第百話 笑顔が集う理由
クシナダとの立ち合いを終えた刀姫は、木刀を納めると大きく息を吐いた。
そこへ親友の道香が笑顔で歩み寄る。
「刀姫 お疲れ様」
「ありがとう」
刀姫も穏やかに微笑んだ。
道香は先ほどの勝負を思い返しながら言う。
「やっぱり流石だね」
「クシナダ様は」
刀姫は素直に頷く。
「うん」
「良い勉強になった」
「まだまだ届かないって 改めて思い知らされたよ」
少し間を置いて、刀姫は不思議そうに首を傾げた。
「でも珍しいね」
「道香が自分から修練に参加するなんて」
道香は照れくさそうに笑う。
「私だって陰陽師の端くれですから」
「それに……」
「新術式 気になりますよ」
刀姫も興味深そうに頷く。
「道満が成功させた複合術のこと?」
「はい」
「一年生で複合術を成功させるなんて 本来なら考えられません」
「もちろん私の弟の道満は天才です」
「でも……」
道香は修練している晴真たちへ視線を向ける。
「それだけじゃないんです」
「きっと……」
その続きを口にする前に――
「先輩方」
明るい声が響いた。
陽香が笑顔で近付いてくる。
「こんにちは」
「こんにちは 陽香ちゃん」
刀姫たちも笑顔で挨拶を返した。
陽香は楽しそうに笑う。
「晴真のことだから」
「また規格外のことなんだろうなって思います」
その言葉に全員が思わず笑う。
そこへ道隆も加わった。
「本当に面白い子だよ」
修練場で仲間たちと笑い合う晴真を見つめながら微笑む。
「晴真君は 知らないうちに道満の心を開いてしまった」
「今では一番の親友だからね」
「兄として本当に嬉しいよ」
道香も静かに頷いた。
「昔の道満は 周りと距離を置くことが多かったですから」
「今は本当によく笑います」
陽香も少し照れながら微笑んだ。
「晴真がいると……」
「みんな笑顔になるんです」
その一言に、上級生たちは自然と晴真へ視線を向ける。
一年一組の仲間たちと笑いながら修練する姿。
その輪の中には、いつも自然と人が集まっていた。
刀姫も優しく目を細める。
「確かに」
「晴真の周りって いつも賑やかで楽しそう」
少し笑って付け加える。
「……問題も起こしますけどね」
「それは否定できないね」
道隆が苦笑する。
「毎回 何かしら騒ぎを起こしてる気がする」
「でもその騒ぎのおかげで 新しい発見や成長もあるんですよね」
道香も笑う。
陽香は誇らしそうに頷いた。
「それが晴真なんです」
その言葉に、その場にいた上級生たちは顔を見合わせ――
「あははは!」
修練場に明るい笑い声が響き渡った。
その笑い声を聞いた晴真は、不思議そうに首を傾げる。
「何かあったのかな?」
刀也は笑いながら肩を叩く。
「さあな!」
「でも楽しそうだからいいじゃん!」
「うん!」
何も知らず笑う晴真を見て、上級生たちはさらに微笑んだ。
人を惹きつけ、自然と笑顔の輪を広げていく。
その姿は、本人だけが気付いていない不思議な魅力そのものだった。




