第二十五話 劣等生・晴真
翌日から 本格的な授業が始まった。
初等部では 一組の授業はすべて担任である勝田正臣が受け持つ。
午前は勉学。
午後は武術と陰陽術。
それが一年生の日課だった。
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最初の陰陽術は――札術。
正臣が札を一枚掲げる。
「今日は火球の術だ」
「必要な霊力だけを札へ流すこと」
「昨日教えたことを思い出せ」
生徒たちは一斉に札を構えた。
「火球!」
小さな火の玉が次々と飛び出す。
凛は美しい火球を作り出し 的の中心へ命中させた。
道満も無駄なく霊力を流し 安定した火球を放つ。
刀也は少し大きめだったが 問題なく成功した。
「次 晴真」
「はい!」
晴真は深呼吸する。
(少しだけ)
(少しだけ流す)
そう意識して札へ霊力を送った。
次の瞬間。
ゴォォォォォン!!
轟音が演習場に響く。
札から火球どころではない巨大な火柱が天井近くまで吹き上がった。
「うわぁっ!」
生徒たちは慌てて飛び退く。
正臣が素早く札を投げる。
「散!」
火柱は一瞬でかき消えた。
演習場には静寂が訪れる。
晴真は青ざめていた。
「ご ごめんなさい!」
正臣は苦笑する。
「威力だけなら満点なんだがな」
教室から笑いが起きた。
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数日後。
結界術。
「今日は自分一人を守る結界を張る」
生徒たちは直径一メートルほどの結界を展開していく。
晴真も札を構えた。
(今度こそ)
霊力を流した瞬間。
ブワァァァッ!!
淡い光が教室いっぱいへ広がった。
教室どころか廊下まで包み込む巨大な結界。
「なんだこれ!」
「教室全部包まれてる!」
「出られない!」
正臣は苦笑しながら結界を解除する。
「晴真」
「自分一人でいい」
「学校全体を守る必要はない」
「すみません!」
また教室に笑いが起こった。
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さらに別の日。
封印術。
「今日は小石を封印する」
生徒たちは机の上の石へ術を施していく。
晴真も慎重に札を置いた。
「封!」
次の瞬間。
教室中の札が一斉に光る。
「え?」
凛が身体を動かそうとして驚く。
「身体が重い!」
刀也も動きが鈍る。
「なんだこれ!」
道満がすぐに気付いた。
「全員が術式に巻き込まれている!」
正臣は慌てて封印術を打ち消した。
「解除!」
光は消え 生徒たちはほっと息をつく。
晴真は机へ額をぶつけた。
「本当にごめんなさい」
正臣は苦笑しながら頭をかく。
「小石だけ封印してくれ」
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こうして授業が進むにつれ 晴真の評価ははっきりと分かれていった。
地学
算術
歴史
国語
理科
表佐倉で学んできた知識がそのまま生かされ どの教科も上位。
特に歴史では 正臣が驚くほどの知識を見せることもあった。
「桜君 また満点です」
「すごい」
クラスメイトたちは感心する。
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武術も悪くなかった。
刀術では刀也や迅には及ばない。
弓術では与一。
体術では豪太。
幼い頃から鍛えられてきた裏佐倉の子どもたちとの差は大きい。
それでも晴真は飲み込みが早く 正臣も感心する。
「筋は悪くない」
「鍛えれば必ず伸びる」
晴真は嬉しそうに笑った。
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しかし――。
陰陽術だけは違った。
札術。
結界術。
封印術。
どれをやっても失敗する。
しかも その失敗は普通ではない。
規格外。
成功と失敗の差が極端すぎる。
正臣は教壇から晴真を見つめる。
(霊力量が多すぎる)
(少し流したつもりでも 術に必要な量をはるかに超えてしまう)
(まずは霊力を自在に扱えるようにならなければ)
晴真は今日も頭を下げる。
「ごめんなさい!」
教室には苦笑が広がった。




