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第五十五話 模擬稽古


「それでは始めましょう」


一葉の声に、晴真と道満は木刀を手に取り、修練場の中央へ向かった。


二人が向かい合う。


その時だった。


「あっ」


晴真は肩へ乗っていた桜花を見た。


「桜花」


「危ないから少し下りててね」


「はーい!」


桜花は元気よく返事をすると、ふわりと飛び降り、小夜の肩へちょこんと座った。


その瞬間だった。


クシナダと三姉妹の動きが止まる。


「……」


「……え?」


「まさか……」


四人の視線が一斉に桜花へ向けられた。


クシナダが目を見開く。


「霊童……じゃと?」


一葉も驚きを隠せない。


「本当に霊童です……」


二葉が信じられないという表情で桜花を見る。


「人型の式神……」


三葉も思わず呟いた。


「しかもこんなに幼い霊童が……」


桜花は首を傾げる。


「こんにちは!」


ぺこりと頭を下げる姿は、とても愛らしい。


しかし、その場の空気は静まり返っていた。


晴真が不思議そうに尋ねる。


「そんなに珍しいんですか?」


一葉が深く頷く。


「ええ」


「霊童は人型の式神の中でも特に希少です」


二葉も続ける。


「私たちも実際に見るのは初めてです」


三葉は優しく微笑んだ。


「晴真様の式神なのですね」


「はい」


晴真は嬉しそうに頷く。


「昨日 契約できました」


クシナダは静かに目を閉じ、小さく笑った。


「また面白い子を引き寄せたものじゃ」


「さすがは金桜の導きか……」


その言葉に晴真は首を傾げたが、クシナダはそれ以上語らなかった。



「さて」


一葉が手を叩く。


「話はここまでです」


「模擬稽古を始めましょう」


晴真と道満は再び向かい合う。


互いに木刀を構えた。


「よろしく」


「よろしく」


一礼。


そして。


「始め!」


二葉の合図で、晴真が真っ直ぐ踏み込んだ。


「はっ!」


上段から素直な一太刀。


カンッ!


道満は木刀を軽く合わせるだけで受け流す。


そのまま。


コン。


晴真の胴へ軽く木刀を当てた。


「一本」


晴真は驚く。


「今の返されたの?」


「うん」


道満は穏やかに笑う。


「もう一度」


「うん!」


晴真は再び踏み込む。


今度は袈裟斬り。


道満は半歩だけ身体をずらし、木刀を滑らせる。


カンッ。


そして。


コン。


今度は肩へ軽く当てた。


「まただ……」


晴真は苦笑する。


その後も。


面。


胴。


突き。


どの攻撃も道満は正面から打ち合わない。


受け流し。


いなし。


体勢を崩し。


最後に軽く一本を取る。


何度やっても同じだった。



一葉は腕を組む。


「なるほど」


二葉も頷く。


「晴真様はとても素直な太刀筋です」


三葉が続ける。


「だからこそ読みやすい」


クシナダも静かに見守る。


「悪くない」


「基礎はよくできておる」


「じゃが」


「正直すぎる」


道満は木刀を下ろした。


「晴真」


「君の攻撃は分かりやすい」


「だから返し技が決めやすい」


晴真は悔しそうに笑う。


「なるほど……」


「だから全部返されちゃうんだ」


道満は頷いた。


「君は真っ直ぐ過ぎる」


「でもそれは欠点だけじゃない」


「伸ばし方次第では武器になる」


その言葉に、一葉たち三姉妹は静かに微笑んだ。


分析は終わった。


ここからが、本当の武術修練の始まりだった。

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