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第十五話 麻賀多道満


入学式が終わり、新入生たちはそれぞれの寮ごとに並び始めていた。


黒桜寮に集まったのは、晴真、刀也、凛、そして道満たちだった。


道満の周りには、数人の新入生が自然と集まっている。


麻賀多紅葉(まかたもみじ)


そして岩名豪太(いわなごうた)青菅隼人(あおすげはやと)江原美鈴(えばらみすず)根郷綾女(ねごうあやめ)


皆、道満を中心に立っていた。


道満は静かに周囲を見回すと、一人の少女へ視線を向けた。


「……凛か」


凛も軽く頭を下げる。


「久しぶり、道満くん」


幼い頃、何度か宗家で顔を合わせたことがある。


父・道清と、道満の父・道継は親友同士。


その縁で交流もあった。


しかし、道満は昔とは違っていた。


「同じ寮になるとは思わなかった」


そう言う凛に、道満は小さく鼻で笑う。


「私もだ」


「宗家の私が、お前と同じ黒桜寮とはな」


その言葉に、凛の表情が少し曇る。


「どういう意味?」


「そのままの意味だ」


道満は淡々と言った。


「宗家の人間と、カタギの血を引く分家が同じというのは、少々納得がいかない」


周囲の空気が張りつめる。


凛は静かに道満を見つめた。


「お母さんのことを言ってるの?」


「事実を言っただけだ」


道満の表情は変わらない。


その横で、紅葉が得意そうに笑った。


「道満様のおっしゃる通りです」


「宗家は宗家」


「分家とは違いますもの」


刀也の額に青筋が浮かぶ。


「おい」


「今の言い方はねぇだろ」


晴真も困ったような表情になる。


「凛のお母さん、悪く言うのは違うと思う」


しかし、道満は晴真へ視線を向けた。


その目には、静かな対抗心が宿っていた。


(この子が……)


(父上の言っていた金桜眼)


道満は胸の内だけでつぶやく。


金桜眼


麻賀多宗家に代々伝わる言い伝え。


世界を変える力を持つ、特別な陰陽眼。


その持ち主が目の前にいる。


だが、そのことを口にするつもりはなかった。


代わりに、別の言葉を投げかける。


「お前も表佐倉育ちだったな」


「え?」


晴真が首をかしげる。


「陰陽師の世界を何も知らず育った者が、この学園でどこまでやれるのか」


「少し興味がある」


どこか見下すような口調だった。


刀也は一歩前へ出る。


「なんだその言い方!」


「晴真を馬鹿にしてんのか!」


凛も珍しく強い口調になる。


「晴真くんは、そんなことを言われる人じゃない」


それでも晴真は、困ったように笑うだけだった。


「でも」


その一言に、その場の全員が晴真を見る。


「道満くんの新入生代表の挨拶、すごかったよ」


「え?」


道満が思わず聞き返す。


「堂々としてたし、すごく聞きやすかった」


「同じ一年生なのに、あんなふうに話せるなんて、本当にすごいと思った」


晴真は素直な笑顔でそう言った。


道満は言葉を失う。


刀也も凛も目を丸くする。


さっきまであんな態度を取られていた相手を、素直に褒めるとは思わなかったのだ。


「ふん」


紅葉が腕を組む。


「当たり前でしょ」


「道満様なんだから」


その言葉にも、晴真は笑顔で頷く。


「うん」


「だからこそ、もっと頑張ろうって思えた」


あまりにも真っすぐな言葉だった。


道満は晴真を見つめる。


馬鹿にされたのに怒らない。


嫌味を言われても褒める。


そんな人間を、道満は今まで見たことがなかった。

(……変な奴だ)

そう思いながらも、その笑顔がなぜか少しだけ気になっていた。

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