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心夢見て宇宙《そら》を翔《ゆ》く  作者: 赤羽道夫
第8話 監獄惑星の要塞
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Act 4

 対人、を想定しているはずであったが、その後、相手は次第に重武装化していった。

 迫撃砲が登場したときには、アルンはあきれた。まるで軍隊相手の戦闘でもするかのようだった。そこまで用意するのかと、丘の上の魔法術師の警戒ぶりに目を丸くした。他人を寄せ付けないようとする異常なほどの拒否感であった。

 四回の襲撃ロボットを退け、丘の八合目まで登ってきた。背後に残したロボットの残骸が、無惨に黒煙を上げていた。

 頂上までの距離の短さから、おそらく襲撃はあと一回だろうと思われた。

 アルンたちはここまで一体の落伍者も出さずにやって来た。あとひと息だ。目指す目的地はもう目と鼻の先なのだ。

 だがこの先、最強の用心棒が控えていることだろう。覚悟をもって挑まないと、返り討ちにされてしまう。

 慎重に進む。

 登ってゆくにつれてきつくなっていく勾配は、今や三〇度ほどの傾斜になっており、油断すると足をとられる。こんな場所での戦闘では、地の利があり、上から攻撃できる相手が圧倒的に有利だ。

 草一本生えていない周囲の斜面には相変わらず大小の岩が点在している。遮蔽物としてもってこいである。このどこかに襲撃ロボットが隠れているはずだ。あるいはそう思わせておいて、まったく予想外の場所から現れるかもしれない。なんとかここまで進んできたが、次は危ないかもしれない。

 突然、牛ほどの大きさの岩が転がり落ちてきた。真正面ではなく、やや右に寄っており、直撃の心配はなかったが、それが自然に発生した落石でないのは明らかだった。全員の体に緊張が走った。

 ガン──!

 という衝撃音がして、ワシェンゴ拡張マシンの右脚装甲板が弾けとんだ。

 銃撃地点を探すが、判明する前にもう一撃来た。装甲を失った右脚を狙われた。回避動作が間に合わない。

「左の後方だ!」

 ゲイスンが叫んだ。

 敵は意外にも下から現れた。

 急いで岩陰に入ろうとしたマーヤの足が斜面をとらえそこなう。倒れて滑り落ちてゆくのを見て、アルンはレイガンを撃ちながら走り降りる。

 レイガンの光熱が攻撃者の周囲を灼くが、走りながらでは命中しない。悠々と移動し、反撃してきた。

 敵はライフルを持っていた。素早い所作でアルンを狙った。そこへゲイスンのヒートガンが火を噴いた。

 とっさに察した敵は、岩陰に逃れ、ゲイスンの攻撃は届かない。

「敵は単独か?」

 ワシェンゴは、擱座した拡張マシンを棄ててゲイスンの元へ移動してきた。グレネードランチャーを携帯していた。一発の威力は大きいが、対戦車・装甲車用の武器であり、今の敵には通用しづらい。

「おれが仕留める。援護してくれ」

 ゲイスンは敵に向かって走る。もちろん、岩を伝って敵に体を晒さないように。

 彼我の距離はおよそ五百メートル。もう少し近くによって、確実に捉えるつもりだった。

 遮蔽物の岩が砕け散った。

(なにっ──?)

 ゲイスンは意表をつかれた。

(ライフルじゃなかったのかよ!)

 近くの岩陰に飛び込んだそのとき、ゲイスンは気づいた。

(この戦い方は……まさか!)

 電子脳の奥にしまいこまれた記憶が鮮やかに蘇る。

(やつは、オルガーか!)

 それに思い至ったとき、しわがれた声がした。

「よう、ゲイスン。こんなところになにしに来た」

 間違いなかった。ゲイスンとともに、惑星マッキンタイア・ベータの政府軍に仕えていた、毒蛇オルガーだ。



 惑星マッキンタイア・ベータは、反政府勢力が五つの大陸のうち四つまでを支配下におき、現政権は崩壊寸前であった。国家分裂状態を打開しようと、残るひとつの大陸で体制強化を計る政府側だったが、もはや打てる手は限られていた。他星系国の援助も協力も得られず、次々と離反していく高位ポストの人材……。大統領は追いつめられ、放っておいても早晩政府は瓦解するだろうというのはだれの目にも明らかだった。

 そんな瀕死の大統領が指揮する政府軍にいたのが、かつてのゲイスンだった。

 LSHロボットによる軍隊は、人間は攻撃できないが、敵がLSHロボット部隊なら問題なかった。

 どこの軍隊も後方支援や補給を担う兵站部隊はLSHロボットにやらせた。反政府軍も同様だった。ゲイスンが所属する政府軍強襲部隊は、その兵站部隊を狙った。いよいよ政府側を壊滅させるための大規模攻撃を開始する反政府勢力の出鼻をくじこうというより、不足する物質を奪って補う目的のほうが強くなっている。もはや政府側は死に体であった。

 しかしLSHロボットたちには関係ない。ユーザーが政府である以上、その命令に忠実であった。人間には真似できない機動力でもって反政府軍の兵站部隊を襲い、強奪した物資を持ち帰った。それに対し反政府軍は人間の兵士を護衛として付けたり、LSHロボットに武装させたりした。

 こうして散発的にLSHロボット同士の戦いが起きるようになった。

 ゲイスンとともに政府軍LSHロボット部隊の先鋒を務めていたのが、同型のオルガーだった。トラップによって敵を誘導し、待ちかまえて襲うのがオルガーの戦法だった。

 そのやり方は徹底しており、部隊内での評価は高かった。毒蛇オルガーと反政府軍からも恐れられた。しかしオルガーだけで反政府勢力の圧倒的な勢いを止められるわけもなく、政府軍は敗れ、現政府陣営は崩壊した。大統領は自殺した。

 ユーザーを失ったLSHロボットは、通常ならメーカーか、あるいは回収機構に回収されて、中古市場で新たなユーザーを得るわけであるが、内戦状態のなか、LSHロボットたちは散り散りになり、一部はユーザーを持たない野良となった。

 野良となったゲイスンはかつての仲間がどうなったか知らず、当然、オリガーが野良かどうか、というか、そもそも稼働していることさえ知らなかった。


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