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第八十五話 医務室での反省


 再び佐倉陰陽学園医務室。


ベッドの上では晴真が小さくなって座っていた。


その目の前には――。


腕を組みじっと見下ろす江原鈴華。


「晴真君」


「霊力を使い果たしちゃ駄目って言いましたよね?」


「……はい」


「返事は?」


「ごめんなさい」


「誰に?」


「鈴華先生です……」


鈴華は大きくため息をついた。


「違います‥‥

   あなたを心配したからている人達にです」


「もちろんわたしもです」


「命があってよかった」


「本当にそれだけです」


晴真はしょんぼりと頭を下げた。


「すみません」


その時だった。


コンコン。


扉が開き正臣、沙羅、ミヅチが入って来た。


「晴真」


正臣が優しく声を掛ける。


「大丈夫か?」


「はい」


「凛から話は聞いている」


沙羅も笑った。


「無茶しやがって」


「心配かけんな」


そこへ深月と紫月も医務室へ駆け込んできた。


「晴真君!」


「大丈夫?」


「うん」


晴真が笑うと二人もほっと胸をなで下ろした。


その時。


ミヅチが晴真へ手を差し出す。


「その札」


「見せてくれ」


「はい」


晴真が爆裂の札を渡す。


ミヅチは札を見た瞬間表情が変わった。


隣から銀花ものぞき込む。


「……!」


銀花も息を呑む。


「これを……」


「どこで手に入れたのですか?」


晴真は道具屋での出来事を最初から話した。


話を聞き終えると晴真は不安そうに尋ねる。


「この札……」


「使っちゃいけない札だったんですか?」


「違います」


銀花は静かに首を振った。


その視線をミヅチへ向ける。


ミヅチも静かに頷く。


「これは――」


「龍姫様がお作りになった札じゃ」


その場が静まり返る。


「じゃが」


「使える者がおらなんだ」


ミヅチは優しく晴真を見る。


「そうか……」


「晴真のところへ来たか」


銀花は少し目を潤ませながら微笑んだ。


「晴真君」


「お願いです」


「もう少し修練を積んでから使ってください」


「今回は本当に危険でした」


「……はい」


晴真は素直に頷いた。


深月と紫月も晴真の前へ立つ。


「ありがとう」


「本当に助かった」


「晴真君がいなかったら……」


「危なかった」


晴真は照れ笑いを浮かべた。


「そんなことないよ」


「小桜を探しに行っただけだし」


すると。


凛と小夜が申し訳なさそうに近付いてきた。


「晴真君……」


「ごめんなさい」


「私たちが一緒だったのに……」


小夜も目を潤ませている。


「こんなことになるなんて……」


晴真は笑って首を振る。


「大丈夫」


「たいしたことないよ」


その瞬間。


鈴華がギロリと睨む。


「晴真君?」


「……」


晴真はぺろっと舌を出して笑った。


その様子に皆も苦笑する。


深月が笑う。


「本当に助かった」


「あの術がなかったら私たち危なかった」


ゴツン!


「いたっ!」


「痛っ!」


沙羅の拳骨が二人の頭へ落ちた。


「初等部の子供に助けられてんじゃない!」


「情けねぇ!」


「す すみません!」


二人は慌てて頭を下げた。


晴真が不思議そうに尋ねる。


「沙羅さん」


「知り合いなんですか?」


沙羅は鼻を鳴らす。


「私の後輩だ」


深月と紫月は姿勢を正した。


「神門深月です!」


「西御門紫月です!」


「沙羅さんの舎弟です!」


二人とも表佐倉のギャルのような明るい雰囲気だった。


凛は少し迷いながら尋ねる。


「あの……」


「あの人たちは何者なんですか?」


沙羅は正臣を見る。


正臣は静かに頷いた。


「もう話してもいいでしょう」


そう言って口を開く。


「禍津喰羅教」


その名前が医務室の空気を変えた。


「晴真君たちへ話しかけてきた男」


「おそらく教団幹部です」


「晴真君の爆裂の術を結界で防いだ」


「普通ではありません」


道満が静かに尋ねる。


「あの……」


「直弥という人は?」


沙羅の表情が険しくなる。


「あいつは」


「裏切り者だ」


短く言い切った。


正臣が続ける。


「あの人は」


「僕たちの二つ上の先輩でした」


「ですが」


「禍津喰羅教へ入信する際」


「女子生徒を殺害しそのまま姿を消しました」


深月と紫月は拳を握り締める。


「あいつが……」


「いたんですか」


悔しそうに唇を噛む。


「私たちの親友」


「七曲皐月を……」


医務室に重い沈黙が流れた。


その空気の中。


小夜が恐る恐る手を挙げる。


「あの……」


「聞いていいか分からないんですけど」


「すみません」


皆が小夜を見る。


「あの人が言っていた……」


「金桜眼って」


「晴真君のことなんですか?」


ミヅチはゆっくりと頷いた。


「ここにおる者なら」


「話してもよかろう」


皆を見回す。


「晴真を大切に思う者ばかりじゃ」


そう言うと。


ミヅチは静かに金桜眼の真実を語り始めた。

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