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心夢見て宇宙《そら》を翔《ゆ》く  作者: 赤羽道夫
第3話 灼熱地獄の漂流船
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Act 4

 わざわざイーア市などという大都会に来たということは、ここでしか手に入らないものを買いに来たにちがいない──。

 Z0G‐KKBはそのように考え、ではどんなものが売られているのかとネットで探った。瞬時にリストアップされた一覧を見て、イーア市はさすがに大都会だな、と感心する。そのなかで、アルンたちがここで調達しそうな品物といえば、なんだろう……。

 アルンが自身のメンテナンスを受けている可能性もあったが、イーア市にある大小八千軒もある業者をひとつずつ当たっていくのは現実的ではなかったし、メンテナンスの事実がわかったところでそれでアルンの目的を知るのは難しいと判断した。

 ──ん?

 リストのなかに、高温環境用作業機というのが目に入った。一人乗りの宇宙用人型作業機で、メーカーが銀河中央でも二社しかなく、こんな辺境宙域で製品を卸しているのが奇妙だった。なんでも手に入る、といっても、それは需要があってのことだ。この近辺にその需要があるだろうか……? とにかく、取扱店そこへ行ってみることにした。

 路面電車の行き先を確認する。

 電話ですまそうとは思わなかった。電話などですまそうとしても、LSHロボットの問い合わせなど適当にあしらわれてしまうのが関の山だろう。こちらが回収屋であっても、直接面会して話さなければ、まともな応対などしてくれない、それが人間というものだ。何度もそんな経験をしてきた。どんなによくできたLSHロボットでも、人間は差別する心を棄てられない。まともに扱ってもらいたいからといって、アルンのように人間になりたいなどとは思わない。願望、という意思がないのがLSHロボットであり、だからアルンの行動が不可解なのだった。

 アルンがなぜ人間になりたいなどという意思を持ち得たのかはわからない。そこがZ0G‐KKBとアルンたちの境遇の差なのかもしれなかった。

 路面電車を二回乗り継ぎ、目的の代理店に到着した。ビジネス街の一角のこぎれいなビルにショールームを構えていた。入ってみると、閑散として客らしき姿はまったくない。従業員らしきスーツを着た若い男が奥のデスクに一人いて、せっせと端末になにかを入力していた。なにかの資料を作成中といったところだろうか。

 さして広くもない部屋に、これ見よがしに置かれてその場を占拠している「高温環境用作業機」を見上げる。カプセルのような胴体から頑丈そうな太い手足がはえている。頭部は丸い胴体と一体化しており、振り向くには体ごと振り返るしかないが、乗員の視界はしっかり確保されているだろう。外殻はセラミックで全体が覆われ、耐熱温度は二〇〇〇℃。

「いらっしゃいませ」

 代理店の従業員は、すぐに帰らないLSHロボットを見て、どうやら間違って入ってきたわけではなさそうだと、立ち上がって応対しようと歩み寄る。

 Z0G‐KKBは回収屋のエンブレムの入った身分証を提示すると、

「ちょっと、お話、いいでしょうか?」

 相手がお客様ではないとわかると従業員は一瞬がっかりした顔を見せた。

「回収屋がこんなところになんの用だ?」

 とたんに雑な対応になった。

「ここへLSHロボットがやってきませんでしたか?」

 Z0G‐KKBは写真を差し出した。

 アルン、ゲイスン、ワシェンゴが写った三枚の写真を受け取り、一枚ずつ確認する従業員は、

「このLSHロボットだったら、さきほど来たね。最新モデルを二体、買ってくれたよ」

 ゲイスンとワシェンゴを示した。客も少なく滅多に売れる品物ではないから、従業員の記憶はたしかだろう。

「そうですか。どうもありがとうございました。ところで──」

 写真をしまい、Z0G‐KKBは重ねて尋ねる。

「これはどこで使用されるんでしょうか? イーア市に営業所があるということは、この近郊なのでしょうね?」

「約六光年離れたマーティン恒星系の第一惑星アルファのザタリウム採掘現場だな。新規導入したり、故障の修理やメンテナンスなんかで、当営業所を利用してもらっている。恒星に近いマーティン・アルファの表面は、高温にさらされるから」

「なるほど、よくわかりました。で、その買った作業機は、いまどこに?」

「もう倉庫から出荷して、雪ノ原宇宙港へと搬送しているところだよ」

「そうですか。いや、どうもお手間をとらせました」

 Z0G‐KKBは礼を言い、失礼します、と店を出た。

 間に合うかもしれない。アルンたちはまだ出発前で、急げば三体とも回収できる可能性がある。もし一歩遅かったとしても、行き先は惑星マーティン・アルファだ。

 この幸運をいかして、アルンたちの回収にこぎつける──。Z0G‐KKBは、電子脳が静かに興奮していくのを感じた。


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