32.ハトリスの地獄
誤字脱字、拙い文章すいません
目が覚めると窓から射していた光は消え、何も見えなくなっていた。
少し頭に痛みが走る。
飢餓状態や日光に晒され続けた事による意識の飛ぶようなものではなく、さほど気にならない軽い症状しかない。
頭を押さえながら立ち上がる。
隣のある神崎さんの寝ていたベットを見るが誰も寝ていない。
わたしが眠っている間に起きたのだろうか。
とりあえず部屋を出る。
明かりの漏れ出している部屋が目に入る。
そっとその部屋に近づくと声が聞こえてくる。
「お姉ちゃん!ご飯を食べた後に寝転がったらだめでしょ!」
「ええー、アンちゃんは真面目過ぎまーす。アンナちゃんもそう思うでーすねー」
「アンはもっと肩の力を抜くでーす」
「あはは、口調うつってまーす」
「むぅ、二人とも!もっとしっかりしてよ」
そんな団らんが部屋から聞こえてくる。
どうやら神崎さんは元気なようだ。
扉をノックして部屋に入る。
「リリィ!起きたでーすか!」
「はい、今はもうほとんど大丈夫です。神崎さんこそ大丈夫なんですか?」
「当然でーす!」
神崎さんは素早く立ち上がってピースサインをする。
「お姉ちゃんおはよー」
「おはよー」
先程の会話から寝転がっている子がアンナ、立っている方がアンだろう。
二人の女の子がわたしに挨拶をする。
それにしても本当にそっくりでわたしには見分けがつかない。
外見としては本当に違いなんてないのかもしれない。
そのくらいそっくりだった。
「起きたのか」
そう言ってわたしに麻酔を打った男性が部屋にやってくる。
寝不足なのか目の下には隈が出来ていた。
それからわたしはご飯を食べさせてもらってわたしが眠っていた間の事やこの国の事を聞いた。
わたしが一度起きてからもう一度起きるまで三日もかかった事。
この国がどうなったのかを。
ハトリス本当の悲劇はわたし達が去ってから起こったのだと言う。
わたしとレースが魔王軍幹部に一人、レナートを倒した日。
この国は解放された。
わたし達が殺した多くの人々の命を代償に。
だが解放された国民たちを最初に襲ったのは歓喜ではなくただ、無慈悲なまでの絶望だった。
捕らえられていた人々の帰還を待ち望んだ人たちが目にした光景。
彼らは目撃したのだ、無残に切り刻まれ、矢に射抜かれ、築きあげられた死体の山を。
わたしはその事実をかみしめることしかできなかった。
レナートを倒す方法はあれしかなかったのだから。
人々は絶望に打ちひしがれて絶望し、困惑し、悲観し、憤怒した。
そして人々は原因を求めた
「どうしてこんな事に」
誰が言いだしたのかそんな言葉が国中に電波していった。
なぜこんな目にあっているのか、いったい誰のせいで。
そんな怒号が国中で飛び交っていった。
そんな時一人の男が言った。
「魔王こそが全ての元凶だ、殺すべき敵だ!」
その一言はハトリス全土を揺るがした。
戦争が始まったのだ。
「魔王は強大だ、そのためには生き残った全員の力が必要だ」
男は言った。
男は魔王を倒す術を知っていたのだ。
男の研究は常軌を逸したものだった。
人間の魔物化。
一人一人では大して力のない人間でも合成し、魔物とすることで莫大な力を得るという研究だ。
そこから先は更なる絶望だった。
どんな方法でも復讐を果たすという過激派と戦いたくないという穏健派が現れたのだ。
穏健派は復讐を望まず、過激派は復讐を望んだ。
そのすれ違いが絶望を呼ぶ。
穏健派の主要人物が過激派に拉致され魔物にされたのだ。
過激派はその魔物を使って穏健派を襲わせた。
穏健派のほとんどは死に絶えた。
過激派は全員魔物になり合成され、一体の化け物が誕生した。
この国で人の形を保った生命はほんの一握りになってしまった。
だが、あの日がやってきた。
魔法の消滅。
魔法で肉体が構成されている魔物も世界から消えた。
この国に残ったのは絶望の残滓だけだった。
続きます。
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