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224. 次の目標は

 なにはともあれ、ヒィトたちにチェルを押しつけることができた。今後の打ち合わせなどもあるだろうからと、俺たちは店を出たところだ。ルゥルリィとフェリルには宿環に戻ってもらった。


 あとは、彼らがうまくチェルの手綱を握れるよう祈るばかり。ゲヒトカ三人組は根が素直すぎる気配があるので、フェイラが苦労しそうな気もするが……まあ、頑張って欲しい。


 さて、厄介な問題が一つ解決したので、これでひと安心……とはいかなかった。


「バーハの実験に正体不明の同行者か」

「絶対まともなヤツじゃないよね」


 ペルフェがうんざりとした顔をする。俺の表情も似たようなものだろう。厄介ごとの匂いがする。


 その存在が発覚したのは、チェルからの聞き取りの結果だ。だが、大した情報は得られなかった。何故なら、その人物のことをチェルがまるで覚えていなかったからだ。


 チェルがポンコツだったからではない……はずだ、きっと。おそらく、違う。たぶん。


 大変残念ながら自信を持って断言はできないが、ヤツのポンコツさだけでは少々無理があるのだ。何故なら、チェルはその人物のことを本当に何一つ覚えていなかった。


 朧気(おぼろげ)に誰かいた気はするらしい。だが、容姿や種族はおろか、性別すら覚えていないという話だ。それどころか、どんな会話を交わしたかすら思い出せないと言う。


 それだけすっかり記憶が抜け落ちているなら、誰かがいたという記憶が勘違いや思い込みである可能性もありそうだ。だが、誰もいなかったとすると、それはそれで違和感があるんだとか。


 何でもバーハとチェル自身の会話や行動は覚えているらしい。だが、記憶には不自然な空白がある。誰かがいないと会話がつながらない部分があるそうだ。


 厄介なことに、無理に思い出そうとすると、目の前が真っ暗になり、動悸が激しくなるらしい。傍目に見ても異常な状態だったので、それ以上はやめさせた。何らかの能力によって記憶を封じられているのだとしたら、無理をしたところでろくなことにはならなそうだったからな。


「素性はわからんが、ソイツが黒幕っぽいな。トロイスの関係者か?」

「その可能性は高いね。と言っても、まるで情報はないんだけど」


 まあ、正体は不明だが、その存在が判明しただけでも一歩前進だ。これに関してはあとでユイットに報告しておこう。バーハとのつながりで特定できる可能性もある。


 とりあえず、現段階で俺たちにできることはない。というわけで、当初の予定通りの行動をこなすことにした。向かう場所はまた合成屋だ。


 声をかけてきた職員を適当にあしらってスキル結晶体の合成をはじめる。素材とするのはゴウルの砦で集めた物理攻撃系のスキル。今回は【格闘】や【投擲】なども混ぜてみるつもりだ。


 数も種類も十分。今日こそはレアスキルを合成してみせる……と意気込んでチャレンジしたのだが、なんと一度目の試行で見たことのないスキルができた。



【武芸百般】

あらゆる武芸の威力が上昇し、判定にプラスの修正値を得る



 簡易鑑定の説明では、いまいちはっきりしないが、おそらく全魔術と同じ系統の物理攻撃版ってところだろう。スキルレベルがないところも同じだ。


「あっさりとできたな」

「やっぱり、【格闘】を混ぜたのが良かったのかな」

「【投擲】も入れたぞ。あとはほぼ変わりない。スキルレベルはむしろ低いくらいだ」


 ペルフェと話し合って、条件に当たりをつける。何度か試してみて、何となくわかってきた。おそらく、“武器スキル3種+盾系スキル+非武器系物理スキル2種”あたりが最低条件だ。前回は武器スキルだけしか素材にしなかったから、成功しなかったわけだ。ちなみに【扇術】は盾系スキルに分類されるらしい。分類がわかりづらいな……。


 ひとまずは、これで目標達成。では、次はどうするという話になる。


「レアスキル探しを続けてもいいが……ちょっと手がかりがなさ過ぎるな」


 同系統のスキルを集めて合成すれば統合されたスキルができるんじゃないかと思うが、その“同系統”っていうのが判断しづらい。環境耐性とかならワンチャンありそうだが、それでも武芸百般のような条件があると探り当てるのは苦労しそうだ。


 これがゲームならそういう試行錯誤も嫌いじゃない。が、現実となると、合成素材を集めるのにも手間がかかる。それだけに専念するのは少々辛い。主にモチベーションの問題で。


「せっかくたくさんの迷宮があるんだし。そっちに挑戦してみたらいいんじゃない? 魔物からだって新スキルは見つかるだろうし」

「そうだな。それがいいか」


 迷宮探索がてらスキルを集め、ダブったものを合成するくらいがちょうどいいかもしれない。


「そういうことなら、高レベルダンジョンに挑戦してみるか。レベル上げのチャンスだ」


 どうせなら、最高難度のダンジョンにするか。確か、推奨レベル60超で、いまだに踏破者がいないんだとか。


 推奨レベルには全然足りないが、ステータス的に不足はないだろう。レベリングも捗るし、俺たちにとってはボーナスダンジョンかもしれないな。


「ご利用ありがとうございました」


 ハキハキとした挨拶を背中に受けて、合成屋をあとにする。


 愛想はいいんだが、どうも印象が薄いんだよな、ここの職員。まあ、前任者がチェルだから、仕方がないか。比較する相手が悪すぎる。

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