第九十二話 第ニ班 それぞれの役割
第二班では、五人が自然と机を囲んでいた。
麻賀多紅葉が真っ先に口を開く。
「リーダーは道満様にお願いしたいです」
その言葉に、
「私も賛成」
美鈴が頷く。
小夜も静かに続けた。
「わたしもです」
太一も笑顔で頷く。
「異論ないよ」
四人の視線が一斉に道満へ集まる。
道満は腕を組み少しだけ考え込む。
そして静かに首を横へ振った。
「……いや」
「今回は断らせてもらいたい」
「えっ?」
紅葉が目を丸くする。
道満は落ち着いた口調で続けた。
「もし俺がリーダーになったら」
「俺が間違っていても皆は遠慮して意見を言えないだろう」
四人は黙って耳を傾ける。
「それじゃ意味がない」
「それに俺は今回はリーダーを支える立場を学んでみたい」
教室が静かになる。
紅葉は少し驚いた表情を浮かべたが、やがて小さく頷いた。
「……道満様がそうおっしゃるのでしたら」
「分かりました」
すると紅葉はすぐに頭を切り替える。
「では役割を考えましょう」
「わたくしと小篠塚くんは前衛です」
太一も頷く。
「うん」
小篠塚太一。
小篠塚流剣術宗家の嫡男。
立身流が守りと流れを重んじる剣なら、小篠塚流は実戦剣術。
相手を一撃で倒すことを主とする攻撃的な剣術である。
紅葉は続けた。
「小夜さんは森羅聴と式神を生かした連携と情報伝達役」
「道満様は陰陽術による後方支援」
少し微笑みながら言う。
「そうなると」
「リーダーは美鈴さんしかいませんね」
「えっ!? 私!?」
美鈴が思わず声を上げる。
小夜が優しく微笑む。
「美鈴さんは人と話すのが上手です」
「みんなのこともよく見ています」
「リーダーに向いていると思います」
道満も頷く。
「美鈴はいつも周りをよく見ている」
「俺なら見落とすようなことにも気付くかもしれない」
「俺もサポートする」
「だからやってみろ」
太一も笑顔を向ける。
「僕も異論はないよ」
四人から真っ直ぐ見つめられた美鈴は、
「む 無理無理」
「私なんて絶対無理!」
今にも泣き出しそうな顔で両手を振る。
しかし、
「大丈夫です」
「道満様もいます」
「私たちもいます」
「一人じゃないよ」
四人が次々と声を掛ける。
美鈴は困ったように皆を見回し、
最後には観念したように肩を落とした。
「……わ 分かった」
「やるだけやってみる」
その言葉に四人は笑顔になる。
少し離れた教壇から、その様子を見ていた正臣は小さく微笑んだ。
(流石だな道満)
(自分が将来どんな立場になるのか)
(そして今何を学ぶべきなのかをもう理解している)
宗家の次男として、いずれ人を率いる兄を支える未来を見据え、自ら一歩下がって支える側を学ぼうとする。
その姿勢に、正臣は静かに感服していた。




