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心夢見て宇宙《そら》を翔《ゆ》く  作者: 赤羽道夫
第7話 無法都市のピノッキオ
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Act 4

 ガーニー市にも寺院はあった。かつて、都市が荒れる前に建てられた当時は、それなりに人々の拠り所として機能していたようであるが、今となってはもう寂れる一方であった。それでも一応住職はいて、ほそぼそとだが活動していた。

 アルンたちは鉄筋コンクリートの寺院内部に忍び込み、故障した防犯装置を横目にやすやすと本堂に安置された仏像の背中から金塊を抜き取る。

 その次の金塊は防火水槽の底に沈められていた。藻の茂る濁った水のなかへためらいなく入ったアルンが金塊をつかんで出てきたとき、ゲイスンから電話が入った。ミコネフが通話にでる。

「まずい。うまくマフィアを引きつけていたんだが、マーヤの変装に気づかれちまった。やつら、本物のリズを血眼になって探し出した」

「なんてこと! こっちはまだ全部の金塊を手に入れてないっていうのに」

 そこへずぶ濡れのアルンが、電話を受け取る。

「よくやってくれた。おかげでスムーズに金塊をいただけたぜ。これからすぐに合流して、ハミルトン・デルタセカンドを脱出しよう。宇宙港で落ち合おう」

 作戦中止を聞いて、ミコネフは難色を示した。

「あの一カ所なのよ。急いでいけば、なんとかなるんじゃないの?」

「廃坑は少し遠いですが、空中車だと一時間もかかりませんよ」

 リズも賛同する。しかしアルンは、意見を曲げない。

「マフィアと接触したら、おれたちに勝ち目はないよ。マフィアは人間なんだから、こっちは手出しもできないし、ここは逃げるしかない。幸い金塊は二〇キロ近く手に入った。これだけでもかなりの金額になるはずさ。リズを人間にする費用の足しになる」

 それを聞いてリズは少し安心した表情を見せた。

 分が悪いと感じたミコネフは、残りの金塊を諦めるしかなかった。

「仕方ないわね。じゃあ、宇宙港に急ぎましょう」

 アルンは通話に戻る。

「ということだ、ゲイスン。宇宙港に戻る」

「注意しろよ、アルン。じゃあ、あとでな」

 通話が切れる。

「そいじゃ、宇宙港へ戻るぜ」

 すぐそばに停めてある空中車に乗り込んだ。アルンが運転席で目的地を指示すると、ふわりと上昇する。

 後部座席にすわるリズの横には、用意したデイバックに入れられた金塊がシートに乗せられていた。あとはこれをどこかのルートで電子マネーに換金しなければならない。もちろん、身元がはっきりしなければ換金できないところではなく、闇ルートだ。交換率は悪いが、やむを得ない。

 空中車は宇宙港へと向けてひた走る。空中とはいえ、安全のための速度制限が設定されていて、それ以上のスピードがでないようハード的にリミッターが調整されていた。

 空中衝突しないよう決められたコースを飛行していると、接近してくる空中車があった。アルンが不審に思ったとき、

「まずいわ!」

 リズが叫んだ。

 その直後、なんの前触れもなく、接近してくる空中車から銃撃をあびせかけられた。銃弾が車体に当たって火の粉を散らす。防弾仕様ではない一般車なため、すぐにエンジンから火が噴いた。

「なんでおれたちのことがわかったんだ?」

 アルンは運転をマニュアルに切り替えるが、運転テクニックだけでは逃げ切れない。高度が落ちてゆく。そこへさらなる銃撃。ミコネフもリズも車内で身を縮めるしかない。窓ガラスが砕ける。

「墜落する! ショックに備えろ!」

 少しでも着地の衝撃を抑えようと、アルンは懸命に空中車を運転する。が、もはやまともな制御もきかなくなり、地上の建物に突っ込まないよう避けるのがやっとだった。道路を走る地上車が、炎をあげながら落ちてくるアルンたちの空中車を見てあわてて道をゆずった。その隙間に軟着陸。衝撃で外装部品が四方に飛び散る。クルマは建物にぶつかって派手な音をたてて停止。

「無事かっ!?」

 エアバッグにうずめていた顔をあげてアルンは隣のシートのミコネフと、後部座席のリズとを振り返る。

「もう! 人工皮膚が傷だらけだわ」

 砕けたフロントガラスの破片をあびて、ミコネフが悪態をついた。

「わたしはなんともないわ」

 顔に切り傷をつくったリズは金塊の入ったデイバックを抱えていた。

「脱出しよう。やつらめ、こっちがLSHロボットだというので、こんな乱暴なやり方をしやがって」

 アルンは歪んだドアを蹴破る。

「マフィアはわたしの記憶だけが目的だから、体が壊れても平気なのよ」

 アルンに手伝ってもらって、リズは車外に出る。しっかりデイバックをもつミコネフ。

 そこへ見覚えのある一台のコンパクトカーが走り込んできた。

「アルン! こっちだ!」

 窓があいて、ゲイスンが身を乗り出していた。

「助かったぜ」

 アルンは、ミコネフとリズに向かって、

「乗り換えだ」

 定員オーバーであるが、やむを得ない。

 ところがそこへ空中から銃撃。さっきの空中車だ。まるで戦闘機ようにヒートガンを連射してくる。着弾点の道路の舗装が溶けて蒸発する。

「きゃあ!」

 リズが撃たれて転倒する。右足の膝から下がなくなって、溶けた樹脂と焦げた金属が切断面から垂れ下がっていた。

 アルンは駆け寄ろうとするが、マフィアの空中車が放つ弾幕に阻まれる。そこへもう一台の地上車が猛スピードで現れた。アルンは轢かれる寸前で飛び退く。

 その地上車はリズのすぐそばで急停止すると、なかから現れた屈強な男が、倒れて動けないLSHロボットを抱え上げ、目にも止まらぬ早さクルマに戻った。見事な手際のよさだった。


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