表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欲探しの花嫁  作者: X


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/8

第4話 「会えますよ」

「はじめまして、本庄(ほんじょう) 美奈(みな)さん」


 これは、私がある河川敷、合格発表を受けて気分が良い日。

 怪しげな紺スーツを着た禿げた爺さんが話しかけてきたのは、今から2ヶ月前——実験に携わる前の話。

 私は「あなた、誰?」って、尋ねたら。


「あなたの未来を左右する者です」


 なんて、胡散臭い言葉で返された。当然、18歳になりたてで、華のある大学生活を送ろうとする女子に対するナンパだろう。私は話を切り上げたかった。


「あら、そうですか、それでは、さよならですね」


 未来なんて、誰にもわからない。それに金持ちそうで、白い顎髭を生やし目付きが鋭く、やや吊り目だ。こういう輩は、関わらない方が身のためだ。


「おや、あなた……。興味がありませんか?」


 しつこく、ナンパしてくる。私が興味あるかって? あるわけない、ない、ないよ。父と母に合格発表を伝えたんだから、早く帰らせてほしい気持ちだけだよ。

 最初はそう思っていた……。だけど、それは違うと気付くのに、そう時間は掛からなかった。


「ここは、どこ?」


 私は、この爺さんの説得を受け、彼の付き人が運転する車に乗り込んでしまっていた。親には携帯で、「少し遅くなる」と伝えてしまった。なぜかって、それは、「未来の旦那に会いたくないかい?」と言われたのが、きっかけだ。


 車は市街地を抜け、人気のない山道へ入っていった。

 窓の外を流れる景色は、住宅街から森へ、森から巨大なフェンスへと変わっていく。

 

「……こんな場所に何があるんですか?」

 

 私が尋ねても、老人は目を閉じたまま微笑むだけだった。

 

「着けばわかります」

 

 その一言だけ。

 

(やっぱり帰ればよかった……)

 

 今さら後悔しても遅い。

 

 やがて車は重厚な鉄門の前で停止した。武装した警備員が2人。ゲートには監視カメラが何台も並び、指紋認証らしき装置まで取り付けられている。

 

 付き人が窓を開け、1枚の黒いカードを見せる。低い機械音が響き、鉄門が左右へゆっくりと開いた。

 

「えっ……」

 

 私は思わず息を呑む。森の奥に、1本の巨大な白い塔が天へ向かって伸びていた。雲を突き刺すほど高い。

 

 表面は雪のように白く、継ぎ目一つ見当たらない。まるで建物ではなく、1本の白い柱が地球に突き刺さっているようだった。

 

「すご……」

 

 大学の研究施設なんて比べ物にならない。

白衣姿の研究員が何十人も行き交い、見たこともない車両が並ぶ。空ではドローンまで巡回している。

 

「(本当に研究施設なの……?) ここは国家機関……?」

 

「半分正解です」

 

 老人は意味深に笑う。

 

「世界でも、ごく限られた者しか存在を知らない研究施設ですよ」

 

「えぇ……?」

 

 車は塔の正面で止まった。自動ドアが音もなく開く。中へ入ると、壁も床も真っ白だった。消毒液の匂い。静かに響く電子音。病院にも似ているけれど、それ以上に無機質な空間。

 

 私は案内されるままエレベーターへ乗り込む。表示された数字は――地下三十階。

 

「地下!?」

 

 思わず声が裏返る。

 エレベーターは信じられない速さで降下していく。耳が詰まり、身体がふわりと浮く感覚。やがて扉が開くと、そこには円形の巨大な研究室が広がっていた。

 

 幾重ものモニター。青白く光る配線。中央には円柱状のガラスケースが並び、その中心に、異様な装置が鎮座している。

 

「……これ」

 

 私の視線は、その装置に釘付けになった。

 鮮やかな紅色。

 工事現場で見るヘルメットに似た形をしているが、表面には無数の金属線が張り巡らされ、透明なケーブルが脳へ接続するように何本も伸びていた。

 内側では青い光が脈動している。

 

「ヘルメット……?」

 

「ええ」

 

 老人はゆっくりとうなずいた。

 

「正式名称は()()()()()()

 

 そう言って、紅い装置へ手を添える。

 

「これを被れば、あなたは未来を見ることになります」

 

 私は思わず一歩後ずさった。

 

「未来って……本当に?」

 

「未来の旦那さんにも、会えますよ」

 

 老人は穏やかな笑みを浮かべる。

 その笑顔が、なぜだか一番恐ろしく見えた。

   

この作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。

自分らしく納得のいく形で執筆を続けるため、毎日更新ではなく、自分のペースで更新してまいります。

「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、フォローや星評価で応援していただけますと、大変励みになります。

なお、感想への返信はできませんが、一つひとつ大切に拝読いたします。ご感想をお寄せいただけましたら、とても嬉しく思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。なろう様でも同作品を展開しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ