第六十四話 刀斎の思惑
修練場へ姿を現した立身刀斎。
豪快な笑みを浮かべていた刀斎だったが、神の眷属たちの姿を見ると表情を改めた。
木刀を脇へ置き、深く一礼する。
「クシナダ様」
「チヨヒメ様」
「ミヅチ様」
「本日もお変わりなく何よりです」
その姿は、普段の豪放磊落な刀斎とは別人のようだった。
クシナダは静かに頷く。
「久しいな刀斎」
チヨヒメは嬉しそうに微笑む。
「元気そうで何よりじゃ」
ミヅチは酒を片手に笑った。
「相変わらず堅いのう」
刀斎は照れくさそうに頭をかく。
「皆様は立身一族が代々お仕えしてきた御方」
「私にとっては今も変わらず尊敬する神々です」
その言葉に晴真たちは少し驚く。
豪快な刀斎にも、こんな一面があるのだ。
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挨拶を終えると、刀斎は修練場を歩き始めた。
まずは道満。
居合の構えを確認する。
「ふむ」
「まだ力みがある」
「だが筋は良い」
次に凛。
二刀を握る姿を見て頷く。
「神楽双刃術か」
「身体の軸がぶれん」
「面白い」
小夜には杖術と薙刀を見比べる。
「森羅聴を活かせば良い武になる」
最後に晴真。
合気術の足運びを見て豪快に笑う。
「はっはっは!」
「晴真らしい武じゃ!」
「力ではなく人を活かす武」
「気に入った!」
四人とも嬉しそうに頭を下げた。
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その様子を見ていた晴真が不思議そうに尋ねる。
「刀斎さん」
「どうした?」
「刀也くんたちは見てあげなくていいんですか?」
「刀也くんも修行してますよね?」
刀斎は口元を緩めた。
「もちろんしておる」
「迅もな」
「二人は同学年でも武術は頭一つ抜けておる」
「えっ」
晴真たちは少し驚く。
刀斎は腕を組み、ニヤリと笑った。
「じゃがな」
「少々、自惚れておる」
「自分たちより強い者は上級生くらいしかおらぬと思っておるからな」
沙羅が苦笑する。
「確かに」
「刀也は調子に乗りやすいし」
ミヅチも笑う。
「迅も負けず嫌いじゃからのう」
刀斎は木刀を肩へ担いだ。
「だから」
「わしはお前たちに期待しておる」
「え?」
晴真たちは顔を見合わせる。
刀斎は豪快に笑う。
「刀也と迅の」
「天狗の鼻をへし折ってもらおうと思ってな!」
「ええぇ!?」
晴真が思わず声を上げる。
「ぼ、僕たちがですか!?」
道満は静かに頷く。
「なるほど」
「競い合う相手がいる方が人は伸びますからね」
刀斎は満足そうに頷く。
「その通りじゃ!」
「強くなるには」
「負ける悔しさも必要なんじゃ!」
晴隆が笑みを浮かべる。
「刀也も迅も才能は十分じゃから」
「だからこそ壁が必要なのじゃ」
道秀も穏やかに続けた。
「そして晴真たちにも」
「刀也や迅という目標がある」
「互いに高め合える関係が一番強くなれるからの」
晴真たちは顔を見合わせ、小さく頷いた。
「はい!」
修練場に元気な返事が響く。
その頃。
何も知らない刀也と迅は、それぞれの家で木刀や術札を手にしながら意気込んでいた。
「次の試験も俺が一番だ!」
「負ける気はねぇ!」
そんな二人の未来を思い浮かべ、刀斎はひとり楽しそうに笑うのだった。




