第二十一話 初めての夜
歓迎会が終わる頃には、外はすっかり夜になっていた。
黒桜寮の廊下は柔らかな灯りに照らされ、窓の外では虫の声が静かに響いている。
「じゃあ食器はここでいいよ」
摩季が笑顔で声を掛ける。
「今日は疲れただろうし早めに休みな」
「ありがとうございました!」
新入生たちは元気よく頭を下げた。
銀花も優しく微笑む
「おやすみなさい」
「明日から授業が始まりますから」
「はい!」
晴真たちは部屋へ戻っていった。
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男子一号室
障子を開けると、布団が四組きれいに並べられていた。
「おおー!」
刀也が飛び込む。
「今日からここが俺たちの部屋か!」
迅も部屋を見回す
「広いな」
「押し入れもでけぇ」
与一は荷物を整理しながら言う。
「まず荷物を片付けよう」
「散らかしたらあとで困るぞ」
「与一は真面目だなぁ」
迅が笑う
「誰かがしっかりしないと」
与一はため息をついた。
晴真も鞄を置きながら部屋を見回す
木の香りが心地いい
窓を開けると春の夜風が静かに吹き込んできた。
「気持ちいい風だね」
「本当だな」
刀也も窓から空を見上げる
裏佐倉の夜空には無数の星が輝いていた。
「星が近く見える」
晴真は思わず見入った
「表佐倉よりきれいかも」
与一が頷く
「裏佐倉は霊力が満ちているからな」
「空も澄んで見えるんだ」
その時
コンコン
部屋の戸が叩かれた。
「失礼します」
入ってきたのは刀優だった。
「そろそろ消灯時間です」
「十時を過ぎたら明かりを消してください」
「夜更かしすると刀姫先輩が怖いですよ」
刀優が笑う
刀也と迅は顔を見合わせた。
「それは寝るしかないな」
「怒られたくねぇ」
刀優はくすっと笑った
「何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくださいね」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい!」
刀優が部屋を出ると、四人は布団を敷き始めた。
「修学旅行みたいだな」
晴真が笑う
「俺 修学旅行まだ行ったことねぇ」
刀也が頭をかく
「そういやそうだな」
迅も笑った
「じゃあ毎日修学旅行みたいなもんだ」
「それは違うと思うぞ」
与一が冷静に突っ込む
部屋に笑い声が広がった
やがて明かりが消える。
静かな夜。
虫の声だけが聞こえていた。
「なあ晴真」
刀也が天井を見つめたまま話しかける。
「今日は楽しかったな」
「うん」
「最初は緊張したけど」
「みんな優しかった」
晴真は小さく笑った
迅も布団の中で腕を組む。
「明日から授業か」
「楽しみだな」
「俺は早く剣術がやりたい!」
刀也が拳を握る。
「俺は忍術」
迅が笑う。
「僕は弓術かな」
与一が静かに答えた。
三人の視線が晴真へ向く。
「晴真は?」
突然聞かれ晴真は少し考えた。
「全部かな」
「知らないことばかりだから」
「全部頑張ってみたい」
刀也は笑った。
「晴真らしいな!」
迅も笑う
「焦らなくていいさ」
「八年間あるんだからな」
与一も頷く
「一歩ずつ覚えていけばいい」
その言葉に晴真の胸は少し温かくなった。
「ありがとう」
「これからよろしくね」
「おう!」
「任せとけ!」
「こちらこそ」
三人の返事が重なる
静かな夜
黒桜寮で迎える初めての夜だった。
晴真は目を閉じる
父や母の顔が浮かぶ
(大丈夫)
(僕 ここで頑張るよ)
春風が窓を優しく揺らした
こうして四人の学園生活最初の夜は 静かに更けていくのだった。




