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206/216

206. 新スキルを試しに来たのだが

 俺たちは、再び『火の河』へとやってきた。別にこのダンジョンにこだわる必要はないんだが、合成屋で得た【聖炎護法】の性能をチェックするには良いかと思ったのだ。


 ちなみに、スキル屋で在庫を漁った結果、聖炎護法は4つ確保できた。というわけで、全員が習得している。おかげで、俺自身は前回ほど暑さに耐えかねるという感覚は無い。


「どうだ? ルゥルリィ、フェリル?」

「暑い~」

「わふぅ」

「うーん。やっぱり、適性の関係で弱体化してるせいかな」

「環境耐性の方もつけてるんだが、それでもか」


 スキルの恩恵で、俺やペルフェは『火の河』でも不自由なく活動できる程度には適応できた。しかし、ルゥルリィとフェリルにはまだ厳しいらしい。種族適性によって聖炎護法の効果も低減してしまっているようだ。


 ただまあ、暑い暑いと言いながらも、元気に動き回っているので、余裕はありそうだ。宿環の外でこれだけ活動できるなら、宿環に籠もればこの環境でも問題なくやり過ごせそうだな。


「せっかくだし、迷宮攻略もやっていくか」

「……あい」

「わふぅ……」


 ルゥルリィとフェリルは少々不満そうだが、それでも反論はなかった。




「わふわふ!」

「凍れ、凍れ!」


 現れたそばから、魔物たちが氷漬けにされていく。特に張り切っているのは暑がりな二人。過剰なほどに氷をばら撒いて、少しでも涼しくしようという魂胆らしい。焼け石に水……とも言えない。ここは溶岩地帯だというのに、あちこちに氷の柱が乱立していた。おかげで、周辺の温度はわりと落ち着いている。氷の精霊であるフラウルの面目躍如といったところか。


 快適なことは良いことだ。だが、そのせいで、俺の出番は全くなかった。合成屋で得た新しいスキルの検証どころか、スキルドレインも使えていない。これじゃ、何のためにダンジョンに潜っているのかわからないな。


「もう少し攻撃を緩められないか?」

「無理~」

「わふぅ」


 俺の要請にルゥルリィたちは全力で首を振る。どうやら二人の苦手意識は相当なもののようだ。行動ペナルティは出ていないように思えるので、単純に好き嫌いの問題な気がするが。


「二人に関してはスキルの検証もできたから、しばらく宿環に戻ってもらったらいいんじゃない?」

「まあ、そうだな」


 ペルフェの提案に頷く。


 わざわざルゥルリィたちに宿環の外で活動してもらっていたのは、スキルの効果が重複するかどうか確認するためだ。暑さ対策として用意したスキルは【聖炎護法】・【高温耐性】・【環境耐性:炎熱】の3つ。いずれも種族適性によって弱体化してしまうようだが、3つ組み合わせることで耐性が強くなることは確認できた。効果が似ていても、別スキルなら重複して発動するようだ。予想通りとはいえ、それが確認できたのは収穫だった。


 というわけで、二人にはしばらく休んでいてもらおう。活動に不自由しないとはいえ、やはり暑い場所は嫌いらしく、嬉しそうに二人は戻っていった。


「だが、それならどうして、こっちのスキルは統合されてしまったんだ?」


 暑さ対策スキルの効果は重複する。だが、全スキルの効果が重複するわけではないらしい。というか、俺が新しく習得したスキルは、どうも挙動がおかしい。


 その新スキルの名前は【全魔術】。何がおかしいかというと、スキルなのにレベル表記がないのだ。そして魔術スキルなのに、アーツが存在しない。おまけに、このスキルを取得した途端、俺が取得していた全ての魔術スキルが消えてしまった。


 名前の印象から、消えたスキルは全魔術に統合されたんじゃないかと思っているが……それすらも真実かどうかわからない。本当に、ただ消えてしまった可能性もある。


 魔術系スキルの結晶体にはストックがあるので、改めて取得しようとしてみたが……ダメだった。この状態で魔術系スキルの結晶体を使っても、効果がないらしい。結晶体は消費されるが、スキルリストに変化はなかった。


「やっぱり、スキル結晶体を合成したのが原因じゃないの?」


 ペルフェは呆れた様子だ。そんなはずはないと言いたいところだが、残念ながら、今のところ否定する材料がなかった。


 実は、この全魔術、技能石から合成したスキルではない。スキル結晶体を合成した、もともとの仕様にはなかった手段で生み出されたスキルなのだ。


 先日、合成屋で遭遇した御使いのバーハは、スキル結晶体にも興味津々だった。俺たちから結晶体をふんだくると、数日間を費やしてその性質を解析したらしい。そして、その知見を活かして、装置をバージョンアップしたそうだ。つい昨日、合成屋に立ち寄ったときにそう連絡を受けた。といっても、本人ではなく、サボり職員のチェルからだが。


「問題はないと言っていたそうだが……まあ、御使いだからな」

「そうだねぇ」


 御使いの“大丈夫”を信じるほど、純真ではない。短時間の接触だったが、バーハは職人気質というか、一つのことを気にしだしたら他が疎かになる性格に見えた。セプテトと同じタイプだ。生成物に不備があったところで何ら不思議ではない。


 何にせよ、習得済みのスキルが消えてしまったのは痛いな。全魔術をスキルドレインで外せば、改めて魔術スキルを習得できるとは思う。だが、ストックの結晶体は、当然ながら俺自身のスキルレベルより低めだ。特に、風魔術は大きく下がってしまった。この先バーハに会うことがあれば、きっちりとクレームをいれるとしよう。


「でも、まだ使えないと決まったわけじゃないんでしょ」

「そうだな。まずはそれを確かめないと」


 ペルフェの言うとおりだ。スキルの説明によればあらゆる魔術を操ることができるそうなので期待は持てる。だが、使い方がわからないんだよな。なにせ、レベルもアーツもないんだから。


「まずは獲物を――ん?」


 言いかけたそのとき、何者かが近づいてくることを察知した。数は4……いや、5だ。最初の4つはきっと探索者だ。そして、それを追う強力な気配。


 これは厄介ごとかな?

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