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第九十四話 夏休み前のひととき



 放課後


黒桜寮の談話室には、一年一組の生徒たちが自然と集まっていた。


実技試験も終わり、班決めも終わった。


話題は自然と、もうすぐ始まる夏休みへ移っていく。


刀也がソファへ寝転びながら笑う。


「いやー 夏休み楽しみだな!」


「みんなは何するんだ?」


晴真が少し照れながら答えた。


「僕は今年の夏は御堂家で過ごすことになったんだ」


「お母さんも裏佐倉へ来る予定なんだよ」


「へぇ!」


刀也が目を丸くする。


凛も微笑んで続けた。


「私も祖父母の家で過ごします」


「お母さんも来ます」


「晴真くんのお母さんと一緒に来る予定なんです」


「そうなんだ」


皆が頷く。


すると道満が晴真へ視線を向けた。


「ということは」


「夏休みも御堂家で修練できるな」


晴真は苦笑した。


「たぶんそうなるかな」


その瞬間。


「えーーっ!」


刀也が大きな声を上げた。


迅も苦笑する。


「せっかくの夏休みだぞ!」


「修練も大事だけどさ」


「みんなで遊びにも行こうぜ!」


「例えば草笛の丘とか!」


その提案に与一が頷く。


「いいな」


「霊馬で行こう」


「桜駆けの練習も兼ねられる」


「それ楽しそう!」


晴真も笑顔になる。


紅葉も上品に微笑んだ。


「班活動の親睦を深める意味でも」


「とても良いと思います」


すると刀也と迅が顔を見合わせる。


「えぇー」


「女子も行くの?」


二人は揃って肩を落とした。


凛は呆れたようにため息をつく。


「男子だけで行ったら」


「また何をするか分かりませんから」


「信用ないなぁ……」


刀也がしょんぼりする。


その横で豪太がおずおずと手を挙げた。


「あのさ」


「俺も行っていいか?」


与一はすぐに答えた。


「当たり前だろ」


豪太の顔がぱっと明るくなる。


「やった!」


今度は太一が遠慮がちに口を開く。


「僕も……いいかな?」


紅葉が優しく頷く。


「もちろんです」


「ぜひ一緒に行きましょう」


すると七曲茜と七曲桔梗が同時に手を挙げた。


「わたしたちも!」


「行きたい!」


凛は嬉しそうに微笑む。


「ぜひ」


「みんなで行きましょう」


談話室は一気に賑やかになった。


その時。


迅が部屋の隅で本を読んでいた隼人へ声を掛ける。


「隼人」


「お前も来いよ」


隼人は顔も上げずに答える。


「面倒くせぇなぁ……」


迅は笑った。


「俺らの班のリーダーなんだから」


「親睦も仕事だろ」


隼人は小さくため息をつく。


「……勝手にしろ」


ぶっきらぼうな返事だった。


それでも口元はほんの少しだけ緩んでいた。


綾女も茜も桔梗も、その小さな変化に気付き顔を見合わせる。


(ちょっと嬉しそう)


誰も口には出さなかったが、そう思っていた。


やがて話題はさらに膨らんでいく。


刀也が身を乗り出した。


「御堂家の修練も みんな参加させてくれよ!」


「俺も!」


迅も続く。


「夏休み中ならじっくり修練できるしな」


豪太も力強く頷く。


「もっと強くなりたい!」


晴真は嬉しそうに笑った。


「おじいちゃんならきっと喜ぶと思う」


道満も頷く。


「晴隆様の教えを受けられる機会なんて滅多にない」


小夜が静かに手を挙げる。


「あの……」


皆が小夜を見る。


「夏休みの終わりにある花火大会も……」


「みんなで行きたいです」


一瞬静かになり――


「それだ!」


「賛成!」


「絶対行こう!」


「楽しそう!」


談話室いっぱいに笑顔が広がった。


草笛の丘。


御堂家での修練。


そして夏の終わりの花火大会。


夏休みの予定は次々と決まっていく。


窓の外では夕焼けが校舎を赤く染め、ヒグラシの鳴き声が静かに響いていた。


夏休みまで、あと少し。


期待に胸を膨らませながら、一年一組の仲間たちは笑い声の絶えない穏やかな時間を過ごしていた

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