第十二話 学園への第一歩
春風が、桜の花びらを優しく舞い上げる。
式神バスから降りた晴真たちは、思わず周囲を見回した。
目の前には、佐倉陰陽学園の正門。
重厚な木造の門には、金色の桜と三匹の蛇をあしらった学園の紋章が刻まれ、淡い霊力を帯びたように静かに輝いている。
その先には、美しく整えられた石畳がまっすぐ本館へと続き、左右には手入れの行き届いた庭園や桜並木が広がっていた。
「すごい……」
晴真は思わず息をのむ。
「本当に学校なんだ……」
刀也は目を輝かせる。
「見ろよ! あっちにでっかい道場がある!」
琥太郎も思わず身を乗り出した。
「広い……」
「こんな学校、見たことないよ」
凛は校舎の奥へ視線を向ける。
「あそこは演武場かな……」
「その隣には弓場もある」
「馬場まで見えるよ」
葵と楓も顔を見合わせた。
「本当にいろんなことを学ぶ学校なんだね」
「楽しみになってきた」
銀花は穏やかに微笑む。
「佐倉陰陽学園では、それぞれの才能に合わせて多くの術や武芸を学びます」
「陰陽術だけでなく、剣術、弓術、忍術、体術、巫女の神楽など、さまざまな授業があります」
その時――
ゴーン……
澄みきった鐘の音が学園中へ響き渡った。
「始まりの鐘です」
銀花が静かに言う。
「間もなく入学式が始まります」
すると、校舎の方から次々と生徒たちが歩いてきた。
黒、白、紅、蒼、黄。
五つの寮の制服をまとった上級生たちだ。
「今年の新入生か」
「かわいい子が多いな」
「みんな緊張してるね」
「頑張れよ」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
晴真たちは少し照れくさそうに笑った。
琥太郎が小声で言う。
「なんか見られてる……」
「新入生だからだよ」
凛が優しく答える。
刀也は胸を張った。
「俺は全然平気!」
「そういう人ほど後で緊張するんだよ」
楓がくすっと笑う。
「えっ!? そうなの?」
刀也が慌てると、皆から小さな笑いがこぼれた。
その空気を見ていた教師たちも微笑む。
「初等部一年生はこちらへ」
教師の案内で、新入生たちは列を作り始めた。
晴真は最後にもう一度だけ振り返る。
式神バスの横で、沙羅が腕を組んで立っていた。
目が合うと、沙羅は軽く手を上げる。
「頑張んな」
ミヅチも窓から身を乗り出した。
「帰りに暇があったら遊びに来るのじゃ」
「うまい菓子でも用意して待っておる」
「はい!」
晴真は笑顔で大きく手を振る。
沙羅は照れ隠しのように鼻を鳴らした。
「ほら、いつまでも手振ってないで行きな」
「遅刻したら初日から笑われるぞ」
「はい!」
晴真たちは元気よく返事をすると、教師の後について
正門をくぐった。
門をくぐった瞬間――
ふわり
桜の花びらが風に舞い上がり、新入生たちを優しく包み込む。
「歓迎してくれてるみたい」
葵が嬉しそうにつぶやく
「うん」
楓も笑顔で頷いた。
春の日差しを浴びながら、新入生たちは石畳を歩いていく。
期待と少しの緊張。
それぞれの胸に新しい夢を抱きながら。
やがて、その先に大きな本館の玄関が見えてきた。
重厚な木の扉は大きく開かれ、多くの教師たちが新入生を迎えている。
「ようこそ、佐倉陰陽学園へ」
教師の温かな声が響く。
晴真は大きく息を吸った。
――ここから始まる
父が学び、沙羅たちが青春を過ごした学園
自分もこれから、この場所で仲間と出会い、多くのことを学んでいく。
期待で胸が高鳴る
晴真は仲間たちと顔を見合わせ、小さく頷いた。
そして一歩ずつ、本館の中へと歩き始めた。




