第四十二話 悪ガキ達の初冒険
晴真が学園へ戻ってから数日。
陰陽術の授業は見違えるように変わっていた。
札術。
結界術。
封印術。
以前のような暴走はなくなり、どの術も安定して成功するようになった。
「よし 成功!」
火球が的の中心へ命中する。
結界も自分の周囲だけを正確に覆う。
封印術も狙った石だけを封じることができた。
正臣は満足そうに頷いた。
「よくここまで成長したな」
「ありがとうございます!」
晴真は笑顔で頭を下げる。
以前は怖かった陰陽術が、今では楽しくて仕方がなかった。
⸻
放課後。
男子一号室。
刀也と迅が何やらこそこそ話していた。
「晴真」
「今日 宮小路町へ行こうぜ」
「宮小路町?」
「陰陽術道具店だ!」
刀也が目を輝かせる。
迅も頷く。
「新しい術札や道具が入ったらしい」
「俺も忍具を見たい」
晴真は少し困った顔になる。
「でも 初等部一年生だけで外へ出ちゃ駄目じゃなかった?」
与一が静かに答えた。
「放課後の外出は許可制だ」
「担任の許可をもらって 寮母さんと監督生へ届け出をしなければならない」
刀也は肩をすくめる。
「だから内緒で行くんだよ」
「えぇっ!?」
晴真は思わず声を上げた。
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「問題は凛だ」
迅が腕を組む。
「俺たちが何かやろうとすると すぐ止めに来る」
「学級委員だからな」
刀也も苦笑する。
「毎回説教される」
与一は黙って聞いていたが 小さく呟く。
「……実は」
三人が与一を見る。
「新しい弓が入ったらしい」
「一度見てみたい」
刀也と迅が顔を見合わせる。
「おぉ!」
「与一が乗り気だ!」
珍しく与一の口元が少し緩んでいた。
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迅が急に晴真の肩へ手を回す。
「晴真 頼みがある」
「え?」
刀也がにやにや笑う。
「木之子小夜に頼んでくれ」
「小夜ちゃん?」
「凛をどこかへ誘って時間を稼いでもらうんだ」
晴真は首を傾げる。
「なんで僕が?」
「いいから いいから」
「絶対うまくいく」
「えぇ……?」
晴真は意味が分からない。
助けを求めるように与一を見る。
すると。
普段は無表情な与一が珍しく口元を緩めていた。
「与一まで……」
晴真はますます分からなくなる。
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しばらくして。
小夜が凛へ声を掛けた。
「凛ちゃん ちょっと相談があるんだけど」
「え?」
二人はそのまま校舎の反対側へ歩いていく。
その様子を見た刀也が小さく拳を握る。
「よし!」
「今だ!」
四人は校舎を抜け 黒桜寮の裏門からそっと抜け出した。
「成功だ!」
刀也が嬉しそうに笑う。
晴真だけは周囲をきょろきょろ見回している。
「本当に大丈夫かな……」
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その時だった。
「おい」
後ろから聞き慣れた声がした。
四人が振り向くと 腕を組んだ道満が立っていた。
「道満!?」
刀也が驚く。
「何してるんだよ!」
「それはこっちの台詞だ」
道満はため息をつく。
「初等部一年生だけで禁止区域へ出るのは禁止だぞ」
刀也がにやりと笑う。
「でも」
「お前ももう外にいる」
迅も笑った。
「つまり共犯だな」
「なっ……」
道満は言葉に詰まる。
確かに自分もすでに許可区域の外へ出てしまっていた。
晴真は申し訳なさそうに頭を下げる。
「ご ごめん」
「巻き込んじゃった」
道満は深いため息をついた。
「まったく……」
「仕方ない」
「最後まで付き合う」
刀也と迅は顔を見合わせて笑う。
「よし!」
「仲間が増えた!」
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五人は宮小路町へ向かって歩き始めた。
しばらく歩いたところで 道満が晴真へ尋ねる。
「ところで」
「どうしてそんなに霊力が安定した?」
「数日前とは別人だ」
晴真は少し照れながら笑う。
「おじいちゃんに修練してもらったんだ」
「修練?」
「丹田とか霊圧とか霊脈とか」
「自然を見ながら教えてもらって」
道満は興味深そうに耳を傾ける。
「丹田……」
「霊圧……」
「霊脈……」
「聞いたことのない考え方だ」
晴真は修練で学んだことを一つひとつ話し始めた。
その話を聞く道満の表情は歩くほどに真剣さを増していく。
まだ誰も気付いていない。
晴真が何気なく話しているその修練こそが
後に裏佐倉の陰陽術を大きく変える新たな術理の始まりになることを




