過去の栄光にはならない
負けない、強者と戦う……前世、物心ついたときにはそうだった。
国のために尽くす剣士になれ、そう言われて育ってきた。勉強もし、剣技もした。身体はボロボロになったが、心だけは光っていた。
希望、そして国に尽くせる事の偉大さに。でも実際は違った。私が前世で十五歳になった時にはもう、騎士だった。学園なんて、金がかかるところへなんか行かせてもらえず、朝から晩まで、暑くても、寒くても、同じ格好で護衛をこなした。
二十歳になった時、同い年の王子がいる事を知った。その時には、私は上級騎士になっていたため、たまたま、その王の護衛につくことになった。
行き先は隣の国……そう、帝国だ。
ビルは、帝国へ和平交渉の話を持っていこうとした。だが、その道中、帝国専属暗殺団が彼を狙った。
だが、私が気づけていたため、暗殺者たちを全滅させ守った。そこから、私達の関係が深まっていった。同い年という事もあってか、気が合い、すぐ仲良くなった。
「ギル、お前は強い、誰が見てもだ。もし、俺は王になったら、お前に剣聖の称号を与える」
「なぜ」
「お前は、自分が思っている以上に強い」
ビルは、一つの本を持ってきた。
「魔力可視化実験」
「俺が試したやつを本にしたのか」
「そうだ。魔力を発見したのはお前だ。更に、それを実用化寸前に持ってきたのもお前の力だ」
「いいや、違う」
私は否定したのを覚えている。
「俺はただ見つけただけ。それを実用化まで追い込んだのは、協力のおかげ。協力がなければ何もできなかった」
「……そうか。まあ良い。いつか自分がすごかった、ということを気づけば良いのだが」
「そうかよ」
そう言って笑っているのも、私は覚えている。随分、古臭い記憶だな。
■
目を開けた。全身が痛む。私は……アイツを睨んだあと……そうだ、ボコボコにされたんだ。負けた……のか。
「起きたかい? やっぱり、しぶといねぇ。壁に叩きつけられても、骨は折れていないみたいだし。女の子にしては、頑丈なほうだ」
元が頑丈なんじゃない、本能的に、魔力でカバーしただけだろう。
それをできるだけマシだな……はぁ。いくら剣聖でも、千年前。もう過去の栄光か。
『主、まだ負けることはないのだ。まだ希望はあるのだ』
手に、グランドがあった。まだ、まだいける。私は、剣聖だから。
その瞬間、私はそこには居なかった。目の色は赤へと変わっていた。動きも先ほどとは違う。魔力は使っていない。これが実力だ。
一歩踏み出したときには、もう……終わっていた。
シュパッ―――
その音は、アンザーの首を斬って、数秒後のことだった。
アンザーの首はこちらを見ながら落ちた。その目は、恐怖の目だった。
「まだ、私は死なない」
赤い目は、いつもの深い蒼に戻っていた。私はその一言を言って、去った。
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