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107. 新アーツ二つ

 セプテトに戦闘職業をバージョンアップしてもらったことによって、特殊スキルに新しいアーツが追加された。スキルレベルの上昇に伴って追加される形だが、現時点でも二つのアーツが新たに使える。


 一つは【偽装】スキルの〈人相偽装〉だ。偽装できるのは顔つきだけだが、服装や髪型なんかはスキルが無くとも変えることができる。人相だけでも変えられれば、正体を隠す上ではかなりのアドバンテージになるはずだ。


「どうだ?」

『あははは! 悪人面だ!』

「ますた、目つき、悪い!」


 切れ長の目のイケメンをイメージしてアーツを使ったのだが、ペルフェとルゥルリィからの評判はいまいち。俺の美的センスの問題か、それともイメージ通りの顔になれていないのか、鏡がないのでそれはわからない。だが、いずれにせよアーツの効果はあったようだ。


「別人に見えるか?」

『まあ、顔だけなら? 僕が間違えることはないけど』

「ますたは、ますた、だよ?」


 う、ううん? どういう反応なんだ?


 まあ、ペルフェとルゥルリィは精霊だからな。人を識別する際に見た目はそれほど重視していない可能性がある。


 やはり、人間で試してみるべきか。となれば、都合が良いのは門前の守衛だろうか。確実に人相偽装前の俺を知っているし、接触もしやすい。


 というわけで、出てきてすぐだが、一旦門まで戻ることにした。ルゥルリィは宿環に戻しておく。


 人相は偽装しているし、防寒コートも外している。髪型はそのままだが、印象はかなり変わっているはずだ。そう信じて守衛の前を通ろうとしたのだが――……


「おお、もう戻ったのか? コートはどうした? 毛皮がないアンタじゃ、寒いだろう」


 どう聞いても別人とは思われていない。


「……俺が誰だかわかるのか?」

「ん? 昨日来たヒュムの探索者だろ?」

「そうだが」


 やはり、間違いなく俺を“ジンヤ”として認識している。理由を聞いてみればわりと単純なことだった。


 実は、今、ノーベイにヒュムは俺一人だけらしい。そして、他の街からノーベイに移ってくるにしてもこんな朝方に到着することはまずない。なので、ヒュムの男という時点で、ほぼ“ジンヤ”であることは確定するようだ。なんてこった。


「じゃなきゃ、さすがに判別はできないぜ。何故なら俺にはヒュムの顔なんて見分けがつかないからな!」


 がははと笑うペンシルヴァのおっさん。が、今の言葉は聞き逃せないぞ。おっさんは今、“ヒュムの顔なんて見分けがつかない”と言った。考えれば当たり前だ。俺もペンシルヴァの顔を見分けることはできないのだから。多少顔が違っていたところで気づきもしないだろう。むしろ、仕草や装備品などで総合的に判断するので、顔とは関係ないところの方が手掛かりになったりする。


 まあ、つまり、異種族相手に〈人相偽装〉は大して役には立たないということだな。あとでセプテトに抗議しておこう。


「そうか。邪魔して悪かったな」

「お、おう? また戻るのか。気をつけろよ!」


 戸惑う守衛のおっさんに見送られ、再び街から離れる。ついでに、人相偽装も解除しておこう。発動中は一定時間ごとにマナを消費するアーツなので、無駄に維持しておくのはよろしくない。


 さて、残念ながら〈人相偽装〉は使えないアーツだったが、新アーツはもう一つある。【盗む】スキルの新アーツは〈心を盗む〉だ。


 うん……なんだ。これ、大丈夫なアーツなのか?

 人に使ったら倫理的にヤバい気がするので、とりあえず魔物相手に試してみることにしよう。


「よし、アイツに使ってみよう」


 雪原を適当に歩いて見つけたのは、白くてデカい虎だ。ヤツをターゲットにアーツを試してみることにした。このアーツにも発動条件があって、見つめ合った状態で投げキスをする必要がある。よく考えたら、この条件だと人間に使うにはハードルが高すぎるな。俺には無理だ。


「ギャウン!?」


 アーツの発動直後、こちらに気づいて爆走してきた白い虎はおかしな声で鳴いたあと、戸惑ったように動きを止めた。どうやら、アーツの効果が発揮されたらしい。これで虎は一時的な魅了状態になっているはずだ。


「俺の言葉がわかるか?」


 確認のために聞いてみるが……目立った反応はなし。こちらを攻撃してくることはないが、だからと言って言葉が伝わるようになるわけではないらしい。


「このアーツもあまり意味が無いな……。いや、スキルを奪うにはいいか」


 襲いかかってくる大量の魔物を一匹だけ残すというのは意外と面倒なのだが、適当に魅了しておけばその労力が軽減される。セプテトの想定していた使い方とは違うだろうが、まあ使えなくはないかもしれない。発動条件がまともならなお良かったのだが。


『んー、アーツを使ってみたら? ほら、あの吼えるヤツ』

「ああ、アレか」


 ペルフェが言っているのは、【咆吼】スキルの〈支配者の檄〉だろう。魔獣系など一部の魔物に指示を与えるアーツだ。スキルが弱体化している影響で、かなり格下相手にしか通用せず、単純な内容しか指示できないのであまり使う機会はないが、魔物相手に意思を伝えるという効果があるのは確かだ。試してみる価値はあるか。



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