第五十一話 どんな式神がいい?
放課後
黒桜寮の修練場。
晴真、小夜、道満、凛の四人は、今日も式神術の修練を始めていた。
小夜が一枚の式神札を取り出す。
「昨日は式神について説明したから今日は実際に見てもらうね」
そう言って札へ霊力を流す。
「来て」
白い光が舞い、一匹の白狐が姿を現した。
美しい毛並み。
賢そうな瞳。
白狐は小夜の肩へ軽やかに飛び乗る。
「かわいい……」
晴真は思わず声を漏らした。
「この子は私の式神」
「森の中の探索や索敵が得意なの」
白狐は小夜の頬へ頭を擦り寄せた。
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続いて道満が札を取り出す。
「来い」
青白い光とともに現れたのは、三本の尾を持つ白銀の狐。
凛は何度見ても感心する。
「やっぱり格好いい」
道満は狐の頭を優しく撫でた。
「札術との相性が抜群だ」
「霊力の流れも読んでくれる」
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今度は凛が式神札を掲げる。
「お願い」
大きな白鷲が羽ばたきながら姿を現す。
風がふわりと舞い上がる。
「空から周囲を見渡したり人を運んでもらったりできるの」
晴真は目を輝かせた。
「みんなそれぞれ違うんだ」
「うん」
凛は微笑んだ。
「式神はその人に合った子が来てくれることが多いから」
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晴真は腕を組みながら考え込む。
「僕は……」
「どんな式神がいいんだろう」
道満が尋ねる。
「桜は何を望む?」
「強い式神か?」
晴真は首を振る。
「うーん」
「強さも大事だけど……」
「困った時に助けてくれて」
「気が利いて」
「一緒にいると安心できる子がいいな」
その言葉を聞いた三人は顔を見合わせる。
晴真はさらに考え続ける。
(助けてくれて)
(いつも優しくて)
(何でも気付いてくれて……)
自然と思い浮かんだのは、一人の女性だった。
「銀花さん……」
思わずその名前が口から漏れる。
小夜は優しく笑う。
「そういうイメージでいいんだよ」
「え?」
「式神を選ぶんじゃないの」
「こんな子に来てもらいたいって心に思い描くの」
「そうすればその想いに応えてくれる子が現れることがあるの」
道満も頷いた。
「式神との出会いは契約でもあるが縁でもある」
「まずは呼びかけてみろ」
晴真は深く息を吸った。
「分かった」
一枚の式神札を両手で持つ。
静かに目を閉じる。
心に思い浮かべる。
優しく。
気が利いて。
いつも誰かを支えてくれる存在。
「……来て」
札が淡く光り始めた。
小夜たちは静かに見守る。
ふわり。
小さな光が晴真の前へ舞い降りる。
光が消えると、そこには――。
「えっ?」
手のひらに乗るほどの小さな女の子が立っていた。
幼い禿姿で、愛らしい童女。
白い小袖に緋袴をまとい、小さな鈴を手に持っている。
少女は辺りをきょろきょろ見回すと、晴真を見上げてにっこり笑った。
「こんにちは!」
可愛らしい声が修練場に響く。
晴真は目を丸くした。
「女の子……?」
小夜も驚いた表情を浮かべる。
「人の姿をした式神……」
道満も静かに目を見開く。
「珍しいな」
凛は嬉しそうに微笑んだ。
「晴真くんらしい式神だね」
小さな少女は、ぺこりと頭を下げる。
「今日からよろしくお願いします!」
晴真は思わず笑顔になった。
「うん!」
「こちらこそよろしく!」
こうして晴真は、自分自身の力で初めて契約した式神と出会うのだった。




