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100. 力を貪る凶々しき魔

『スキルを奪えばいいんじゃない?』

「いや、難しいだろう。近寄るとやられる」


 時折、地面から生えてくる尖塔――強力すぎる土魔術を避けながら、ペルフェの提案に否定を返す。触れていないと発動できないのが、スキルドレインの弱点だ。スキルを奪うには必ず巨人のそばに近寄る必要がある。ルゥルリィが足止めしてくれているとはいえ、近づけば奴の攻撃に晒されることは避けられないのだ。スキルドレインは現実的とは言えない。


 だが、一方でスキルを把握しておくのは悪くない。相手の攻撃パターンを把握しておけば、対策はとりやすい。ネイルのスキルは看破済みだが、巨人になってからは明らかに行動パターンが変わった。再度確認しておいた方が良いだろう。


 攻撃の切れ間を狙い、俺は巨人に向けてスキル看破を発動した。


「何だ、このスキルは?」


 脳内に浮かんだスキルはたった一つ。【力を貪る凶々しき魔】という謎のスキルだけ。


「じゃあ、これは何なんだ? 土魔術ではないのか?」


 足下からせり上がってくる尖塔を避けながら呟く。周囲には変わらず砂嵐が吹き上がっている。これもスキルではないということか?


 いや、“力を貪る”というフレーズが引っかかる。もしかしたら、これはスキルの力を奪い統合するスキルなのかもしれない。ネイルが使っていたスキルも取り込んで統合したとすれば、見かけ上ひとつのスキルであってもおかしくはないが……。


 まあ、何の根拠もない想像にすぎない。いずれにせよ、スキル看破でもヤツの能力を見抜くことはできないようだ。


 しかし、やることは変わらない。どうせスキルを奪うのは難しいのだ。遠くから撃破してしまえばいい。


「ペルフェ、やるぞ」

『了解!』


 ペルフェに肉斬骨断を付与して、長杖形態を取らせる。高威力の魔術で一気にケリをつける作戦だ。巨人がルゥルリィの蔦を引きちぎろうと藻掻いている隙を狙って〈フレイムピラー〉を発動した。炎の柱が巨人の足下から噴き出す。全身とまではいかないが、体の半ば以上を業火が包んだ。


「よし、ダメージは通る!」


 反動ダメージで崩壊し、ツールへと戻ったペルフェを再度長杖へと戻す。面白みはないが、この連続で巨人は始末できるはずだ。だが――……


「なんて回復速度だ!」

『ちょ、ジンヤ! 来るよ!』


 巨人はフレイムピラーで確かにダメージを負った。だが、ヤツは凄まじい治癒能力をもっているらしく、その傷は瞬く間に回復していく。しかも、攻撃に使った魔術の選択が悪かった。フレイムピラーがルゥルリィの蔦の拘束を焼き切ってしまったので、巨人が自由に動ける状態になっている。


 その隙を狙っていたかのように、巨人が駆けた。その先にいるのは、もちろん俺だ。


 咄嗟にペルフェを盾にする。比喩ではなく文字通りの意味で、だ。体を覆うほどの大盾に変化したペルフェで巨人の攻撃をガードした。


「ぐふっ……強烈だな!」

『うへぇ。クラクラするぅ……』


 体が軋むような衝撃を受けて吹き飛ばされる。ペルフェも一撃でツールに戻ってしまった。だが、俺へのダメージはさほどでもない。せいぜい一割ほどだ。防御が間に合えば、耐えられる。


「さて、どうするかね」

『アイツの治癒能力は反則だよ! 一撃でとどめを刺さないと!』

「あの巨体だぞ。生命力もかなりありそうだ」


 先ほどのフレイムピラーはそれなりにダメージを与えていたように思える。だが、致命傷にはほど遠い。二度や三度で倒れるほどのダメージは与えられていないはずだ。集中攻撃で削りきるのも難しそうだった。


「やはり、治癒能力をなんとかしないとな」


 傷を癒やすとき、ヤツが特別に何かしたような様子はなかった。となれば、治癒アーツの類を発動したというより、自動回復が極めて強力と考えた方が良さそうだ。


 それがノーコストで可能とは限らない。攻撃し続けていれば、いつかは限界が来る可能性もある。


 とはいえ、試すには少々リスクが高いのも事実だ。確実に限界が来るとわかっているならともかく、あくまで可能性の話。先が見えない状態で戦い続けるのは辛いものがある。


 加えて、こちらはヤツの攻撃を受け損なうと、それだけで致命傷だ。戦いが長期化すると集中力が途切れて不利になるのは目に見えている。ゲームならば、そういうヒリついた戦いも悪くないが、自分の命がチップでは楽しめない。


 それよりは、短期決戦を狙った方が良いだろう。


「ルゥルリィ、一旦、宿環に戻れ!」

「あい!」


 ドライアドであるせいか、ルゥルリィは植物系のスキルを効率よく扱えるようだが、それでも消耗はある。これまでずっと妨害を続けていたので、マナの残量も心許なくなってきたのだろう。ルゥルリィは素直に指示に従った。


『どうするの?』

「回復能力を打ち消すのさ。っと、説明している暇がないな!」


 ペルフェの問いに答えようとするが……蔦の妨害から自由になった巨人が再び駆けてくる。さきほどと同様にペルフェには盾になってもらった。ただし、今度は標準サイズの盾だ。


“グオォ!”


 鋭い叫びともに繰り出される拳。それを、斜めに構えた盾で受け流す!


「くっ!」


 さすがに全ての力を受け流すというわけにはいかない。ペルフェも耐えきれずに盾からツールへと戻っていく。だが、正面から吹き飛ばされることは避けられた。


 バランスが崩れて体が泳ぎそうになるが、【念動】を使ってどうにか制御する。そして、伸びきった巨人の腕に触れた。


“ガァアア!”


 その瞬間、巨人が腕を振り払う。ペルフェを盾にするのも間に合わない。倒れ込むように避けることで、どうにか直撃は避けた。多少掠めたが、動き出しでスピードが十分でなかったおかげで、なんとか生きている。


「はは、とんでもないな!」


 サブクラスシステムのバグでステータスが激増してから、同じレベル帯の魔物は強敵だと感じなくなってきた。だが、こいつは紛うことなき強敵だ。犠牲者が出ていることを考えると不謹慎だが、少しだけ楽しくなってきた。


 やはり強敵と戦うのは楽しい。とはいえ、勝つことはもっと楽しいので、あえてギリギリの戦いをしようとは思わないが。

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