第十七話 クラスメイト
「それじゃあ今日は自己紹介から始めようか」
勝田正臣が教壇の前で笑顔を見せた。
「名前だけじゃもったいない。得意なことやこれから頑張りたいことも話してくれ」
教室に期待したような空気が流れる。
「じゃあ前の席から順番に」
最初に立ち上がったのは刀也だった。
「立身刀也です!」
元気いっぱいに頭を下げる。
「剣術なら誰にも負けません! 将来は親父や姉ちゃんを超える剣士になります! よろしくお願いします!」
教室から拍手が起こる。
続いて晴真が立ち上がった。
少し緊張した表情で前へ出る。
「桜晴真です。表佐倉で育ちました。小さいころから自然に囲まれて過ごしてきました。分からないことばかりですが一生懸命頑張ります。皆さんよろしくお願いします」
晴真が頭を下げると教室から温かな拍手が送られた。
「いい挨拶だ」
正臣が笑顔で頷く。
続いて凛が立ち上がる。
「麻賀多凛です。封印術と陰陽術を頑張りたいと思っています。皆さんと一緒に成長できるよう努力します。よろしくお願いします」
礼儀正しい挨拶に教室も自然と拍手に包まれた。
その後も数人の生徒が自己紹介を続ける。
「よろしく!」
「頑張ります!」
「友達をたくさん作りたいです!」
教室は少しずつ和やかな空気になっていった。
次に勢いよく立ち上がったのは麻倉迅だった。
「麻倉迅! 忍術なら任せろ! あと剣術もちょっと得意! 楽しい一年にしたい! よろしく!」
元気いっぱいの挨拶に教室から笑いが起こる。
刀也が立ち上がる。
「迅!」
「おっ刀也!」
二人は笑いながら拳を合わせた。
「知り合いなの?」
晴真が尋ねる。
「いとこだ」
刀也が笑う。
「小さいころからしょっちゅう遊んでた」
迅も笑顔で頷く。
「刀也は昔からうるさい」
「なんだと!」
「でも本気になると結構すごい奴なんだ」
「迅もだろ!」
「普段は適当だけど本気になったら誰より怖い」
二人は顔を見合わせて大笑いした。
「次」
正臣が声を掛ける。
「鏑木与一です」
静かな声が教室に響く。
整った顔立ちの少年が立ち上がる。
「弓術を学ぶため入学しました。よろしくお願いします」
短く言って席へ戻る。
迅が肩を叩いた。
「相変わらず真面目だな」
「迅が騒がしいだけだ」
与一はため息をつく。
「俺たちは小さいころから親友で相棒なんです」
迅が笑う。
「勝手に相棒にするな」
与一は苦笑した。
刀也が思い出したように笑う。
「そういやお前また追いかけられてたな」
「……その話はやめてくれ」
与一は顔をしかめる。
「いとこの二人が本気で結婚しろと言ってくるんだ」
教室中が笑いに包まれた。
続いて小柄な少女が静かに立ち上がる
「木之子小夜です。森羅聴で人の心や自然の声を感じ取ることができます。薙刀も頑張っています。よろしくお願いします」
控えめな挨拶だったが正臣は感心したように頷いた。
「木之子家の森羅聴か。珍しい力だ」
その後も自己紹介は続く。
「岩名豪太です! 槍が得意です! 力には自信があります! 道満様についていきます!」
豪太が胸を張る。
続いて青菅隼人。
「青菅隼人です。忍術をやります。以上」
「短っ!」
刀也が思わず突っ込む。
隼人は肩をすくめる。
「長く話すの面倒」
迅が笑った。
「相変わらずやる気ないな」
「お前とは仲良くする気ない」
「こっちも」
二人のやり取りに教室が笑う。
「麻賀多紅葉です。札術と薙刀を学んでいます。皆さんよろしくお願いいたします」
優雅に一礼すると教室から拍手が送られた。
続いて根郷綾女。
「根郷綾女です。よろしくお願いします」
短い一言だけだった。
その立ち姿には忍びらしい隙のなさが感じられる。
「江原美鈴です! みんなと仲良くなりたいです!」
明るい笑顔に教室も和やかな空気になる。
その後も何人もの生徒が自己紹介を続けた。
得意な術を話す者。
緊張して名前だけを言う者。
笑いを誘う者。
個性はさまざまだった。
そして最後に道満が静かに立ち上がる。
「麻賀多道満です。陰陽術全般を学んできました。剣術 体術 馬術も修めています。宗家の名に恥じぬよう日々精進します」
堂々とした自己紹介に教室は自然と拍手に包まれた。
正臣は満足そうに頷く。
「よし。これで全員の顔と名前は少し覚えられたな」
晴真は教室を見渡した。
これから毎日を共に過ごす仲間たち
笑い合う者
静かに見守る者
ライバルを意識する者
一人ひとりがそれぞれの夢を胸にこの教室へ集まっていた。
晴真は小さく笑う
(みんなと一緒に頑張ろう)
新しい学園生活が本当の意味で始まろうとしていた。




