自信
「あさみ、この子の本当の父親は、誰なの?」
ベンチに座って、紙パックのジュースをちゅーちゅー飲んでいる朝登の横で、僕は切り出した。あさみは、「?」という顔をした。
「本当って?」
「僕が父親なわけないだろ…。会ってないんだからさ…。したのだって、2、3回だよな。」
「したって?何を?」
「とぼけるなよ。寝ただろ…。」
「あー。たーくんのベッド、硬かった!トランポリンみたいだったね…。」
僕の頭には、あさみが裸で跳ね回っていたのを思い出した。それをかき消すように僕は、言った。
「僕以外の人ともしたんだろ?」
「トランポリン?」
「違う!……。キスしたり、服を脱いで抱き合ったり…」
「してないよ。」
「え?」
「してないよー。だって、引っ越して…ずっと体調悪くて、お腹大っきくなって…てんおんせっかいして」
「てんおん?帝王だろ。」
「うん…ほとんどお友達とか…できなかったから。」
僕は、自分くらいしかあさみを抱かないのでは、という疑念を、あさみのあっけらかんとした態度によって、余計に深めてしまった。もし、本当にそうだとしたら?あの子供は…本当に…。僕は、血の気が引くのを感じながら、何とか、言葉をひねり出した。
「嘘だろ…。」
「嘘じゃないよ。」
「……。」
二の句が継げなくなった僕の顔を、あさみは、無遠慮に覗き込んできた。
「どうしたの?」
「…。DNA鑑定とかする?」
「D、N、A、かんてん?」
「僕の子供か、確実に分かるんだ。」
「したいの?」
「えっ?」
「私は、分かってるのに?」
「は?」
「朝登のパパは、たーくん!!だよ!」
「い、いや、そんなのおかしい…。」
僕の声は、自信満々なあさみの声に比べて、震えていて、いかにも、不安げだった。そんな、僕に、あさみは、詰め寄ってくる。
「じゃあ、すればいいよ。どうするの、かんてん?」
「鑑定…。髪の毛とか、唾液とか…」
「朝登、髪!」
あさみは、僕の目の前で朝登の髪をプチっと抜いた。
「これでいいの?」
「いいけど…」
朝登は、ジュースをちゅーちゅー吸って、全く気にしていなかった。




