第二十六話 職員室の談話
放課後
生徒たちの声も遠ざかり 学園は少しずつ静けさを取り戻していた。
職員室では 勝田正臣が机に肘をつき 大きくため息をつく。
「はぁ」
机の上には一年一組の授業記録。
その一番上には 大きく書かれた名前。
桜晴真。
「どう指導したものかな」
札術では火柱。
結界術では教室全体を覆う巨大結界。
封印術ではクラス全員を封じかけた。
どれも失敗。
しかも 常識では考えられない規格外の失敗ばかりだった。
「また桜晴真君?」
後ろから声がした。
振り向くと 西御門紫苑が微笑みながら立っていた。
長い黒髪を揺らし どこか面白そうに正臣を見つめている。
その隣には 親友の神門玄も立っていた。
「お前も大変だな」
玄が苦笑する。
正臣は肩を落とした。
「ああ」
「霊力量が桁違いなのは分かる」
「でも 扱い方がまるで分からない」
「基礎から教えても 加減ができないんだ」
紫苑はくすりと笑う。
「正臣らしくないわね」
「学生時代なら 『何とかなる!』って突っ走ってたくせに」
「茶化すなよ」
「困ってるんだから」
「だから茶化したくなるのよ」
紫苑は楽しそうに笑った。
その様子を見て 玄も苦笑する。
「相変わらずだな お前たちは」
三人は学生時代からの付き合いだった。
正臣と玄は特に仲が良く 互いに何でも相談できる親友。
紫苑もそんな二人とは長い付き合いで 困った正臣を見るとついからかいたくなる性格だった。
紫苑は少し考えるように腕を組む。
「そういえば」
「沙羅のお伯父さん」
「晴真君のお祖父様でもある御堂晴隆さん」
「あの人 裏佐倉でも指折りの霊力操作の達人じゃなかった?」
正臣は顔を上げる。
「確かに」
玄も頷く。
「晴臣先輩もそうだった」
「沙羅も霊力操作は抜群だったよな」
「御堂家は代々 霊力を繊細に扱うことに長けた一族だ」
正臣は腕を組んで考え込む。
「でも 俺なんかが相談していいものか」
紫苑は呆れたようにため息をつく。
「何言ってるの」
「晴臣先輩は あなたの六つ上の先輩だったでしょう?」
「可愛がってもらってたじゃない」
玄も笑う。
「晴臣先輩なら 『困ったらいつでも来い』って言いそうだけどな」
正臣は少し笑った。
「そうだな」
「一人で悩んでいても仕方ないか」
紫苑は満足そうに頷く。
「決まりね」
「御堂家へ行きましょう」
「晴真君のためにも 一番詳しい人に相談した方が早いわ」
正臣は大きく頷いた。
「ああ」
「晴臣先輩と 晴隆さんに話を聞いてみよう」
その決断が 後に晴真の力の秘密を知る 大きな転機となることを この時の正臣たちはまだ知らなかった。




