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第二十二話 初授業


翌朝


黒桜寮の一年一組


春の日差しが教室へ差し込んでいた。


「おはようございます!」


担任の勝田正臣が教壇へ立つ。


「今日から授業が始まる」


「初めての授業は式神術だ」


新入生たちの表情が明るくなる。


「式神術は陰陽師の基本」


「でも焦る必要はない」


「みんな少しずつ覚えていけばいい」


正臣は教卓に小さな木札を置いた。


「まずは依代について説明する」


紙札


木札


人形



勾玉


式神は様々な依代を使って契約すること。


霊力を依代へ流し、心に思い描いた存在を呼び出すこと。


正臣は一つひとつ丁寧に説明していく。


晴真も真剣に聞いていた


「晴真」


正臣が笑う


「君は井野丸様から小桜をもらっているけど、まずは自分の力で式神を呼ぶ練習をしよう」


「はい!」


晴真は元気よく返事をした。


「じゃあ見本を見せよう」


正臣が木札へ霊力を流す。


「来い」


ふわり


風が吹いた


次の瞬間


黒い猫が机の上へ飛び乗る。


「にゃあ」


「おおー!」


教室中から歓声が上がった。


黒猫は教室を軽やかに歩き回る。


「この子は志那都(しなつ)


正臣は優しく頭を撫でる。


「名前の由来は風の神・志那都比古神(しなつひこのかみ)


「風みたいに素早くて気まぐれなんだ」


志那都は正臣の肩へ飛び乗る。


新入生たちは目を輝かせた。


「それじゃあやってみよう」


全員が依代を手に取る


教室は一気に静まり返った


最初に成功したのは凛だった。


白い光が集まり、小さな白鷲が現れる。


「できた……」


凛は驚きながら微笑んだ。


「見事だ」


正臣も頷く。


「まだ小さいけど立派な式神だ」


続いて道満


静かに霊力を流す


銀色の光が集まり、三本の尾を持つ白銀の狐が姿を現した。


「さすが道満様!」


「すごい!」


豪太たちが歓声を上げる。


正臣も笑った。


「初めてで三尾の狐とは立派だ」


その後も何人か成功する者が現れた。


一方で失敗する生徒も少なくない。


「焦らなくていい」


正臣は優しく言う。


「式神術は経験が大切だ」


「少しずつできるようになる」


晴真も依代を握る。


だが何も起こらない。


「うーん……」


困っている晴真へ凛が小声で話しかけた。


「呼びたい姿を思い浮かべて」


「意識を集中するといいよ」


「ありがとう」


その様子を少し離れた場所から道満が見つめていた。


(桜晴真……)


晴真は目を閉じる。


(式神って言われても……)


頭に浮かばない。


その時だった。


城址公園で見た光景がよみがえる。


ミヅチが見せてくれた。


あの巨大な白い大蛇。


(あれ……)


(すごく綺麗だった)


晴真は自然とその姿を思い描く。


霊力が依代へ流れ込む。


その瞬間――


教室が金色の光に包まれた。


「!」


正臣が目を見開く。


凛も息をのむ。


道満も立ち上がった。


光の中から現れたのは――


天井を突き破りそうなほど巨大な白い大蛇


神々しい金色の瞳


圧倒的な神気


だが姿は一瞬だった。


ふっと光が消える


巨大な白蛇も幻のように消え去った。


見えていたのは――


正臣



道満


そして校舎の外、木陰から授業を見守っていた沙羅、ミヅチ、銀花だけだった。


「まさか……」


正臣の顔色が変わる。


その直後。


晴真の体から力が抜けた。


「晴真!」


凛が駆け寄る


晴真はそのまま倒れ込んだ。


「霊力切れか!」


正臣は晴真を抱き上げる。


「授業はここまで!」


「保健の先生を呼んできてくれ!」


生徒たちは騒然となる。


「派手に失敗したな」


「霊力を使い過ぎたのか」


事情を知らない生徒たちは口々に話していた。


道満だけは呆然と立ち尽くしていた。


「今のは……」


凛も震える声で言う。


「あれって……」


二人は知っている


金桜眼


その力が普通ではないことを。


一方その頃。


校舎裏の木陰。


沙羅たちは険しい表情で立ち尽くしていた。


「今のは間違いねぇ」


沙羅が呟く。


ミヅチも静かに頷く。


「まったく無茶をする」


その時


桜色の光が舞う


チヨヒメ


珠代


クシナダ


そして一葉、二葉、三葉が姿を現した。


チヨヒメが真っ先に尋ねる。


「何が起きたのじゃ」


珠代も晴真が運ばれていく方角を見つめる。


「今の霊力は、金桜眼ですか?」


クシナダは腕を組む。


「なんと無茶苦茶な霊力 龍姫様より…」


春の空に、不穏な風が静かに吹き抜けていった。

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