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173. わからないわ!

「さて、ようやく自由にやれるな」

「わふわふ!」

「ルゥも」

「フェリルちゃんも、ルゥルリィちゃんも元気ねぇ」


 ジルジバたちと別れてしばらくしたところで、フェリルたちを呼び出す。戦力面に関して言えば俺とペルフェだけで十分なので、実を言えばこれは彼らの気晴らしである。宿環に閉じこもったままだと窮屈らしいからな。短い間ならばともかく、五日も閉じ込めておくわけにはいかない。


「でも、どうするの? 思わぬ場所が繋がってたりするんでしょ。誰かに見られちゃうかもよ」

「ん? ああ、そうか」


 ペルフェの指摘は一理ある。氷窟は複雑に入り組んでおり、分岐するだけでなく、ときに合流しているところもあるようだ。他のパーティーと偶然遭遇するなんてこともあり得なくはない。


「フェリルがいれば、遭遇する前に気づくと思うが……」

「わふ?」

「まあ念のため、ファントムスタイルにしておくか」

「じゃあ、僕は戻るね!」

「そうだな」


 万一に備えて、ここからはヒュム二人組ではなくファントム一味として行動することにしよう。


「で、ネーフェ。はぐれフラウルの場所はわかるか?」

「もちろん――――わからないわ!」


 腕を組み、ふんぞり返ってネーフェが言う。何故無駄に威張る。


「おい、それでいいのか、御使い」

「何を言ってるのよ。この世界にどれだけの精霊ちゃんがいると思ってるの? その全ての居所を把握するなんて無理よ」

「いや、それはそうかもしれないが。でも、近くにいたらわかったりはしないのか?」

「わからないわ!」


 ああ、うん、そうか。


 まあ、もともとネーフェがついてくる予定はなかったのだ。初めから期待していない。


「フェリルはどうだ? 仲間の存在を感じたりしないか?」

「わふぅ?」


 しかし、本命のフェリルも微妙な反応だ。


 まあ、洞窟は広い。仲間の気配を察することができたとしても、全域をカバーすることはできないか。


「仕方ない。地道に歩いて探すか。何か気づいたら、教えてくれ」

「わふ!」


 フェリルが元気よくひと吠えして、先頭を歩き出す。


 氷窟で襲ってくる魔物は、まず青白い亀だ。強くはないがちょっとウザい。


 というのも、コイツは【氷鎧】というスキルを持っている。水魔術系列で、氷の鎧を纏ってダメージを軽減するというのがその効果だ。一度攻撃すれば砕けて消えるが、その代わり、砕けた氷が刃となって反撃してくる。ステータス差があるので、ダメージはさほどでもないが、とにかく面倒な相手だ。


 ただ、フェリルとは相性が良い。どうもフェリルは雪や氷のダメージを無効化できるらしい。反撃の氷の刃も、口でキャッチしておやつのようにガシガシ噛んでいる。


 他にサメっぽい何か。コイツはどういうわけか、氷窟の壁や床を泳げるらしい。それらに潜んで待ち伏せるのでなかなか厄介だ。気配察知で場所はわかるので奇襲されることはないが、近づくまで氷から出てこないので、どうしても向こうに先手を取られてしまうのだ。


 もちろん、俺たちが苦戦するほどではない。だが、できるなら楽をしたい。解決策を示したのはルゥルリィだった。


「ルゥ、釣る!」

「釣る?」


 なんのこっちゃと思いつつ任せると、ルゥルリィが自分の体から蔦を生やした。いつものよりも少し太めだ。それをゆらゆらと揺らしながら、謎サメが潜んでいると思しき場所に近づけていく。


 接近した蔦を人間と勘違いしたのか、謎サメが食いついた。その瞬間、蔦が巻き付く。謎サメが逃れようともがくが、蔦は決して離さない。一瞬の早業だった。


「獲った!」

「な、なるほど」


 これを釣りと言っても良いかは微妙なところだが、有効な手段だ。ルゥルリィは蔦を同時に何本も操れるので、謎サメの処理は専らルゥルリィに任せることになった。捕獲した獲物は生命力回復用に何匹かキープしておくつもりらしい。背後にいくつもの触手を揺らす様は、謎の迫力がある。まるでボス格のような風格だ。


 ちなみに謎サメの初見スキルは【水泳】だった。簡易鑑定の説明を見る限り、本当にただ泳力が向上するだけのスキルらしい。一応確保しておいたが、まあ使う機会はないだろう。壁とか氷とかをすり抜けるスキルを期待したが、それは残念ながら持っていなかった。種族的な特性か何かなのだろうな。


 一番珍妙な魔物は氷柱(つらら)もどきである。こいつも潜伏系で近くを通ると、天井から落下してくる。その状態だと、まるっきり氷柱だ。地面に落ちてからは、短い手足が生えて四足動物のようになる……が、動きが鈍いので手足は使わず空を飛ぶ。


 強さはまあ、ぼちぼちだ。頭を目がけて氷柱が飛んでくるので視覚的な恐怖感はあるが、飛翔スピードもさほどではない。ここまで来るくらいの探索者なら、よほど極端な成長をしていない限り十分に対応できるだろう。


 初見のスキルには【脳天打】があった。パッシブ効果はなくて、鈍器系の攻撃アーツが使えるようになるらしい。まあ、俺とペルフェ向けだな。


 総評すると、トリッキーな敵が多く、足場の悪さもあって油断すると危険という感じか。まあ、俺たちが苦戦するような敵もいない。手加減の練習をしながら進むにはちょうど良いか。



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