まだ序の口
鼻を突く匂い。
「うッ……何よこの匂い……大気汚染にも程があるでしょう……」
ここは、王国ではないことがすぐ分かった。
しばらく歩いていると、街が見えてきた。
「やっぱりね。ここは帝国だわ」
侵入には成功した。帝王を仕留めれば戦争は終わる。
■
街は戦争中だと言うのに賑わっていた。私を見る目は少し怪しいけども……一応潜入ということにしておくわ。
「なあお嬢ちゃん? ここらの人じゃねぇだろ?」
「え、ええ。そうです」
「どこから来た」
「え、いや」
オートレイス王国の紋章をすぐ隠した。この男……只者ではないということだけが分かった。
こいつは軍人だ。紋章を見られたら戦う羽目になる。
「なにか隠しただろう」
「い、いえ。なにも」
「手で隠しているところを見せろ」
「ッ……」
男は、私の手を引っ剥がした。そのせいで紋章が見えてしまった。
「オートレイス王国軍か。なら……殺すしかないな」
「できる……ものなら、ね」
賑わっていた場所は一瞬にして、戦場と化した。酒を飲んでいたものも皆、剣や杖をこちらへ向けた。
「だから帝国は嫌いなのよ……」
■
「テメェッ!! 女だからって容赦しね―――」
「うっさいわね!」
グランドで頭をぶっ叩く。酒でよっているのか意外と弱い。
そして、最後の一人になった。
「貴方……やはり只者ではないわね」
「ああ。俺は元帝国陸軍長だ」
「私は、オートレイス王国壱番隊長だわ」
そう、私が出陣する少し前……私は王家からの手紙を受け取った。
それは王国でも珍しい、王直筆の手紙であった。とても丁寧な字で、こう書かれていた。
『ギルティナ・エリスフォード殿。君の精霊国での活躍は耳にしている。そして君はオートレイス王国の機器と聞いて戻ってきてくれた。とても感謝する。そして、我々王族達、そして爵位を持つ貴族たちとの協議の結果、君は、オートレイス王国壱番隊長に任命する。この国を守ってくれることを祈る』
この手紙は、一見余裕を持った手紙かと見れるがそうではない。とても緊迫した状態で、わざわざ時間を裂いて協議、そして送ってくれた。それがよく分かる。
■
オートレイス王国の王城。夜空を見ていたのは、国王―――コアトル・オートレイス。
「精霊国が来てくれると言っていたが……到着するまでまあ時間がある。オートレイスは軍事的には弱い立場にある……。ギルティナよ……食い止めてくれることを祈っている」
「あなた……大丈夫よ」
「キミーラか。ありがとな。だが、かなり危ない状態であることは変わりない。もし……この国が存続危機になったら……私を置いて、子ども達と逃げてくれ」
「それはできませんッ!!」
「ッ……だが……とても危険だ」
「あなたを置いて逃げることなんか……」
「私からの願いだ」
「―――ッ分かりました。でも、必ず生きて……私たちの元へ戻ってきてください」
「もちろんだ。キミーラ」
■
男が目の前から消えた。さすがは元帝国軍長。歳を重ねたとて速さは落ちていないと。
だが気配隠蔽の技術は落ちているのか、若手より劣っていた。
「上、ね」
その瞬間、空斬撃が降り注ぐ。
「ッ―――」
足に浅い傷ができた。少しだけ血が流れるが、問題はない。
「やってくれたわね。空重撃斬!!」
全方向に斬撃を繰り出す、空斬撃の応用技。
「ぐぅッ!!」
「そこね」
即座に人差し指に魔力を集め、飛ばした。
「うがぁああッ!!」
男の身体が爆発した。そして血の雨が一瞬降り注いだ。
「まだ序の口……」
私はゆっくり進んでいく。
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