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第九十七話 御堂家の団欒


 麻賀多家の門前で、凛たちと別れを告げる。


「また夏休みにね」


「うん また連絡する」


凛は笑顔で手を振り、道清や千桜たちも穏やかに見送ってくれた。


晴真たちは御堂家へ向かって歩き始める。


道すがら、晴真は学校での出来事を次々と話した。


「先生たちね みんな面白いんだよ」


「正臣先生は優しいけど たまにすごく厳しくなるし」


「沙羅さんは豪快で ミヅチさんとはいつも言い合いしてるんだけど 本当は仲良しなんだ」


美咲は楽しそうに耳を傾ける。


「ふふっ」


「晴真 本当に毎日が楽しいのね」


「うん!」


「友達もみんないい人なんだ」


「刀也はすっごく元気だし 与一は頭が良くて 凛ちゃんは優しくて 道満くんは何でも知ってるんだよ」


そんな話をしながら歩いていると――。


「晴真ー!晴真兄ちゃんー!」


元気な声が響いた。


見ると、陽香と陽乃が二人並んで駆けてくる。


「待ってたよ!」


二人は美咲の前で立ち止まり、丁寧に頭を下げた。


「初めまして」


「御堂陽乃です」


「御堂陽香です」


「いつも晴真君に仲良くしてもらってます」


美咲も優しく微笑み頭を下げる。


「こちらこそ」


「晴真の母 美咲です」


「いつも仲良くしてくださってありがとうございます」


その柔らかな笑顔を見た陽乃と陽香は顔を見合わせて微笑んだ。


(晴真のお母さんなんだな)


二人ともどこか晴真によく似た優しい雰囲気を感じていた。



やがて御堂家へ到着する。


門の前では晴時と照美が並んで待っていた。


「ようこそ」


晴時が穏やかに迎える。


美咲は深く頭を下げた。


「本日はお招きいただきありがとうございます」


「こちらこそ」


照美が優しく微笑み一行を屋敷の中へ案内する。


座敷へ入ると晴時が陽乃たちへ声を掛けた。


「陽乃 陽香」


「晴真と一緒に別の部屋で待っていてくれるか」


「はい」


その間に晴臣と美咲は晴隆と紫乃の部屋へ案内されていった。



別室では陽香が晴真へ尋ねる。


「夏休みの課題 もう聞いた?」


「うん」


「チームで研究するんだよ」


陽香は頷く。


「一年生は毎年 連携力を高めるための研究課題なんだよ」


「先輩たちもみんなやってきたんだよ」


「そうなんだ」


晴真は感心したように頷く。


「僕たちの班はね」


「凛と 与一と 刀也と 豪太なんだ」


「そうなの」


陽香は笑う。


「凛ちゃんがリーダーで 与一くんが補佐なんだよね」


「うん」


「すごく頼りになる二人だよ」


そんな話で盛り上がっていると――。


「みんなー」


照美の明るい声が廊下から聞こえた。


「準備ができましたよ」



大広間へ入ると晴真は思わず目を丸くした。


大きな食卓いっぱいに並ぶ色とりどりの料理。


湯気の立つ煮物。


新鮮な刺身。


天ぷら。


焼き魚。


紫乃特製の手打ちうどん。


そして季節の果物や甘味まで並んでいる。


席には晴隆、紫乃、晴臣、美咲、晴時、照美、沙羅が揃っていた。


だが――。


皆の目は少しだけ潤んでいる。


晴真は理由は分からなかった。


それでも不思議と胸が温かくなる。


(きっと何かいいことがあったんだな)


そう思い満面の笑みを浮かべた。


「すごい!」


「今日はご馳走だね!」


照美が微笑む。


「今日は美咲さんの歓迎会」


「そして御堂家みんなが揃ったお祝いでもあるの」


晴時も静かに頷く。


「こうして家族みんなが顔を揃え 同じ食卓を囲める」


「それが何より嬉しい」


晴時は杯を持ち上げる。


「それでは」


「美咲さんを歓迎し 家族の再会を祝して」


「乾杯」


「乾杯!」


盃や湯呑みが軽く触れ合い温かな宴が始まった。



食卓には終始笑顔があふれていた。


美咲は紫乃の隣で楽しそうに話している。


「晴真が お義母さんの手打ちうどんは絶品だって何度も話してくれたんです」


「今度ぜひ教えてください」


紫乃は目を細めた。


「もちろんですよ」


「では今度 一緒に作りましょう」


「ありがとうございます」


二人はまるで昔からの親子のように笑い合った。


その様子を見ながら晴臣がぽつりと呟く。


「父さん 母さん」


「この人に惹かれた理由が 改めて分かった気がするよ」


晴隆が微笑む。


「ほう」


晴臣は照れくさそうに笑う。


「晴真と同じなんだ」


「自然と人を惹きつける 不思議な魅力がある」


その言葉に美咲は少しだけ頬を赤くした。



一方 男三人は酒を酌み交わしていた。


晴隆。


晴時。


晴臣。


話題は自然と晴真へ移る。


「新しい術式は面白い」


晴隆が酒を口にする。


「術ごとに霊脈を切り替える発想は これまでにない」


晴時も頷く。


「まだ粗削りだが 大きく伸びるだろう」


晴臣は嬉しそうに笑った。


「本当に誰に似たんでしょうね」


「お前じゃ」


晴隆と晴時の声がぴたりと重なり三人は大笑いした。



その隣では沙羅が昔話を披露していた。


「正臣はな」


「子どもの頃 修練で派手に池へ落ちてな」


「しかも助けようとした神門玄まで一緒に落ちたんだ」


「えぇー!」


晴真、陽乃、陽香は大笑いする。


「神門玄先生も?」


「そうそう」


「昔の正臣は、今よりずっと泣き虫だったぞ」


「それ言うなって!」


沙羅が正臣の物まねをすると部屋中が笑いに包まれた。


その夜。


御堂家には遅くまで笑い声が絶えることはなかった。


離れていた家族が再び集まり、新しい家族との縁も結ばれた。


その温かな時間は誰にとっても忘れられない夏の一夜となった。

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