第四十三話 宮小路町の陰陽術道具店
宮小路町。
佐倉陰陽学園の城下町から少し離れた場所にある、陰陽師たちで賑わう商店街だ。
道の両側には、札術道具店、式神具店、薬屋、鍛冶屋などが立ち並び、多くの陰陽師が行き交っている。
「すげぇ!」
刀也は目を輝かせた。
「こんな店がいっぱいあるのか!」
迅も辺りを見回す。
「忍具専門店まである」
与一は一軒の店を見つめていた。
店先には様々な弓が並んでいる。
「……あそこだ」
刀也が肩を叩く。
「あとで行こうぜ」
「まずは道具屋だ」
⸻
五人が入ったのは、古くから続く陰陽術道具店だった。
店内には無数の札。
護符。
霊石。
法具。
見たこともない陰陽具が整然と並んでいる。
「いらっしゃい」
店の奥から白髪の老人が現れた。
「おや」
「佐倉陰陽学園の一年坊か」
刀也は勢いよく頭を下げる。
「こんにちは!」
「術札を見せてください!」
老人は笑った。
「元気な坊主だ」
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晴真は棚へ並ぶ札を興味深そうに眺めていた。
「こんなに種類があるんだ……」
道満が説明する。
「札にも等級がある」
「初級 中級 上級 最上級」
「術によって使い分けるんだ」
晴真は頷く。
「なるほど」
老人が会話を聞きながら近づいてくる。
「坊主」
「札を見る時は 霊力も見てみるといい」
「霊力?」
「札には それぞれ流せる霊力量の限界がある」
晴真は最上級札を手に取った。
「あ」
「先生が使わせてくれた札と同じだ」
老人は目を細める。
「ほう」
「最上級札を使ったことがあるのか」
「はい」
「火球の術で」
老人は少し驚いたようだった。
「一年坊がか」
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その頃。
刀也は木刀を見つけて大はしゃぎ。
「この木刀 かっけぇ!」
迅は忍具売り場へ一直線。
「煙玉まで売ってる」
与一は弓を一本ずつ手に取り、静かに重さを確かめていた。
店主も思わず笑う。
「みんな好きなものが違うようじゃな」
⸻
一方、道満は札を眺めながら考え込んでいた。
「札には容量がある……」
「容量?」
晴真が聞き返す。
「お前の話を聞いて思った」
「札が耐えられる霊力量には限界がある」
「なら」
「術の威力は霊力量だけでは決まらない」
晴真は修練を思い出した。
「おじいちゃんも似たことを言ってた」
「霊圧と霊脈も大事だって」
道満は腕を組む。
「霊圧……」
「霊脈……」
「面白い」
「もし その理論が正しいなら」
「今までの札術も変えられる」
晴真は首を傾げる。
「変えられる?」
「例えば」
道満は一枚の上級札を手に取る。
「普通なら上級術に使う札で 初級術を使ったらどうなると思う?」
晴真は少し考える。
「余裕ができる?」
「そうだ」
「札の容量に余裕があれば 術はもっと安定するかもしれない」
「さらに」
「霊圧や霊脈まで制御できれば 同じ術でも精度はもっと上がるはずだ」
「……なるほど」
晴真も目を輝かせる。
⸻
その話を聞いていた老人が、にやりと笑った。
「面白いことを考える坊主たちじゃ」
「昔から」
「新しい術理は こういう何気ない会話から生まれるものだ」
道満と晴真は顔を見合わせる。
まだ答えは分からない。
だが。
二人の頭の中には、新しい陰陽術への小さな可能性が芽生え始めていた。
「おーい!」
店の奥から刀也の声が響く。
「与一!」
「その弓 すげぇぞ!」
「迅!」
「また余計な物見つけたな!」
店内は再び賑やかな笑い声に包まれる。
晴真も思わず笑った。
初めての寄り道。
初めての宮小路町。
そして仲間たちとの何気ない時間。
その一つひとつが、晴真にとってかけがえのない思い出になっていくのだった。




