第六十三話 試験前の特別修練
実技試験まで、あと二日。
週末。
晴真、道満、凛、小夜の四人は、御堂家の修練場へ集まっていた。
「今日は秘密特訓だ」
晴隆が笑って言う。
その隣には、麻賀多宗家当主・道秀の姿もあった。
「試験前じゃからのう」
「最後に陰陽術を見直しとくするか」
「よろしくお願いします!」
四人は揃って頭を下げた。
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広い修練場では、それぞれが術の確認を始める。
晴隆は晴真を。
道秀は道満を中心に見ながら、凛や小夜にも細かく助言を送っていく。
「晴真」
「霊圧は安定しておる」
「じゃが札へ繋ぐ霊脈はもう少し細くできる」
「はい!」
「道満」
「札の切り替えは見事じゃ」
「じゃが視線で次の札が読まれておる」
「なるほど……」
「凛」
「霊力の流れは綺麗じゃ」
「焦らず自分の間合いを信じなさい」
「はい!」
「小夜」
「森羅聴だけに頼るな」
「感じたことを身体で表現するのじゃ」
「はい!」
四人とも真剣な表情で頷く。
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しかし。
真面目な修練場とは裏腹に、その周囲はいつものように賑やかだった。
「ほほほ」
「晴真 頑張っておるの」
チヨヒメが縁側でお茶を飲んでいる。
珠代も穏やかに微笑みながら見守る。
「霊脈を新たに繋ぐ術式……」
「本当に興味深いですね」
クシナダは腕を組み、無言で観察。
ミヅチは寝転びながら酒を飲んでいる。
「かっかっか!」
「面白いのう!」
銀花は晴真たちへお茶を運び、桜花は晴真の肩で応援していた。
「ご主人様ー!」
「がんばれー!」
「はい!」
修練場には神の眷属たちまで集まり、まるで宴会のようだった。
沙羅は苦笑する。
「……毎回思うけど」
「冷やかしに来てるだけだよな」
「失礼じゃの」
ミヅチが笑う。
「ちゃんと見守っておる」
「半分は酒盛りじゃが」
「半分なんだ……」
晴真は苦笑した。
⸻
話題は自然と、晴真の新しい術式へ移っていた。
「やはり面白い」
珠代が感心したように言う。
「既存の霊脈ではなく、術ごとに霊脈を繋ぐ発想」
チヨヒメも腕を組む。
「複合術への応用も利きそうじゃ」
道秀も頷く。
「固定観念に縛られていては生まれない発想ですね」
晴隆は孫を見ながら目を細めた。
「晴真らしい」
「人と違うことを恐れない」
その時だった。
修練場の入口から豪快な笑い声が響く。
「がっはっは!」
「楽しそうじゃのう!」
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、大きな木刀を肩に担いだ男。
立身刀斎だった。
「刀斎さん!」
晴隆と道秀は同時に立ち上がる。
「お久しぶりです!」
「お元気そうで何よりです!」
刀斎は豪快に笑う。
「堅苦しい挨拶はいらん!」
「試験前と聞いてな」
「ちと様子を見に来た」
晴隆と道秀は顔を見合わせる。
そして揃って頭を下げた。
「刀斎兄」
「ご指導をお願いします」
「刀斎兄」
「ぜひお願いします」
晴真たちは驚く。
「えっ?」
「おじいちゃんたちが……」
「兄?」
凛も目を丸くする。
刀斎は笑って頷いた。
「昔からの付き合いだからな」
「わしが一番年上じゃ」
「この二人は昔から『刀斎兄』と呼んどる」
晴隆は少し照れくさそうに笑う。
「学生時代からお世話になっていたからなぁ」
道秀も苦笑する。
「頭が上がらんわ」
刀斎は木刀を地面へ突き立てた。
「よし!」
「陰陽術は晴隆と道秀に任せる!」
「武術はこのわしが見てやろう!」
その一言で、晴真たち四人の表情が引き締まる。
試験前最後の特別修練が、いよいよ始まろうとしていた。




