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132. 困ったときの情報源(代理)

 さて、フェリルをフラウルの住処へと連れていくというミッションが追加されたわけだが、一番の懸念は魅了が切れたときのフェリルの反応である。ノーベイ周辺で取得したスキル結晶体を吟味していると、ついにそのときが訪れた。


「わ、わふ?」


 機嫌よくルゥルリィとじゃれていたフェリルが、突然キョロキョロと周囲を見回しはじめる。しばらくは戸惑った様子でまごまごしていたが、やがて逃げるように部屋の隅へと移動していった。そのまま、俺たちをじっと見ている。


「警戒されてるな」

『そうだね。でも、雪山のときほど敵愾心はないみたい』

「たしかにな」


 ペルフェの言葉通り、戸惑いは強いが敵愾心はかなり薄れているように感じられた。魅了前は俺たちを威嚇するように吠えるばかりだったが、今はそんな素振りもない。俺たちを見極めるように観察しているといった様子だ。


「フェー。怖くない、よ?」

「わふ」


 ルゥルリィがゆっくりと手を伸ばす。フェリルは一瞬びくりとしたものの、ルゥルリィの手を受け入れて、大人しく撫でられている。


 こうなった理由を考えるなら〈心を盗む〉の影響だろうか。魅了状態の記憶が残るのだとしたら、俺たちがフェリルに敵対的でないことがわかったはずだ。


 この感じなら、フェリルを再度魅了状態にする必要はなさそうだな。むしろ、かえって信頼を損ねるだろうから、控えた方が良さそうだ。


「フェリル。俺たちはお前を同族たちの住処に送り届けようと思っている」


 魅了されていたときの記憶が残っているのなら把握しているだろうが、念のために説明する。俺は精霊語を話せないが、精霊は人の言葉を理解するので、フェリルにも伝わるはずだ。予想通り、フェリルは俺の様子を窺うように上目遣いでゆっくりと頷いた。


「俺たちはフラウルの住処を知らないんだが、フェリルには心当たりがあるか?」

「わふ……」


 尋ねると、フェリルは悲しそうに首を振る。


 まあ、そうだろうな。自分が精霊だという認識があったかさえ怪しいところだ。それでも、今の状況を受け入れているのは自分が銀狼たちとは違う存在であることに薄々でも気づいていたからだろう。


 となれば、知ってそうなヤツに聞いてみるのが、手っ取り早い。バグ修正の進捗も聞きたいし、セプテトを呼び出してみるか。


 というわけで、ヤツをシステムカードから呼び出そうとしたわけだが――……


「また、アナタ? 兄様は忙しいんだから、手を煩わせないで。用件なら私が聞くわ」


 空間の歪みとともに現れたのは、何故かユイットだった。


 突然、現れた見知らぬ御使いに、フェリルは尻尾を丸めて小さくなった。それをルゥルリィが抱きかかえて撫でる。こちらはもう慣れたものだ。ペルフェも特に気にした様子もなく、ぷかぷかと宙に浮いている。


「ああ、すまない。ところで、忙しいって、セプテトは何をしているんだ?」


 尋ねると、ユイットは呆れ果てたとばかりに首を振ってみせる。


「いつものよ。アナタの報告した種族バグを修正してたんだけど、その途中で色々と応用ができそうなことに気づいたみたいなの。今は修正作業そっちのけで新機能を作れないか試してるみたいよ。ああなると、ダメね。どうやっても止まらないもの」


 口調と裏腹に、ユイットの顔には優しげな笑みが浮かんでいる。日頃の言動はヤバいが、コイツがセプテトを慕っているのは本当らしい。それが何故、あんな態度になってしまうのか。


 ユイットの天邪鬼はおいておくとして、セプテトも相変わらずのようだ。正直に言えば、バグ修正を優先して欲しいところだが、ユイットが匙を投げるくらいなのでどうにもならないのだろうな。気長に待つしかない。


 さて、図らずもバグ修正の進捗について聞くことになったが、本題はフェリルの件である。


「なるほど。それでフラウルの幼体を連れてるわけね」


 簡単な状況説明を含めて話すと、ユイットはフェリルに視線をやって頷いた。


「本来の住処と外れた場所で生まれた精霊、か。かなり珍しいわね」

「何者かの作為を感じるか?」


 何者か――例えば、トロイスとか言う御使い――の陰謀に関わっているのではないかとも考えた。だが、少なくともスキル看破で確認してもフェリルは凶魔関連の怪しげなスキルを持っていない。とはいえ、それだけで無関係と断ずることもできないので、ユイットに尋ねてみたわけだが――……。


「どうかしら。珍しいとはいえ、なくはないわけだし。とはいえ、偶然と断定もできないわね」


 情報が少なすぎるせいか、ユイットも判断しかねるようだ。ルゥルリィの場所まで歩くと、ふいにフェリルを抱え上げた。


「わふっ!?」

「大人しくしてなさい」


 抱き上げたフェリルを()めつ(すが)めつじっくりと観察するユイット。その間、フェリルは硬直したように動かない。


「うん。特に問題ないわね」


 抱え上げたときと同じ唐突さで、観察を終えたユイットが、ルゥルリィの手元にフェリルを戻す。観察されていただけなのだが、フェリルはぐったりだ。よほど緊張したらしい。


「何を見てたんだ?」

「色々よ。スキルや特性、何者かの干渉、そのほか。魅了を受けた形跡があるけど、それはあなたよね? それ以外に不自然な干渉の形跡は見られない。少なくとも、何者かの直接的な影響を受けたわけじゃなさそうよ」


 御使いの能力なのか、ユイットはかなり詳しくフェリルの状態を把握できるようだ。その力を使っても、怪しげな干渉は発見できなかったらしい。とりあえずは、ひと安心といったところか。


「あとは、フラウルの住処だな」

「ああ、そうだったわね。アルブリアの南にリフレイジャって森があるから、そこを探しなさい。その辺りも魔物が異常発生しているみたいだから調査のついでに立ち寄れるでしょ」

「そうか。助かった」


 礼を言うと、ユイットは気にするなと首を振った。


「いいのよ、兄様のためだもの。これで用件は終わりよね? それなら、早く帰って兄様のお世話をしないと」


 あくまでセプテトのためということらしい。この言葉……というか今日の言動だけならば、本当に献身的に見えるんだが、どうして本人の目の前だとおかしくなるんだ。


 そんなツッコミは心の奥にしまって、ユイットが転移するのを見守る。


「ああ、そうだったわ。サブクラスの方のバグは修正したようだから、早めに設定しときなさいな。それじゃあね」


 最後にわりと重要なことを言い残して、ユイットは去っていった。どうやら、種族バグのせいで先送りにされていたサブクラスの設定ができるようになっているらしい。


 そういえばサブクラス候補に☆5職が残っているのを言いそびれていたが……セプテトの方も忙しいようだし、もういいか。ここで再度修正となると、正式なサブ職を設定できるのがいつになることやら。どうせメインもバグ職なわけだし、大差なかろう。

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