令嬢、婚約する
女神が、ギルティナの動きを見ていた。
「やっと動きがあったわね。ここまで来るのに苦労したのです」
「先輩。そんなに喜ぶことがあるんですか?」
「王家との婚約の話を指示したのは私なのです。王家に神のお告げとして出しといたのです」
「神の干渉は禁忌ですよ!」
「私も本当はしたくなかったのです。ですが、フィオナと近いエリスフォード公爵家に産まれるとは予想していなかったのです。そのため、少しでも離して確保しやすくしているのです」
そう、転生する場所は女神でも予測できないため、面倒なことになった時、干渉をするしかなくなる。
私はほかの神々に嫌われているので、何も言われなかったのですがね。
「ターセル。自分の役目に戻りなさい」
表向きは慈愛に満ちた女神を演じる。裏では、悪事を働く女神。それが私。
ギルフォード。あなたは厄介だわ……。転生させたことを後悔するほどにね。
■
「王家との婚約!?」
「そう。王家との婚約。第二王子との、ね」
「なんで!?」
昔から話が出ていた? なんでそれが王家なのよ。
断れる気がしないわ。
「わかりました。でも……一度会って話してからです」
「ええ。もちろんそのつもりよ」
三日後の昼間、母様に呼ばれ、リビングに行くとそこには第二王子がいた。
写真で見ていた通り―――それ以上にカッコいい。
黒髪、赤目の長身だ。
昔に習った礼儀作法を生かす。
「お初にお目にかかります。エリスフォード公爵家長女のギルティナと申します」
「―――綺麗だ」
「へ?」
いやいや、開口一番そんな事言わないでほしいわよ!!
「いや、何でもない」
母様がこちらをチラチラ見ている。礼儀作法を覚えていたのがそんなに嬉しいの?
私はソファに腰を下ろした。
「わざわざお越しいただきありがとうございます」
「いや、これくらいは当然だ。もしかしたら、婚約するかもしれないのだから」
あらヤダ、この人イケメン過ぎだわ!!
いや……私は元男よ……こんなときめいてはダメよ。正気を保つの。
■
いつの間にか指輪をはめられた。
「これからよろしく。ギルティナ」
「へ……?」
「そんな緊張しなくてもいいじゃないか」
(え、いやいつの間に? 緊張しすぎて覚えてない。もうボケた私?)
私の左手の薬指には、高そうな指輪がはめられていた。
ドアが開く音がした。
「ギルティナ!!」
この声は父様の声だった。
「帰ってきたときい……て。へ?」
「あら、あなた? どうしたの?」
「な、なんでこの屋敷に第二王子殿下のアリスト様がいるんだ?」
「ギルティナとの婚約の話……いえ、婚約の挨拶に来てくれたのよね?」
「はい。その通りです」
父様が気絶した。
■
女神は見ていた。
「これでしばらくはギルフォードの足止めが出来ますね」
「本当に良かったのですか? あれでも、元英雄ですけど」
「まあ、完全にメス堕ちしてくれると嬉しいのですが」
「先輩、言葉が汚いですよ」
「あら、失礼しました」
これで本当にフィオナを手に入れられるわ。
フィオナ———《魔法の巫女》をやっと。
《魔法の巫女》とは、魔法を制限なく使える者、そして特別な力を秘めている者を表す。まだ発祥はしていないが、フィオナが《魔法の巫女》と言う事は確定している。
そのため女神はその力を確保し、利用しようとしている。
この世界を手に入れるために。
ギルティナはあっけなく婚約してしまいました。今後どうなるのでしょうか!!
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