第三十七話 再び学園へ
それから数日。
晴真は毎朝 瞑想から一日を始めていた。
丹田を感じる。
霊力を身体中へ巡らせる。
そして丹田へ戻る瞬間だけ 霊圧を掛けて静かに圧縮する。
何度も。
何度も。
焦ることなく繰り返した。
⸻
修練場。
晴隆は静かに晴真の霊力を感じ取っていた。
「……うむ」
晴真は目を開く。
「おじいちゃん どうですか?」
晴隆は満足そうに頷いた。
「最初とは見違えるほどじゃ」
「霊圧が安定してきた」
晴真は少し嬉しそうに笑う。
「本当ですか」
「以前のお前は 霊圧に波があった」
「強くなったり弱くなったりを繰り返しておった」
「だから札へ流れる霊力も一定ではなかった」
晴真は思い返す。
火球を使うたびに威力が変わり 思い通りにならなかった。
「今は違う」
「霊圧が落ち着き 必要な力を一定に保てるようになってきた」
⸻
晴隆は一本の竹を差し出した。
「握ってみよ」
晴真が握ると 晴隆は静かに言った。
「丹田から霊力を指先まで流してみなさい」
晴真はゆっくりと目を閉じる。
丹田。
そこから霊脈を通り。
腕へ。
肘へ。
手首へ。
指先へ。
以前のような勢い任せではない。
穏やかで 途切れることのない流れだった。
竹が淡く金色に輝く。
晴隆は微笑んだ。
「そうじゃ」
「霊脈へ均一に流れておる」
「均一に……」
「霊脈は川と同じ」
「流れが急に強くなれば岸が削れ 弱くなれば流れが止まる」
「一定に流れてこそ 美しい川になる」
晴真は自分の腕を見つめた。
「霊力も同じなんですね」
「その通りじゃ」
⸻
晴隆は続ける。
「霊圧が安定すれば 霊脈へ余計な負担を掛けずに済む」
「霊脈が安定すれば 術も安定する」
「すべては繋がっておる」
晴真は深く頷いた。
「だから最初に丹田を学んだんですね」
「うむ」
「源が整えば 流れも整う」
「流れが整えば 術も整う」
⸻
その日の夕方。
修練を終えた晴隆が空を見上げながら言った。
「晴真」
「はい」
「そろそろ学校へ戻る頃合いじゃ」
晴真は少し驚く。
「もうですか?」
「基礎は十分身に付いた」
「ここから先は 学園で学びながら磨いていけばよい」
晴真は修練場を見渡した。
毎日汗を流した場所。
丹田を知り 霊脈を知り 自分自身と向き合った場所。
少し寂しさもあった。
「ありがとうございました」
晴真は深く頭を下げる。
晴隆は優しく笑った。
「礼を言うのはまだ早い」
「修練はこれで終わりではない」
「毎日続けることじゃ」
「瞑想も」
「霊力循環も」
「霊圧の制御も」
「一日でも怠れば すぐに鈍る」
「はい!」
晴真は力強く返事をした。
晴隆は満足そうに頷く。
「正臣たちも お前の成長を楽しみに待っておるはずじゃ」
晴真は笑顔で空を見上げた。
入学してから初めて 自分の霊力が怖いものではなく 向き合うべき力なのだと思えるようになっていた。
晴真は新たな自信を胸に 再び佐倉陰陽学園への道を歩み始めるのだった。




