Act 1
『探したぜ、ホセ。あのときはお互い災難だったな。いや、思い出したくない気持ちはオレにもわかる。しかし、やつの居所がわかったんだ。今度はこっちがやつの鼻をあかしてやる番だ。やられっぱなしどうしで協力しようってわけさ。悪い話じゃないだろ? 乗る気になったら返事をくれ。二日待つ。アントニオ』
突然飛び込んできたメッセージに、ホセは戸惑う。
アントニオという名前には覚えがあり、文面にも心当たりがある──ごく限られた人間しか知り得ない内容だ。
それでも本物だろうかと疑り深くなってしまうのは、「あのとき」のことがあったせいだろう。
無視してもよかったが、心が揺れてしかたがなかった。あのとき──いまいましい出来事は忘れようにも忘れられない。思い出すたびに、ぎりぎりと歯ぎしりするほど口惜しい。だからこの話は望むところでもあった。
ひと月ほど前のことだった。
職もなく、その日暮らしでいたホセは、チンピラとして中途半端なケチくさい犯罪を繰り返していた。そこへロベルトと名乗る男から、ひと仕事乗らないか、と誘いを受けた。胡散臭い話であったが、大金が入ると聞いてホセは乗った。同じくロベルトから誘われたアントニオという男とともに三人でその計画を実行した。
それは簡単にいえば詐欺であった。多額のカネを残して死んだ男の遺産争いでもめている遺族に近づき、魔法術師の作った魔法アイテムを使って巧みに騙してカネを横取りし、しかも証拠が残らないから警察からも追われないという。今思えば、そんなうまい話があるわけはなかった。
それを実行するには三人が必要とのことで、ホセは偶然選ばれたにすぎないが、その幸運に無邪気に舞い上がった。これでとうぶん贅沢に暮らせるぞ、と。
ところがやはりそううまくはいかなかった。たしかに大金は手に入った。百五十万MQRという、これまで見たことのない額だ。だがそれを手にしたのはロベルトだけであり、ホセとアントニオはただ働きであった。それどころか、警察に追われ、身を隠さなくてはならなくなった。話がちがうではないか、とホセは憤ったが、ロベルトとの連絡はそれっきりつかず、アントニオの行方も警察から逃げているうちにわからなくなってしまった。そのアントニオからのメッセージなのだ。
あのカネの分け前をもらう、いや、ロベルトから全額奪ってやる──そんな意気込みに燃えるのも無理からぬことだろう。
ホセはメッセージを返信した。わかった、話に乗ってやる、と。このうえ失うものなどない。




