213. 武器スキルを求めて
牛宝箱を撃破して得た斧は、ほどほどの能力だった。
【凶牛の蛮斧】
◆分類◆
武器・斧(両手斧)
◆攻撃性能◆
物理補正:B
◆特殊効果◆
低確率で与えるダメージが倍加する
両手武器にしては攻撃性能があまり高くないし、特殊効果もランダム性があって使いづらい。まあ迷宮の難度を考えれば相応と言えなくはないが、牛宝箱の強さを考えると見合ってはいない気がする。いや、鍵開けで倒せると考えると、そうでもないのか?
ただまあ、いろいろと驚かされた上での成果がこれだ。何とも言えない徒労感があった。
「今日は帰るか」
「そうだね……」
俺が呟くと、ペルフェもげんなりとした表情で同意した。どうやら同じ気持ちらしい。
翌日。宝箱漁りはもう充分ということで、合成のための武器スキル集めをすることにした。場所は『ゴウルの砦』にするつもりだったのだが――――
「封鎖中?」
「はい。ただいま、探索者の立ち入りは禁止されています」
迷宮への入り口は、探索者ギルドの職員によって封鎖されていた。もともと『ゴウルの砦』は探索者ギルドが管理している迷宮で、探索者の試験や何らかの実験をするときに利用されているらしい。今回もその一環で、大規模な実験とやらをやるため、探索者を完全に閉め出しているようだ。
あてが外れてしまったが、代わりの迷宮はすぐに見つかった。というか、その職員に武器を扱う魔物が出現する迷宮はないかと尋ねて、紹介してもらったのだ。それが『薄闇の戦場跡』という迷宮だ。レベル帯は『ゴウルの砦』よりはやや高く、40前後。その分、魔物のスキルレベルも高いのなら、俺としては都合が良い。
「不気味な場所だな」
「アンデッドが出る迷宮みたいだからね……」
迷宮内は基本的に平原地形らしい。疎らに草が生えているが、大部分は黒土が露わになっている。遮るものはほとんどないはずだが、薄暗いせいで視認できる範囲は狭い。暗視スキルがあっても、見通せるのは30mくらいまでだ。
主な敵は骨系統の魔物。いわゆるスケルトンってヤツだな。人型スケルトンは様々な武器を扱うので、武器スキルを集めるには都合が良さそうだ。
ルゥルリィとフェリルも呼び出して、探索を開始する。早々に、フェリルが暗闇に向けて吠えはじめた。
「わふ!」
「お、早速、魔物か?」
「わふわふ!」
フェリルの先導で進むと、すぐに俺にも魔物の気配がわかった。しかし、どうも気配が薄い。擬態する系統の魔物は気配すら隠すが、そのタイプとも違う。こちらは察知できるが、ぼんやりとしてはっきりとは掴めないといった感じだ。
これがスケルトンの特性なのだろうか。敵の接近には気づけても、思わぬ方向から攻撃を受ける恐れがあるな。遮るものがないのに、見通しが悪いので、遠距離攻撃が厄介そうだ。
だが、その懸念は杞憂だったかもしれない。何故なら、ヤツら、物音を隠しもせず近づいてくるからだ。カラカラ、カラカラと不思議な音が進行方向から聞こえてくる。やがて、暗闇の中から、三体のスケルトンが飛び出してきた。短槍を持つのが二体、片手剣と盾を持つのが一体。いずれも近接攻撃タイプらしい。
「ますた、これ、骨が、鳴ってるの?」
ヤツらを見たルゥルリィが首を傾げる。今まさに戦闘が始まるというタイミングで、何を呑気な……と言いたいところだが、気持ちはわかる。スケルトンが動く度にカラカラと音が鳴るのだが、その発生源が不明なのだ。別に骨同士がぶつかっているわけでもない。それどころかヤツらのパーツは魔法的な不思議パワーでつながっているらしく、物理的な接触がない。音が鳴る要素は皆無である。
「不思議だよね。でも、普通のスケルトンはこんなもんだよ」
魔鎚で短槍スケルトンの足をぶん殴りつつ、ペルフェが答える。両脚の大腿骨を破壊されたスケルトンは体を支えきれずに崩れ落ちた。不思議パワーで動いてはいても足がなければ立てないらしい。
まあ、動く人骨のように見えても、コイツらは創造エネルギーによって生み出された魔物だ。動く度にカラカラ鳴る謎体質であったとしても、そういう存在なのだと受け入れるしかない。
「それより、スキルを奪うつもりなら壊しすぎないようにね。ある程度、骨を砕くと消えちゃうから」
「わかっているが、脆そうだな」
「脆いね。でも、パーツごとに独立してるから、ピンポイントで狙えば問題ないよ」
ペルフェのアドバイスを受け、俺も大腿骨を狙って剣で斬りつけた。すぱりと両断すると、歩けなくなったスケルトンが地面に崩れ落ちる。まだ戦意はあるらしく、匍匐前進で寄ってくるが、適当に動き回れば追いつかれることはない。
残る一体もルゥルリィが蔦で拘束している。これで完全に無力化できた。
「お、よしよし。武器スキルはちゃんと持ってるな」
狙い通り、スケルトンは武器スキルを所持していた。短槍スケルトンは【槍術】、片手剣スケルトンは【剣術】と【盾術】だ。それ以外はろくなスキルを持っていなかったが、それはよしとしよう。
スキルさえ奪えば這い回る骨どもに用はない。さっさととどめをさしてしまいたいところなのだが……
「わふっ!」
フェリルがぶんぶんと尻尾を振りながらスケルトンに齧り付いて離れない。哀れなスケルトンはよだれでべたべたになっている。
「犬は骨が好きだよなぁ」
「……厳密に言えば、あれは骨じゃないし、フェリルも精霊のはずなんだけどね」
「ルゥは、食べないよ」
結局、フェリルはスケルトンが消滅するまで齧りつづけた。その間、およそ10分。思わぬ時間を取られたが……フェリルが満足そうにしていたので、よしとするか。




