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エンドロールは28年後に  作者: たな
ライ編
7/19

07 決闘、アイビス中央広場にて


「お前か? 決闘の申請書なんてもの送り付けやがったのは!」


「教会は受け付けた。

神の名の下に正々堂々戦うと良い。」


「馬鹿馬鹿しい!

神はここ百年空席じゃあねえか!

いねぇ神に何を誓うってんだ!」


教会から派遣された立会人の顔がぴくりと歪む。


「それは違うな。空席なのは神の代行者だ。神は変わらず世界を守護している。」


「そんなもの、大した違いはないだろう!」


イライラとオズバートは捲し立てたが、背後に立っている男が何事か伝えて、勝利を確信したようににやりと笑った。


「ふん、決闘だがー、ルールでは代わりに戦う者を用意して良いんだったな?

くく、ならばお前に勝てる可能性は万が一にもないだろう!」



---


「ヒムロ!」



友人から話を聞いたライはアイビス中央広場まで急いで向かった。

ヒムロは潔癖過ぎるほど完璧主義者だ、身体能力や戦闘について心配こそしていないが、相手は今まで卑怯な手を尽くしてきた相手だ。

油断ならない。

ライは髪が乱れるのも厭わず広場への階段を駆け上がった。

わぁあと歓声があがる。

どうやら決着がついたようだ。


「ひぃぃ! どういうことだ、相手は水の席だぞ! どうして勝てない、どういうことだ!」


席……?

その単語を聞いて歴史の授業を思い出す。

確か優秀な神秘術士に贈られる5つの称号、それが席だったはずだ。

オズバートは対戦相手に席持ちを用意していたことになる。

だが……。


「勉強不足だな、そいつは席持ちではない。」


「馬鹿を言うな! 席を持っていると嘘をつくものは罰が与えられる、偽物なものか!」


「いいや、水の席なんて席はない。だから水の席だと名乗っても問題は起こらないさ。」


「なっ!」


そう、席は花、陽、月、影、星の5つ。

水の席なんて席は存在しない。


「さて、まだやるのか?

私が殺しをしないと思っているなら、その評価は訂正すべきだ。

ここで降参しないのであれば、相応のことはしなくてはな。」


「やめてくれ! 俺は金で雇われただけだ!」


「貴様、騙しておいて何を……!

逃げるな! 勝てば報酬はたんまりと弾んでやる!」


「報酬? 払えるかな、今のお前に。」


ヒムロの声はいつも以上にひややかで、たった一言で相手を凍りつかせた。


「バカめ! うちの財力を忘れたか!

覚えていろ、勝つにしろ負けるにしろ貴様はーー」


「先日、空中都市ムムーの竜車隊と契約を交わした。」


それは、つまり。


「ハルカ家も共同で進めた話だ。

王都……いやこの国の移動および運搬のメインはムムーの竜車に依頼することとなる。」


彼は有利に立てる材料を失うばかりか。


「今まで弱みを握られ仕方なく従っていた者達も証言したよ。君の悪事を。」



オズバートの顔が真っ青になり、次第にその場に座り込んだ。



---



報酬が貰えないと理解した自称水の席は騒ぎに紛れて逃亡し、決闘はヒムロの勝利となった。


オズバートはまだ捕まっていないが、

情報が提供された今となっては時間の問題だろう。


「まさかこんなにあっさり解決するなんて……。」


「前々からムムーとの交渉はしていたみたいだなー。準備のいいことで。」


「ツムグ!」


人のまばらになった広場で、気付けばツムグが隣にやって来ていた。


「ツムグ、ありがとう。ツムグも手を回してくれたのよね?」


「バーカ、お礼は俺よりアイツに言えよ。」


「え?」


意味が分からず首を傾げると、やれやれと言いたげな顔をされた。

なによ、やる気?


「ヒムロの奴がよりによって俺や親父さんに頭下げたんだ、頑張ったのはアイツだろ。

いやぁ、お前愛されてんな~。」


広場で教会の立会人と話すヒムロを見る。

冷たかった表情はいつものクールな無表情に戻っていた。


「行ってやれよ。」


いてもたってもいられなくなって、私はタイトなスカートの裾を破り、広場の観客席から飛び降りた。

後ろからツムグの驚く声が聞こえたが構ってられない。


「ヒムロ!」


「ライ!? 待て、私はハグは嫌いだと……そもそも今は汗が、ライ!」


助走をつけてヒムロの胸に飛び込む。

ヒムロは支えきれずに地面に倒れ込んだ。


ヒムロは最初から助けるつもりだったんだ。

助けてと、一言があればそれで。

なにが嫌われるだ、1人で勝手に怖がって馬鹿だ。

馬鹿だ、私は!


「ひむろ、」


押し倒されたせいで、いつも整えられているヒムロの髪はぐちゃぐちゃだ。

顔は涙でよく見えない。

けど、笑ってる気がした。


「好き、大好きよヒムロ。」


「ずっと傍にいて。」


ひゅ、と息を飲む音がした。

それから、仕方がないとでも言うように。

大きくな手が背中をなでた。


「当たり前だ、君は私の婚約者だからな。」



その声は、優しいものだった。


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