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第五十六話 晴真の武術


 模擬稽古が終わり、晴真と道満は木刀を納めた。


一葉、二葉、三葉は顔を見合わせ、小さく頷く。


どうやら三人の中で結論が出たようだった。


クシナダも腕を組んだまま静かに口を開く。


「さて」


「晴真」


「自分の戦い方は分かったか?」


晴真は少し考えて答えた。


「真っ直ぐ過ぎる……ですか?」


「うむ」


クシナダは頷く。


「基礎は悪くない」


「剣筋もきれいじゃ」


「じゃが相手から見れば次に何をするか分かりやすい」


一葉が一歩前へ出る。


「ですがそれは短所ばかりではありません」


「晴真様は相手を倒そうとして力任せに振っているわけではありません」


二葉も続ける。


「相手をよく見ています」


「無理な攻撃もしません」


三葉は優しく微笑んだ。


「それにとても手先が器用です」


「霊力を操る修練の成果でしょう」


晴真は少し照れくさそうに笑う。


「おじいちゃんのおかげです」



道満も静かに口を開く。


「俺も一つ気付いた」


「桜は木刀を振るよりも」


「相手の動きを見ている時間の方が長い」


「え?」


晴真は驚く。


「そうかな?」


「無意識だろう」


「俺が踏み込む前からどこへ動くか見ようとしていた」


凛も頷く。


「確かに」


「晴真くんってまず相手を見てるよね」


小夜も微笑む。


「慌てて攻めるタイプじゃない」



クシナダは満足そうに笑った。


「なるほど」


「そういうことか」


「晴真」


「お前は剣士ではない」


晴真はきょとんとする。


「え?」


「剣で勝つ者ではなく」


「陰陽師として戦う者じゃ」


その言葉に晴真は息を呑んだ。


一葉が木刀を一本持ち上げる。


「晴真様」


「武術とは剣だけではありません」


二葉も木刀を持つ。


「体術」


「歩法」


「受け流し」


「間合い」


「それら全てを含めて武術です」


三葉は続ける。


「そして晴真様には霊力があります」


「陰陽術があります」


「式神もいます」


「それらを活かさない理由はありません」



道満が納得したように頷く。


「つまり」


「木刀一本で勝負する必要はない」


「その通り」


一葉が答える。


「晴真様には晴真様だけの武術があります」


クシナダは木刀を晴真へ渡した。


「相手を斬ることだけ考えるな」


「守り」


「受け流し」


「間合い」


「その隙に札を使い」


「式神へ指示を出し」


「必要なら体術で離れる」


「それがお前の武術じゃ」


晴真の瞳が少しずつ輝いていく。


「僕だけの……武術」



その時。


桜花が晴真の肩へ飛んできた。


「ご主人様!」


「桜花もお手伝いします!」


続いて式神札がふわりと光る。


「シャー」


小桜も姿を現し、晴真の首へ巻き付いた。


その様子を見た三葉が微笑む。


「もう答えは揃っていますね」


二葉も頷く。


「晴真様は一人で戦う方ではありません」


一葉が静かに締めくくる。


「式神と共に戦い」


「陰陽術で支え」


「武術で身を守る」


「それが晴真様だけの戦い方です」


晴真は木刀を握り直し、大きく頷いた。


「はい!」


「僕 自分だけの武術を見つけます!」


その返事にクシナダは満足そうに笑う。


「うむ」


「それでよい」


こうして晴真は、剣士を目指すのではなく、陰陽師として最も自分らしい武術への第一歩を踏み出したのだった。

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