↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドロールは28年後に  作者: たな
イズミ編
16/19

16 戦い、黄金の麦畑にて

-03 ログC

それはほんの興味だった。

愛するものに殺されるとき、それはどんな色を魅せてくれるのだろうと。

殺人方法はいたって簡単だ。

麗らかな日差しに微睡む母、この急な高低差がある坂だ。

手を離すだけでいい。

それだけで、車イスはひとりでに転がり、そして……




ああ、私は狂っている。



この絶望を、私以外の誰も、知らない。




---


「影の席を得たからかもしれませんよ?」


「え?」


「だって、先輩のお父さんは虚無属性神秘術の産みの親なんですよね。

なにかしらトラブルが起こって、影の席に心を落としてしまったのかもしれない、って。」


「あ、これはお兄ちゃんの受け売りなんですけど!」


「心を、落とした?」


「落としたのなら、拾えるかもしれませんね。なんて。」


---


「ああ、すまない。

刺してしまった。」


黒いウサギはぴくぴくと震え、地面に転がった。


「……殺す必要はなかった。」


「すまないすまない、可愛らしくすり寄るものほど、壊したくなるんだ。」


冬永は反省など全くしていないだろう顔で、けろりと言ってのける。


「相思相愛であるほど、殺してみたくなる。

愛するものに殺される絶望は、どんなものだろうなぁ。」


「……相思相愛なら殺せないさ。」


「それはそうかな?」


「相思相愛なら、あんたのその性格もよく理解してるだろうさ。

そう簡単には殺せない。」


そう返せば冬永はきょとんと、幼い子供のような顔でこちらを見返した。


「そうか。一本とられたな。」


ケラケラ笑う姿は子供のようだ。

無邪気、そして壊れている。

それがこの冬永という男を作る要素なのだろう。


「そういえば。」


ざくざくと、森の中を歩く。

これまで空までどんよりした不思議な空間だったというのに、ここはほんのりと明るい。


「冬永と言う名前は自分でつけたのか?」


「うん? ああ、昔そう呼んだ奴がいたんだ。」


「どこぞの太陽みたいなクソッタレが言いやがったのさ。」


ボロクソな言いように少し驚く。

嫌いな人に言われた言葉を名前に?

不思議な感性だが、彼にとっては必要なことだったのかもしれない。


「それより、そら。道が開けたぞ。」


森が途切れた。

獣道と違い、舗装された歩きやすい道に出る。


「金の……麦畑。」


「ああ、どこもかしこも金色だ。」


「光は影の席である私にとって忌々しいものだが、この黄金は好ましい。」


「0と1の間に、この輝きこそ相応しいのだろうな。」


目を奪われるような、美しい景色が辺り一面に広がっている。

その金色に、なんとなく。

母を思い出した。


「さて、長いような、短かったような。

私と君の冒険ももう終局を迎える。」


「見たまえ、出口だ。あの黄金の扉を開けば、君はすぐにでも世界へ帰れる。」


黄金の道を進むと、前方に黄金の扉が現れた。

まさにここがゴールだと言わんばかりの輝きを放っている。

……胡散臭い。


「どうした、行かないのか?」


「貴方が言ったのでしょう。『私は殺されると理解した瞬間の、生きたいと言える精神が好きだと』」


「確かに。その要約するとそのようなことを言った。」


「さきほど、相思相愛であるほど、殺してみたくなるとも。」


冬永は笑っている。


「これまで仲良く横を歩いた俺に、出口という希望を与えてからなぶり殺す、それを楽しそうだと思うのが貴方だと思うが、違いますか?」


「く、ぷくく……」


手で顔を隠すが、その笑い声は徐々に大きくなる。

ひとしきり笑った後、男は明らかな営業用の笑顔を浮かべた。


「さすが、私の息子だ。」




「やはり貴方は」


「そうとも、永遠に終わらない冬が続いているようだ。そう評された、故に冬永。」


すっ、と。

男の顔から一切の表情が消えた。


「私の真の名前はキネヤ ヒムロ。その影。」


ちゃきり。

仕込み杖が抜かれる。


「人を愛したが故に絶望を得た、だから切り捨てた、一種の自殺とも言える。

私は魔物。人を殺したがる悪魔。ほんの気まぐれに、ほんの興味本意で、花を手折るように容易く、人を殺してみたくなる。」


くるりと、杖をまわす。


「そして、ふふ……なんてことだ! ここに迷い混んだのが我が息子とは!」


「ははは! ははははは! そんなの、」


「殺してみたいに決まってるじゃないか!!!」


狂気が向けられる。

その威圧に気圧されそうになる。


「……何故息子だと?」


「お前は私の顔を見てなにも思わなかったのな?」


「まるで生き写しのように顔立ちが同じじゃないか。」


刃が向けられる。

抗わなければ殺される。

ああ、これが殺意なのか。

こんなに楽しげに向けられる殺意があって、いいのか?


---


「なるほど、水属性の神秘学が得意か。その年齢でそこまで使いこなせるのならさぞ親は鼻が高いだろう。……あぁ、私か!」


「実力差を理解し、戦略をたて、逃げ回るように見せて神秘術をしかける。」


「優秀だ、模範品のごとく。」


「だがお前は分かっていない。倒すつもりの攻撃と、殺すつもりの攻撃。」


「躊躇いがない分、私のほうが早い。」


冬永はよく喋る。

くるくる動き回りながら、こちらの罠を掻い潜りながら、その凶刃をこちらに向けながら。



「だが驚いたぞ。後方支援タイプに見えたが、身体能力が一段と高い。私より上の資質を持っているな、どうやらお前の母親はアクティブな方のようだ。」


「効率ばかりを気にする私のことだ、結婚相手など大人しく従順な者を娶るとばかり思っていたが……。」


「ぷくく、分からないものだな人生は。また父上の名指しで選んだ女か?」



「いいや、俺の母親はー、」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。