令嬢は実家へ帰る
私たちは存分に遊んだ後、オートレイス王国王城へと戻った。
しばらくは王城に泊まることになっている。また何か起きた時に対処できるようにということだ。
王城の客間。そこが私の寝る場所―――部屋だ。
私の実家よりも客間が広いのは当たり前だが……これは広すぎる。30人は収容できそうだ。
そう思っていた時、ドアがノックされた。
「どうぞ!」
「失礼いたします。ギルティナ殿……」
入ってきたのは、王家に仕える執事―――アゲーラさんだった。手には手紙があった。私宛の手紙だと、すぐにわかった。
「手紙を届けてくれたのね!」
「はい。その通りでございます」
アゲーラさんから手紙を受け取った。アゲーラさんはそのまま部屋を出ていった。
やはり王城執事は、格が違うわね。しかも、戦闘まで、できる訳だし……見た目だけで判断は難しいわ。
そう思いながら、ソファに座った。
「あれ、実家からだわ。急に手紙を寄こして、どうしたのかしら?」
そして手紙を開いた。
手紙を読んでいくと―――
「へ……?」
『ギルティナ。元気にしてるかい? ギルティナの活躍はよく聞いている。挨拶はここまでにして、本題に入ろう。ギルティナ、あんたに婚約の話が出たわ。一度実家に戻ってきなさい。妹も産まれたわよ? さっさと戻てらっしゃい!!』
「これは……母様ね。ていうか……妹? そんなこと初めて聞いたわ。生まれてすぐに手紙くらいくれればいいのに!」
独り言を言いまくった私。ていうか、婚約ってなんでよ!
■
「え?ギルティナ……あんた婚約の話なんか出てたの?」
「私も昨日の夜知ったのよ! どうしよう……これって、婚約受けたほうがいいのかしら?」
「相手の家がらとか……性格を見た上で判断するのがいいわ。まあ、名門エリスフォード家なら、それ相応の相手は用意されてはいると思うけど、ね」
確かにそう。でも、婚約したらしたで、しばらくは実家にいるしかない。
その間、女神が何かをしでかす可能性もある。私は動けなくなるし……。困るわね。
でも、相当の相手との婚約を断るのは実家に迷惑がかかる。
いや、今は深く考えなくていいわ。相手を見て、判断するのが一番よね。
「そう、ね。じゃあ明日くらいには、実家へ戻ることにするわ。フィオナはどうするの?」
「私は関係ないし、学園に通うわ。シルビア先生には伝えておくから」
「わかったわ。ありがとね!」
「それくらい、礼を言われるほどじゃないわよ」
フィオナは口元を上げ、笑った。
私はフィオナとの話を終え、すぐに準備に取り掛かった。
■
朝は暖かかった。
「まだ、夏は終わらないと言う事ね……。今年の夏は忙しくなるわね」
夏季休暇は学園にはないが、冬期休暇がとても長い。私は学園へ行くことが少ないが、単位は一応もらっている。
色々と学園には迷惑をかけている。
それよりも、だ。ほんとに意味が分からない。
というか「妹も産まれたわよ?」じゃなくて……初耳だわ。産まれたなら、その時に手紙くらい寄こせってのよ!!
「はあ……旅をする時間も余裕もないものね……。現世でも旅できずに死んじゃうかもね」
少し笑った。
自分でもなんで笑ったかわからないまま。
今は今で楽しいけど、私の夢は旅に出ることだしね。でも前世で知らなかった事は徐々に知れてきている。それは旅と言っていいのかもしれないわね。
でも、物足りない。足りなすぎわ!
馬車の音が聞こえてきた。
「お嬢様。お乗りください」
私は馬車に乗り込んだ。
久しぶりに馬車に乗った気がするわね。最近はずっと歩きか、飛行船を使っていたから。
「でも……急よね。なんで急に婚約なんて」
「いえ、お嬢様の婚約話は、産まれる前から話されていましたよ」
そう言ったのは、私の世話係メイドのアリビオだった。久しぶりの会話だった。
「奥様は、お嬢様が女の子だとわかった時、とても嬉しそうにしていました」
「へえ……そうだったのね」
でも、ねえ……。私は自由に生きたいのよね。今のままじゃ、自由に生きることができるかどうか……。
「婚約話を白紙にすることは―――」
「できません」
即答された、というか遮られたわ。
■
オートレイス王国を離れてから、早くも一日が経った。
とうとう帰ってきてしまった。実家へ。
名門エリスフォード公爵家へと。
「ギルティナ!」
大きな屋敷から出てきたのは、私の母―――アリア・エリスフォード。
「母様。お久しぶりですわ!」
「うふふ。ギルティナは何も変わっていないわね?」
「そんなことないわ!」
母様の背負っているものをみると、小さな女の子が母様の服を引っ張っていた。
「これが私の妹?」
「そう。名前はサマーラ・エリスフォードよ。ギルティナが、学園に行ってすぐに産まれたのよ」
「へ……?」
全く気付かなかった。母様のお腹なんか見ていなかったために……気づかなかった。
だから手紙を寄こさなかった訳ね。私がもう気づいてると思っていたのね。
でも、母様ごめん。気づかなかったわよ。
そして、私は久しぶりに実家のソファへ座った。
「久しぶりだわ……本当に。約二年……忙しすぎたってものよ」
「ギルティナの活躍は耳にしているわよ~」
「そういう事じゃないのよ!」
母様は笑いながら、私にお茶を出してくれた。
お茶は、酒の次に好きである。
「ありがとう」
「いいのよ。今から長話するんだし」
婚約の件でしょうね。私の苦労は後回しって事ねぇ……。
まあ……誇る話でもない訳だし、全然いいけど。
空気が一段と重くなる。私も、母様も真剣な表情に変わる。
「手紙にも書いた通り、貴女に婚約の話が来たわ」
そういっているが、アリビオが言っていた事がホントの事。
元から約束されていた話である事はもう分かっている。
「ギルティナには悪いけど……絶対婚約してもらうしかないわ」
「それはなぜですか」
今は真剣な話のため、いつも通りの口調ではなく、ちゃんとした口調である。
「相手は……王家よ」
「は……?
私の思考は止まった。
今回は長めに執筆! 7月中には8万字!
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