頑張らないと」

「そうだよね。キョウヤ君は私たちの身代わりになったようなものだし」

「はい。コルネリアさんは受けた恩はきっちりと返すタイプです~」


 『精霊の守護者』の士気も高い。彼女たちはキョウヤに救われた形になるのだ。コルネリアも言っているが、その恩を返すということだろう。


 とはいえ、士気だけではどうにもならないのは事実。無理をして命を落としては困るので、ここは少しだけ手助けをしよう。


「これを使ってくれ」


 そう言って取り出したのは、ここ半年で集めた装備品だ。もちろん、自分で使うものは別にしてあるが。この半年で、俺のレベルは20まで上がっている。聞いた話によると、このレベルは借金返済を終えた探索者の平均くらいはあるらしい。当然、レベル相応の狩り場で手に入れたアイテムはコウヘイたちにとっては良品だ。


「それに、こういうものもある」


 ついでに、大盤振る舞いだ。使わずにとっておいたスキル結晶体を一緒に並べた。ペルフェ、ルゥルリィと思わぬところで仲間が増えることがあったので、ストックしておいたものだが、まさか、こんな風に人に提供することになるとはな。


 スキル結晶体は俺の秘密がバレるリスク要因となる。それでも提供したのはキョウヤやアイリたちのためという理由もあるが……何より、あのクズ探索者たちの行動が気に食わないからだ。子供がちょっと天狗になるくらいならともかく、人を平気で踏みにじるやつは大嫌いだ。


 全ては、クズどもを見返してやるためだ。多少、リスクはあっても、俺はやるぞ!


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