第九十八話 賑わう御堂家修練場
夏の朝
御堂家の修練場には、一年一組の生徒たちが次々と集まっていた。
晴真、凛、紅葉、小夜、美鈴、与一、豪太、迅、隼人、綾女、太一、茜、桔梗
いつもの教室の仲間が勢揃いする。
晴隆が笑顔で迎えた。
「よく来たのう」
生徒たちは一斉に頭を下げる。
「よろしくお願いします!」
元気いっぱいの声が修練場に響いた。
その様子を見た晴隆は、近くにいた陽乃と陽香へ笑いかける。
「うちは寺子屋にでもなったようじゃな」
陽香がくすりと笑う。
「晴真君って本当にみんなに好かれるんだよね」
「そのうちクラスメイトだけじゃなく 学園中の人が集まってきそう」
陽乃も微笑んで頷く。
「それが晴真らしいよね」
その時だった。
「申し訳ございません!」
少し遅れて道満が修練場へ駆け込んでくる。
隣には祖父・道秀。
さらに後ろには兄・道隆と姉・道香の姿もあった。
道満は晴隆へ深々と頭を下げる。
「すみません」
「兄と姉がどうしても見学……いえ ご指導を受けたいと言い出しまして」
「勝手をしてしまい申し訳ありません」
晴隆は豪快に笑った。
「はっはっは!」
「これだけ人数がおるんじゃ」
「一人や二人増えても変わらん」
「好きに参加するとよい」
「ありがとうございます!」
道隆と道香も嬉しそうに頭を下げた。
そこへ――
「間に合ったーー!」
遠くから刀也の大きな声が響く。
全力で駆け込み、修練場へ飛び込んできた。
その後ろから刀姫と刀優が歩いてくる。
刀姫は晴隆へ丁寧に頭を下げた。
「申し訳ございません」
「ご教授いただけるというのに 弟が遅くなってしまいました」
「どうかよろしくお願いいたします」
そう言って帰ろうとした時だった。
晴隆が二人へ声を掛ける。
「せっかく来たのじゃ」
「二人も一緒にどうじゃ?」
刀姫と刀優は顔を見合わせる。
「……よろしいのですか?」
「もちろんじゃ」
二人は嬉しそうに頭を下げた。
「ありがとうございます」
こうして修練は、さらに賑やかなものとなった。
◇
晴隆は全員を見渡した。
「さて」
「武術も術も すべてはここから始まる」
「まずは瞑想じゃ」
全員が静かに座る。
背筋を伸ばし、目を閉じる。
ゆっくり息を吸い。
ゆっくり吐く。
「自分の丹田を感じるのじゃ」
「焦る必要はない」
「己の内にある霊力へ耳を澄ませよ」
修練場は静寂に包まれた。
◇
しばらくして――。
「おっ」
「今日はずいぶん賑やかだな」
沙羅が笑いながら姿を現した。
その後ろには、ミヅチ、チヨヒメ、クシナダ、銀花たち神の眷属も続いている。
ミヅチは修練場を見渡し目を細めた。
「晴真がおると 不思議と人が集まるのう」
銀花は懐かしそうに微笑む。
「龍姫様もそうでした」
「人だけではありません」
「妖も 霊獣も 神の眷属も」
「たくさんの者が自然と集まっていました」
晴真を優しく見つめる。
「きっと晴真様も……」
その先は口にしなかった。
だが、その場にいた眷属たちは皆、静かに頷いていた。
チヨヒメが周囲を見回す。
「これだけの人数では 晴隆と道秀だけでは大変じゃろう」
「妾たちも手伝うぞよ」
「もちろんじゃ」
ミヅチも笑う。
「久しぶりに腕が鳴るのう」
神の眷属たちは、それぞれ生徒たちの様子を見ながら助言を始めた。
◇
その時だった。
クシナダが静かに木刀を手に取る。
そして一人の少女へ視線を向けた。
「刀姫」
突然名前を呼ばれた刀姫は驚く。
「はい」
「一本付き合え」
修練場の空気が一瞬で変わる。
刀姫の表情が引き締まる。
「……はい」
「ご指導よろしくお願いいたします」
刀姫も木刀を構えた。
周囲がざわめく。
「えっ……」
「刀姫さんが?」
「相手はクシナダ様だぞ」
「学園最強の剣士が……」
「武術の神にどこまで通じるんだ?」
修練していた生徒たちも自然と手を止める。
誰もがこの勝負を見逃したくなかった。
晴隆は苦笑して肩をすくめた。
「はっはっは」
「今日は修練より 良い勉強になるかもしれんのう」
修練場は静まり返る。
学園最強の剣士・刀姫。
そして武術を極めた神・クシナダ。
誰もが固唾をのんで、その一戦を見守った。




