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あさみ  作者: 梅子


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21/23

溝

 あさみに電話をする。

「だーれ?」

「通知に出てるだろ?」

「たーくん!!」

あまりに嬉しそう名前を叫ぶから、僕は戸惑った。

「久しぶり…」

「たーくん、大好き!!」

「…。ありがとう。」

「えっと…大学生なるの?」

「うん。」

「すごい!!たーくん、頭いいもんね。」

「そんなことないよ…」

「朝登は、私に似てバカだから…」

「そんなことないだろ!」

「えっ、だって、お父さんが…」

「朝登は、馬鹿じゃない。そういうことは、言わないで。」

「ごめんなさい…」

「僕が、朝登を大学にやる。」

「えっ?」

「僕が父親なんだ。」


 卓人は、時間ができた分、朝登と何度も会った。朝登を家に呼んで、勉強を教えた。ドリルを買って、できたページに、星や音符のシールを貼る。あさみは、その間、卓人の母親から、料理などの家事を習う。朝登は、飲み込みが早く、すぐに、あさみより頭が良くなりそうだった。そのうちに、あさみの言う変な言葉を、「ママ、うれしいんだよ。」とか、補足するようになった。

 あさみたちは、実家より居心地がいいのか、こちらの家によく泊まるようになった。だんだんと遠慮がなくなるようだった。あさみにとって義父である、僕の父親が、僕に似ていると言って、騒ぎ続けたことがあった。朝登が、「そうだね、ママ。」と、いなそうとしても、ずっと言っていた。父親は、眉を顰めていた。

 夜、あさみが、朝登と風呂に入ると、父親は、「あの子だけ引き取りたいくらいだな。」と言い出した。

「え?」

「朝登くんは、やっぱり石田の子だよ。頭がいい。でも…あさみさんは…」

「やめろよ…あさみは、朝登くんの…」

「分かってる。分かってる上で…母さんもそう思うだろ?」

「…。はぁ。正直ね。」

「母さん!」

「あさみさん、物覚えが驚くほど悪いの。包丁を人に向けちゃだめっていうのに、おしゃべりに夢中で突きつけてくるの、こんなふうに。ほんと、怖いんだから…」

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