逃げる選択
「ギルティナ・エリスフォード———お前には失望した」
シルビアがそういった。よく見ると、瞳に光がない。
「ラクティスさん、逃げましょう」
「え、え……でも、皆さんが助けに―――」
「あれは何かおかしいわ」
私はラクティスの話を遮った。
だがオオカミの獣人がそれを許さなかった。でも今はそんなことどうでもいい。
「お前にこいつを逃がす権利は―――」
「黙りなさい」
ぶっ飛ばして、檻を壊してラクティスを救出した。
立ち入り禁止区域の奥へと進んでいく。ラクティスには服として一時的にボロ布を着せている。
「ぎ、ギルティナさん……怖いですっ」
「下を向いていて。周りを見なければ大丈夫」
周りには生々しい実験中の人体や、バケモノなどが置かれていた。
気配察知を使いながら逃げていく。それと同時に空間把握も使いながら逃げれる場所を探していく。
この空間は広すぎる。外から見るよりもでかい。空間魔法を使って異空間に場所を作っているんだと考えた。
「出口――見つけた!」
気配が近づいてくる。グランドを取りに行きたいが、今は逃げる事を優先するしかない。
出口をぶっ壊して外に出た。緊急用の出口だったのか、外には手すりもない場所だった。
後ろに気配が迫っている。迷ってはいられない。
「ラクティスさん、飛び降りるわよ!」
「え、ええッ!?」
ラクティスが何か言う前に、ラクティスの腕をしっかり握って飛び降りた。
■
ギルティナ達が飛び降りた後、アクシオム内部では洗脳がさらに深刻化していた。
「学園生徒を洗脳したのはいいが、実験体と学園の生徒一人を逃がしてしまった……」
「ベレル様」
いつもはとても強い口調のはずなシルビアは、支配下ではとても従順だった。
「なんだ、シルビア先生―――いやシルビア」
「ギルティナを確保いたしますか」
ベレルは考える。
このまま逃がせば、ここ――最先端教育浮遊機関アクシオムが巨大な実験施設だとバレてしまう恐れがある。
だが、ギルティナという人間の持つ魔力と力は現代の人類とは異なるほど強大だった。そのためか洗脳の効果を受けなかったと考えられる。
「チッ……厄介な」
ギルティナの持ち物として、大剣を預かっている。解析した結果、これは《グランド》という世界最高峰の大剣だった。
―――だがここは最先端教育機関という名目で作られている。今の技術では簡単に作れてしまう。
「あの女を取り逃がしたのは痛手だが―――いい物を置いていった訳だ」
ベレルは立ち入り禁止区域の奥へとグランドを持って入っていった。
■
「ぎ、ギルティナさん……」
目を覚ました。空は明るくなっていた。
飛び降りた時にはまだ暗かった空が、今では徐々に明るくなり始めていた。
季節は秋に変わろうとしているがまだジメジメとしていた。
地面の着地には失敗したが、怪我はしていない。
「ラクティスさん、怪我はない?」
「え……は、はい! お、おかげさまで」
「それならよかったわ」
最後に覚えているのは、宙に減速効果を何重にも張ったのだけだった。それのおかげで私たちが無傷だったのかもしれない。
空を見上げるが、アクシオムはない。移動されたようだ。
「……ここはどこかしら、ね」
常に移動し続けるアクシオムから飛び降りた訳である。ここがどこかもわからない。
周りを見渡して得られる情報としてはここは平原な事だけだった。そう―――ありふれたただの平原なのだ。
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