第九十一話 新たな班、新たな連携
実技試験も終わり、学園にはいつもの穏やかな日常が戻ってきた。
教室では、生徒たちが夏休みを目前に浮き立っている。
ホームルーム。
勝田正臣が教壇に立ち、生徒たちを見回した。
「さて」
「もうすぐ夏休みです」
その一言で教室がざわつく。
「やったー!」
「夏休みだ!」
刀也などは早くも机を叩いて喜んでいる。
正臣は苦笑しながら続けた。
「もちろん宿題があります」
「えぇぇぇ……」
教室中から落胆の声が上がった。
「今年の課題は――」
「チーム戦での連携の研究です」
一同が顔を上げる。
「夏休み中に班で集まり、それぞれの連携を研究してください」
「そして夏休み明けに成果を発表してもらいます」
正臣は一枚の紙を手にした。
「班分けはこちらで決めました」
その瞬間。
「えー!」
「自分たちで決めたかった!」
「あいつとは嫌だ!」
教室が一気に騒がしくなる。
正臣は笑みを浮かべたまま言った。
「安心してください」
「皆さんがお互いに成長し合えると思う相手を選びました」
その言葉で教室は少し静かになった。
正臣は班を読み上げる。
「第一班」
「桜晴真」
「麻賀多凛」
「鏑木与一」
「立身刀也」
「岩名豪太」
五人が顔を見合わせる。
「第二班」
「麻賀多道満」
「麻賀多紅葉」
「江原美鈴」
「木之子小夜」
「小篠塚太一」
道満たちもそれぞれ頷く。
「第三班」
「麻倉迅」
「青菅隼人」
「根郷綾女」
「七曲茜」
「七曲桔梗」
その後も第四班、第五班と発表は続いていった。
教室では、
「やった!」
「なんでこの班なの?」
「面白そう!」
など歓喜と不満の声が入り混じる。
しかし。
多くの生徒が気になっていたのは――第三班だった。
「また始まるぞ……」
「迅と隼人 同じ班だし」
「絶対ケンカになる」
皆がそう思って見守る。
すると案の定、隼人が口を開いた。
「はぁ?」
「お前と一緒かよ」
教室の空気が張り詰める。
だが。
迅は穏やかな表情で隼人へ手を差し出した。
「よろしく頼む」
「……は?」
隼人は固まった。
「なんだコイツ」
「どうした?」
いつものように言い返してくると思っていた。
拍子抜けである。
綾女と茜、桔梗は顔を見合わせ、小さく胸をなで下ろした。
「よかった……」
その様子を見ていた道満が静かにつぶやく。
「やっぱり」
刀也も頷く。
「ああ」
紅葉も腕を組んだ。
「直弥さんとの戦い」
「あの時に見せつけられたのでしょう」
「連携の大切さを」
「だから隼人さんへ噛みつかなかった」
三人は自然と同じ結論へたどり着いていた。
教壇の正臣も、何も言わず静かに見守っていた。
そして。
「それでは」
「班ごとに集まってください」
「まずは班内の役割を決めましょう」
教室は再び賑やかになる。
⸻
第一班
五人は机を寄せ合う。
凛が周囲を見回した。
「まず役割を決めましょう」
与一も頷く。
「それが早い」
話し合いは驚くほど順調だった。
「リーダーは凛」
誰からともなく異論は出ない。
「前衛は刀也」
「任せろ!」
「前衛補佐は豪太」
「おう!」
「中衛は晴真」
「はい」
「後衛は与一」
「リーダー補佐も兼任」
「了解」
わずか数分で全員一致。
役割は綺麗に決まった。
すると豪太が頭をかいた。
「俺は馬鹿だからさ」
「凛や与一の言う通りに動くよ」
「よろしくな」
その時だった。
「それじゃダメだ」
刀也が真剣な顔で言った。
豪太は首を傾げる。
「なんでだ?」
刀也はゆっくりと言葉を選ぶ。
「連携ってさ」
「相手が何を考えるか理解して」
「次にどう動くか先読みして」
「その時にはもう動けるように準備しておくものなんだ」
豪太は黙って聞く。
「敵は」
「指示を待ってくれない」
「指示を聞いてから動いたらもう遅い」
教室が静かになった。
凛、晴真、与一は顔を見合わせる。
(刀也が……)
(こんなことを言うなんて)
三人とも驚きを隠せなかった。
豪太は少し考えたあと、大きく頷く。
「わかった」
「頑張って考えてみる」
その素直な返事に、刀也は嬉しそうに笑った。
「おう!」
「一緒に強くなろうぜ!」
少し離れた教壇から、その様子を見ていた正臣は静かに微笑む。
(クシナダ様)
(もう教えは刀也の中に根付いているようですね)
正臣は頼もしそうに第一班を見つめながら、これから始まる夏休みと、その先に待つ生徒たちの成長へ静かな期待を抱いていた。




