33.命の重量
誤字脱字、拙い文章すいません
話を聞いてわたしは心底嫌気がさした。
いや、ハトリスの人々に対してのものではない。
わたし自身への嫌悪感だ。
人々が憎悪に囚われ怒り狂ったのはわたし達が牢に入っていた人々を殺してしまったせいなのだから。
「そんなことが…」
「ああ、まぁそんなことはどうでもいいのだがね」
「どうでもいいって」
男の言葉につい反応してしまう。
「わたしには関係のないことだ」
場が静寂に包まれる。
「お姉ちゃん?」
「アンちゃん、アンナちゃん。向こうで遊ぼっか」
そう言って神崎さんが双子を部屋の外に連れだしていく。
「私はね、別に人がどれだけ死のうが関係ないんだよ。…ただ研究さえできればいい」
「それじゃあどうしてわたし達を助けてくれたの」
「少し…いや。気まぐれだ」
「それじゃあ最後に一つだけ聞かせて、あの子たちを愛してるの」
「もちろん」
男は即答した。
ただ、なにかを孕んでいるような笑みを浮かべて。
「神崎さん、これからどうしますか?」
わたしは最初に運ばれて看病されていた部屋のベットに倒れこみながら言う。
「そうですねー、いったん外を見て回るのはどーでーす?」
「…そうですね、一度見て見ないことにはなんとも言えないですし」
「それじゃあ今日はもう寝るでーすよ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみでーす」
月明かりの差し込む部屋に神崎さんの呼吸の音だけが響いている。
変な時間に目が覚めてしまったようだ。
一度目が冴えてしまうとなかなか寝付けず、ベットの上でただただ時間だけを浪費していった。
しばらく経っても眠気は来なかったので、散歩にでも行こうかと思い家を出る。
家を出るとまず最初に目に飛び込んできたのは視界いっぱいに広がる雄大な自然だった。
静まり返った緑の世界は月明かりに映し出され、普段は目にすることのできない神秘を備えていた。
「綺麗」
そんな言葉が口から洩れるが、とてもそれだけで表現できるような光景ではない。
なにしろ、今までに一度も見たことのない景色だ。
生命の死にしか触れてこなかったわたしにはそれを表現することなど到底できない。
緑は、木々、自然はもちろん見たことがある。
そもそもハトリスに初めて上陸したときにだって見たはずだ。
それなのに改めて、夜に見る自然というのはこうまでも美しいものなのだろうか。
これは代々自然と共存してきたハトリスの人々の結晶なのだろう。
そしてわたしがこんなにも美しいものを築き上げてきた人たちを殺したのだ。
あれだけ軽く扱った命が、無感情に、冷徹に奪った命が、重たい。
続きます。
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